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2015年12月15日 | ブログ記事

序破急的シーン・シークエンスによる物語構成への一考察

この記事はtraP Advent Calendar 2015の15日目の記事です。

序破急って?

元来は雅楽の概念です。今では、起承転結と対比された三幕構成と同一視されるようになりました。Qだと四部作になるので気を付けてください。簡単には、以下のような構成を言います。
「序」において、ゆっくりと始まり、
「破」において、物語が展開していき、
「急」において、一気に終結へと向かいます。

具体的には
序:青狸に泣きつく
破:秘密道具の恩恵を受ける
急:秘密道具を使ったしっぺ返しを受ける
といったような構成になります。

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シーン・シークエンスって?

大雑把に言うと、シーンとは、一つの場面。シークエンスとは、繋がりのある小さな物語です。
シーン・シークエンスという単語自体はググっても出てこないので、造語に当たるかもしれません。ただ、、この呼び方がしっくりくるのでこのままでいきます。この手法は意識的に物語をいくつかのシークエンスに分け、その中でさらにシーンへと分けていくものです。
この説明だけだと分かりにくいですね。要するに、物語の中に小さな物語を作っていくというものです。ピンと来なくても、とりあえず次行きましょう。

ゲームの物語との相性

では本題に入ります。ゲームの物語は、断続的であることが要請されます。なぜならば、物語の進行は完全にプレイヤーに依存することになるからです。隕石が落ちようというのに、ハイスコア目指してコースターに乗る人もいます。そんな中で物語を構成していく場合、どうしても合間に描く物語の連続性を保ちにくくなります。これを無視して、進行依存性を考慮せずに連続的に構成すると、物語が投げっ放しであるような印象を与えてしまうかもしれません。
しかし、だからと言って連続性のない物語を続けていては、オムニバス形式の物語くらいしか導入できません。
投げっ放しの印象を与えずに、けれど連続性を持った物語を導入したい。こんな時の一つのアプローチとして、序破急的シーン・シークエンスを提唱したいと思います。

序破急的シーン・シークエンスとは、端的に言えばプレイヤーが体験する物語の一断片――プレイの合間に挟まれた物語を、序破急を用いてある意味では完結させるというものです。もちろん、完全に完結させるわけではありません。それではオムニバス形式と何ら変わりません。ここで、シークエンスと言う概念が意味を持ってくるのです。
例えば、オープニングについて考えましょう。
オープニングの役割は、何をおいてもプレイヤーを誘引することです。この時、最後につながるような伏線を組み入れたいかもしれません。あるいは、簡単な世界観の紹介をしたいかもしれません。しかし、それに気を取られると、そのオープニング自体がまとまりのないものになって、結果的にプレイヤーを誘引できない恐れがあります。最後までやってもらわなければ、どれだけ素晴らしい伏線でも無意味です。
ここで、序破急的シーン・シークエンスを使います。このオープニングというシークエンスで、序破急を意識して物語を構成するのです。

具体的には
序:主人公はなんぞ球技の選手らしい
破:いきなり怪物が襲ってきて町が破壊される
急:導かれて別の世界へ飛ばされる
といったような構成になります。この例だと分かりにくい人は、FFXをやってください。あの物語構成には学ぶところがあると思います。ともかく、オープニングで重要な伏線を張りつつ、主人公の状況を描画し、かつ物語自体は一つの町の破壊と主人公の旅立ちで締めくくっています。このようにすることで、プレイヤーは一つのシークエンスを体験できるので、投げっ放しな印象を受けません。加えて、その中に連続性のある内容を組み込むことができるのです。

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他の手法との親和性

ここからは、本題からそれて、他の手法との合成でも考えてみましょう。

ツァイガルニク効果

要するに、『次回、詰むや詰まざるや!!』効果。目的が達成された状況より、目的が不達成の状況の方が印象に残るというものです。
シークエンスに組み込むならば、急の部分で新たな展開を予想させるような物語を組み込むなどが考えられます。先のオープニングでもぜひ狙っていきたい効果ですね。

分岐式物語

いわゆるノベルゲームやADVは大概の場合、選択肢によって分岐していきます。
一本道の場合は当てはまりませんが、選択形式の場合、よりシークエンスを意識しなくてはなりません。特に分岐した後と、分岐する以前に挟まれた部分は、部品としてシークエンスとみなすことになります。この時、序破急を意識してシークエンスを構成していくのが非常に有用です。

結局どうすればいいのさ

長々と理屈っぽく書き連ねてきましたが、そろそろ要するにどうすればいいのかと思う頃でしょう。というわけで、まとめに入ります。

物語の要請

・世界観の説明や、キャラの紹介
・伏線の導入

ゲームの物語の特性

・断片化してしまう
・進行速度がプレイヤーに依存する

序破急的シーン・シークエンス

・断片化した物語の一つ一つを、つながりを持った物語として構成する
・その物語の構成において、序破急を意識する

以上を考えたうえで、序破急的シーン・シークエンスをどのように導入していくかをまとめましょう。
この手法を取り入れるには、自分で作った物語をまず、断片化していきます。特に、プレイヤーの操作が求められる箇所や、フィールドの移動が必要な時などで分断していくのです。
こうして出来上がった断片的な物語の中で、その小さな物語での目的を考えましょう。何を説明するか、どんな伏線を張るか、どんな伏線を回収するか、全体の物語ではどのような立ち位置か。色々と考えられることもありますが、とりあえず全部列挙してみましょう。
次に、列挙した内容は序破急のどの部分で使うと効果的か考えてみます。例えば、伏線を張るのだったら序が便利ですし、伏線の回収は急でやると迫力が出ます。もちろん、場合によっては急で伏線を張っても、序で伏線を回収しても構いません。
最後に、序破急でやることが決まったら、物語を構成していきます。こうして、序破急を意識した一つのまとまりでありながら、けれど全体としての連続性を保った物語を構成することができます。

最後に

以上、書き連ねてきた文章はあくまで一考察です。この手法は良い物語の必要条件でも十分条件でもありません。これに則らずとも面白い作品は、枚挙に暇がないでしょう。異なる物語作成のロジックを持っている方は、そのやり方を大事にしてください。
ですが、どうにも合間合間の物語が説明回っぽくなってしまったり、平坦でメリハリがつかないというのであれば、取り入れてみるのも一興かと思います。

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この記事を書いた人
yuu

主にプログラマーをしながら、まれに趣味で小説を書いています。ゲームはするのも作るのも大好物です。

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