この記事は新歓ブログリレー2021の1日目の記事です。
はじめまして、19年度入学で来年度は3年生となる@aya_seと申します。traPではサウンド班やアルゴリズム班に所属しています。
さて、本日は新歓ブログリレー1日目であり、初音ミクの日2021であり、そしてなんといっても入学試験の合格発表の日ですね。合格された皆さん、おめでとうございます!
というわけで約1年半ぶりにブログ記事を書くわけですが、今回はサウンド、もといDTMについて述べます。とりわけ『ゼロから始めるDTM生活』ということで、「今まで全くDTMや音楽に触れたことがなかったけど大学でDTMを始めてみた」筆者が具体的にどのように・どのような曲を作っているのかを紹介しつつ、DTMの難しさやtraPはいいぞという話(宣伝)など色々とゆるゆる語っていきます。……と、その前に1つだけ宣伝を……。
本日、新歓コンピレーションがリリース!
本日、traPのサウンド班のメンバーが制作した曲を集めた2021新歓コンピレーションがリリースされました。筆者も同アルバムにいくつか曲を出しています。今年度のアルバムは全15曲(たぶん過去最多)!ジャンルも多彩で、ボーカロイド、EDM、オーケストラなどいつになく多岐にわたっています。無料でダウンロードして聴くことが出来ますので、是非どうぞ!
筆者の紹介
さて、筆者である私の紹介をしようと思います。ざっくりまとめるとこのような感じです。
音楽的素養なし、演奏可能な楽器なし
全てPCによる打ち込みで曲制作
シンセよりも生音系の音源を使うことが多い
最近はボーカロイドに手を伸ばしつつある
サウンド班の人の中には、既にDTMをやったことがあったり、DTMはやったことがないけれどピアノは弾いていたりバンド経験があったり、というような完全音楽初心者ではないケースが少なくなく、筆者のような真の音楽未経験者はやや少数派かもしれません(ただし経験の有無に関してはあまり気にしなくていいと思います)。
DTMを始めようと思ったきっかけ
そもそも音楽経験のない筆者が何故わざわざDTMを始めようと思い立ったのか?というお話です。おそらく割と昔から潜在的に作曲をしてみたいという欲はあったのですが、始めるきっかけが掴めず、なかなか手を出していなかったところに、「どうやら大学でDTMをやっているサークルがあるらしいぞ!」という情報を手に入れたのが2018年の冬頃(つまり大学入試直前)だった覚えがあります。そして、大学生になったらDTMを始めよう!という意思がより強まった明確なきっかけはVTuber・周防パトラさんの『ハートサーモグラフィー』という曲を聴いたことでした。
作品自体のクオリティが高かったことは勿論ですが、VTuberという配信者が作詞・作曲・MVというようなイラスト以外のあらゆる領域を一人で個人制作しているという事実に非常に強い感銘を受けました。要するに個人制作のDTM(しかもおそらくほぼ全て打ち込み?)でこれだけの曲を作り上げているというわけです。VTuber特有の絶妙な現実味も相まってか、「自分もDTMを始めればいつか同じようにこんな曲を作れるようになるかもしれない」というような高揚感を与えてくれました。稀に作曲配信もやっていて、リアルな作業風景を眺めることができたというのも大きかったです(下は『ハートサーモグラフィー』を作ってる時の動画です)。
ちなみに画面を見る限りでは周防パトラさんが使っているDAWはStudio Oneですね。筆者と同じ!!!Studio One万歳!!!
実際にどんな曲を作ってきたか
あんまり載せると個人の宣伝になってしまいますが、完全音楽未経験者がDTMを続けていった事例の参考になると思うので、時期ごとの筆者の曲をいくつか紹介します。昔の曲はクオリティが-5000兆なので大目に見てください><(でもこれはきっと必ず誰もが通る道のはず)。
2016年頃(推定)
実は昔に一度だけDominoで遊んで曲を作ってみたことがありました。歴史的創作物過ぎてデータがぶっ飛んでいるので曲は貼れませんが、東方Project風を目指したBGMであったと記憶しています。
2019年3月頃
東工大入学前、Studio One Primeという無料のDAWをインストールして触ってみて、何も分からないまま最初にとりあえず作ってみたという曲がこちらです。もちろんクオリティは低いですが、なんか曲自体はそんなに悪くない(?)気もするので、今となってはボカロとか付けてみたくなりますね。
2019年7月頃
traPに入部して、少し経ったぐらいの頃に作った曲です。この頃も東方Projectの作品の原曲に強く影響を受けていて、そういう曲を目指したりしていました。
2020年3月頃
昨年度の新歓コンピレーションに提出した曲です。サークルとして外部に何か作品を公開したのはこれが初めてのことでした。この時も割と東方原曲感が強いですね。
やや昔の作品群にはなりますが、昨年度の新歓コンピレーションも良ければ聴いてみてください!
2020年10月頃
2020年の秋M3に提出した曲です。この頃からはかなり曲の趣向が変わってきていて、ざっくりといえば、オシャレっぽい曲調(??)を目指すようになりました。田中秀和さんというアニソン界隈では有名な作曲家の曲にハマり出したのが春頃だったので、その影響を如実に受けています。
2021年3月頃
そして直近の曲がこちらです。2020年11月頃に初音ミクNTを購入して以降はボーカロイド曲を中心に作っています。
ちなみにこの動画の素敵なイラストはグラフィック班の@NABEくんに描いてもらいました!とても可愛くて曲の雰囲気にも合っているので大満足してます。自分の曲にオリジナルのイラストが付くというのはなかなか感動ものです。こういった共同制作がやりやすいのもtraPならではの魅力と言えるのかもしれません。
……と、まぁこんな感じで、特にジャンルを定めることもなく大変マイペースにやってきました。おそらくですがDTMの技術向上は相当遅い方だと思います。もっとミックス(曲の仕上げ工程のこと)や音楽について自分で積極的に勉強したり、サークル内の強い人にアドバイスを求めていけば、これよりも格段に早いペースで成長していくことは十分可能なはずなので、安心して(?)大丈夫です。
どうやって曲を作っているか
筆者がどうやって曲を作っているのか、自分ではそこまで明確に意識したことは無かったのですが、振り返ってみると毎回大体同じ手順を踏んでいる気がしたので、ざっくりとした方法をまとめてみることにします。筆者は音楽的素養が無いので、そういう人が踏んでいる手順であることを念頭に読んでもらうと良いと思います。
構想段階①:どんな雰囲気の曲を作りたいか決める
まずざっくりとどんな雰囲気の曲を作りたいか決めてます。雰囲気、というと『夏っぽい曲』とか『明るい曲』とかめちゃめちゃふわっとした感じになりそうですが、自分の場合では特定の好きな曲にハマって、「自分もこういう曲作りたいな~~」となるパターンが多いです。つまり既存の曲をベースに作る曲の方向性を決めているということです。こう書くと何だかパクリみたいな感じですが、レポートで例えるところの「参考文献」のようなものだと思えば、とても自然なことじゃないかと思うんです。そもそも自分で何か完全に新しい概念(?)の曲を無から作り出すというのは相当困難です。参考文献を全く用いずにレポートを書くのが難しいのと同じです。また、単一の参考文献を本当にそのままCtrl+C→Ctrl+Vするだけならそれはただの剽窃になってしまいますが、いくつもの参考文献から情報を引っ張ってきたり、それらの情報に自分オリジナルの考察を加えていけば、それは立派な自分のレポートになります。DTMの耳コピにCtrl+CやCtrl+Vのようなショートカットキーは存在しないので、実際にはそっくりそのままパクろうと思ってもなかなかそうはなりません(むしろ完コピできるのはDTM力が高い証です)。というわけで、個人的には、最初は既存の曲のアイデアをパクるぐらいのノリで構想を練り始め、作っていく中で徐々に自分のオリジナリティを出していくというのが、とりわけ音楽初心者にはおすすめできる方法だと思っています。
過去のブログを漁っていたら@liquid1224くんがほぼそのまんま同じようなことを言っていてちょっと安心(?)しました。
具体的には、どうすれば良いのか?
ではまず自分の好きなアーティストを1人挙げましょう。挙げましたか?ではその人の作ったような曲を全力で作ってみてください。耳コピではありません。その人っぽく、かつ今までその人が作ったことのない曲です。こう言うと難しく聞こえるかもしれませんが、どうせ趣味の範囲なので、半分パクリみたいなものでも全く問題ありません。むしろ全力でパクろうとしてください。どれだけ必死にパクろうとしても、完全にはパクりきれない自分を発見するはずです。
そのパクりきれない部分が、学びの取っ掛かりになります。どんな知識や技術が足りなくてこのサウンドをパクれないのか、そのアーティストについて、その楽器について、その音を作るための処理や音楽的知識について、と順番に調べていくのです。
それと同時に、また別のアーティストや、同じアーティストの全く毛色の違う曲などを、同じ手順でパクってみてください。前回よりも成長した自分と、それでもなおパクりきれない自分を発見するはずです。
あとはこの繰り返しです。1人をパクったら盗作ですが、100人をパクったらそれはあなたのオリジナリティです。
(DTMができるようになるポイント5000兆選!元カレは?出身は?本名は?徹底調査しました!より)
構想段階②:お風呂で鼻歌を歌ってみる
作る曲の雰囲気を決めたら、次は具体的にメロディやコードを考えていくことになります。筆者はコード進行などをまともに学んでいないので、基本的にはメロディから先に作っていき、それに合うコードを探していくことが多いです。メロディから作ってそこに適切なコードを付けていくという作業自体は慣れればわりとできるようになる気がします。
というわけでメロディをまずは考えていくのですが、そんなにすぐにポンポンと浮かばないこともあります。こんなことするのは筆者だけかもしれませんが、よく自分はお風呂で鼻歌を歌いながら曲のメロディを決めています。そして「あ!!!これ天才かもしれん!!!」となったメロディが浮かんだら繰り返し歌って脳内に覚えさせておき、お風呂からあがったら3秒でDAWを起動して思い付いたメロディをメモするというようなことをしたりしています。
(参考)お風呂で鼻歌を歌っても一向に浮かばないなら……
お風呂の鼻歌はDTMへの特効薬ではないので、歌ったからといって必ずしもメロディが浮かぶとは限りません。本当にどうしてもなかなかメロディが浮かばない時の手段として、個人的には「外出をする」「あきらめて別のことをする」をおすすめします。外出をして外の空気に触れたり外のものを見たりすることで、何というか脳が刺激されて(?)、新しい発想に至ることがあります。また単純ではありますが、いったん別のことをして時間を置いてから改めて考えてみるというのも非常に有効です。夜と朝といった時間帯やその日の天気とかによっても全然変わってくると思います。なかなか進捗が生まれない時に無理に進捗を産もうとしても虚無になるだけなので、その時はきっぱりとやめてしまうほうがいいです。
ちなみに締め切りが迫っている大学の課題にこの思考を適用すると間違いなく単位を落とします。余裕を持って課題に取り掛かるか、頑張るかのどちらかにしましょう!!
※仕事で作曲をしている人々や何かの締め切りに追われている人々には「あきらめて別のことをする」という選択肢が許されないこともあるはずですが、おそらくその時に支えになってくるのがコード進行や音楽理論の知識なのではないか、という気がします。こういった知識はアイデアが枯渇したときのある種の「保険」のようなものなのではないでしょうか…?幸い我々は仕事でDTMをしているわけではないので、このようなことは必須ではなさそうです。お気軽にDTMしていきましょう!
作曲段階①:メロディやコードの下書きを作る
曲の方向性を決めたところで、次はより具体的にメロディやコード進行を考えていきます。プロであれば全てを†完全に理解†していきなり色々作っていくこともできそうですが、初心者なら無理をせず作りやすいようにやっていくほうがよさそうです。筆者はまず初めにグロッケンやピアノといった当たり障りのない楽器でメロディの下書きをすることが多いです。そしてメロディを書いたらそれにコードを付けていきます。コードは必要に応じて徐々に細かくしていけばいいので、はじめは1小節ごとに1種類、多くても2分割程度というようにかなり大雑把に作るようにしています。
作曲段階②:いろいろな楽器を足していく
メロディや(大まかな)コードといった曲の骨格が出来てきたら、次は本格的に色々な楽器を足していきます。どのような楽器から足していくかはなかなか難しいところですが、基本的にはより曲の中心となる楽器から足すのが良いと思います。特にベースとドラムはどんな曲でも大部分で鳴っていることが多い楽器だと思うので、迷ったらとりあえずベースとドラムから作るようにしています。ベースとドラムを作っておくだけで下書き感が薄れて曲感が増すので、作業のモチベーションを維持しやすいというメリットも個人的には感じます。
どのような楽器を足していくか?という問題については、筆者は直感に頼ってやっているのでまともに語ることができないのですが、「どの音域が足りてないか」をもとにどの楽器を加えるか決める、というようなやり方もあるみたいです。自分もはやくこういう境地に辿り着きたいですね。
作曲段階③:装飾音を加える
正直ここは筆者がまだまだ苦手な部分なのですが、色々と細かい装飾音で味付けをすることで一気に曲のクオリティが増す可能性があります。初心者と非初心者の差は割とミックスと装飾音の部分が大きいような気がしています。やり方がなかなか思いつかない時は、自分の好きな既存の曲を色々聴いてみたりして、そのアイデアを参考にしても良いでしょう。
装飾音の工程に限らず、音楽初心者が曲を作る秘訣は、とにかく世に出回っている自分の好きな音楽を注意深く聴いてみることにあると思います。聴き漁っているうちに、自分が曲を好きだと感じる部分はこういう部分なのではないか??というようなことも何となくわかってきます(例えば筆者の場合は、どうやら『半音ずつ上下するメロディラインが好き』とか『BPM120~130前後の曲が好き』とかいう傾向にあるみたいです)。
(参考)自分の好きなアーティストの曲を分析してみよう!
自分の好きなアーティストの曲を分析するのはとても勉強になります。分析といっても初心者なりにゆるゆるとやればいいので、あまり神経質にならなくていいと思っています。
例えば筆者は東方Projectの原曲が好きですが、東方原曲には通称『ZUNペット』と呼ばれる乾いたトランペットの音源が多用されており音を何重にも重ねて曲を盛り上げることが多い、ベースやドラムの打ち込みが非常に細かい、同じフレーズを繰り返しながらも少しずつ楽器を加えていって盛り上げるのが上手い、といった特徴があります。事例は色々ありますが、例えば下の曲の0:29付近~と0:41付近~とかに顕著に傾向が表れています。
他にも例えば田中秀和氏の曲であれば、時折、非常に特徴的な装飾的コードを使用する(これを真似するのは困難です、というかできたらプロ)、曲の展開を途中で大きく変えない(変拍子とかBPM変化とかをあまりしない)、(特に最近は)ラテン系の雰囲気の曲が多い、サビ前が明るい、グロッケンを頻繁に用いる、同じメロディでもコード進行を変えることで展開を持たせるのが上手い(これは同氏に限らない気もしますが…)などの傾向にあるようです。……ん、なんかこれ半分以上某配信者の受け売りな気もしますが、まぁ気にしないことにします……(むしろ有識者の分析から学ぶというのは全然ありでしょう)。
個人的にはこの中でも「同じメロディでもコード進行を変えることで展開を持たせる」というのが特に勉強になった気がします。とても分かりやすい事例の1つとして『這いよれOnce Nyagain』(這いよれ!ニャル子さんF)という曲を紹介します。下の動画の0:14付近~の「真の戦いはこれからです~」と0:41付近~「ちょっと押さえて!その比喩いかんよ~」は歌のメロディラインは全く同じなのにコード進行が異なっていることに気が付くと思います。他にも1:07付近~と3:13付近~も同じサビのメロディですがコード進行が異なっています。同じメロディラインを繰り返すことである程度の統一感は持たせつつ、しかしコードは変えていくというのは、曲に展開を持たせて聴いている人を飽きさせないための巧妙な工夫と言えそうです。さすがはプロだ……。
その他『ステラ・ドライブ』(Wake Up, Girls!)や(作曲者は全然違いますが)『メルティランドナイトメア』(初音ミク)のサビの前後半冒頭とかも分かりやすいですね。
あんまり音楽初心者がこのあたりのことを語り過ぎると圧倒的にわかを晒してしまうので程々にしておきます(もはや自分の好きな曲貼ってるだけ)が、自分の好きなアーティストの曲を自分なりに分析してみることで学べることは色々あるように思います!実際筆者も、今回の新歓コンピに出した曲の一部で少しだけ実践してみたつもりですので、良かったら聴いてみて下さい。
編曲段階①:曲をミックスする
最後に曲をミックスするという工程を踏むことになります。ミックスとは録音された各トラックの音量バランスや音色などを調整する作業のことです。DTMの中でも最もメカニックな部分であり、例えば「この音域に楽器が集中しているからこの楽器のこの音域はちょっと音量を抑えてみる」みたいなことを考えて音量調整をしたり、空間的な広がりを持たせるために特定の楽器にリバーブ(反響効果)を付けてみたり、というような作業をやっていきます(※ミックスの詳しい話は記事の本題ではないのでここでは省略します><)。
編曲段階②:作った曲を聴いてみる&ちょっと耳を休めてみる
曲を作ったらひとまず冷静に聴いてみて、納得のいかなかったり違和感を覚える部分を洗い出して再びミックス作業を行います。最後はこの繰り返しになると思います。DTM上級者であればこの繰り返しの回数が少なくてもクオリティの高いものを生み出せるような自己流のメソッドを確立できていると思いますが、初心者の場合は時間が掛かってしまうこともあります。あまり1つの曲にこだわりすぎても良くないことがあるので、適度な範囲で満足のいく編曲を目指していきましょう!
また、DTMを長時間続けていると非常に陥りやすい罠として「本当は良くない部分があるにもかかわらず繰り返し聴き過ぎたために慣れて違和感を覚えなくなる」というものがあります。これは本当に困った現象で、DTMをやっている最中は「ヤバい……!!俺はまた神曲を作ってしまった……!!」と高揚感に溢れていたのに、ちょっと時間を置いて改めて聴いてみると「なんだこの違和感の塊は!!!」となることが非常によくあります。捗っているときに一気に作業してしまうのはとても効率が良いですが、DTMを長時間ぶっ続けでやることには弊害もあるので、途中で麻雀を挟んでみるとか、適度に耳の休憩を入れることを強く推奨します。
……と以上が筆者流の一連の作曲工程になります。参考になるのかならないのかよくわかりませんが、初心者でもこうやって曲を作っていけばいいのか~~、と安心してもらえたならば幸いです。
DTMの敷居が高いと感じる理由
さて、筆者としては、是非多くの人にDTMをはじめようと思ってもらいたいところなのですが、現実にはDTMは初心者にとっての敷居が少しばかり高いと思われる要因がいくらか存在していると思っています。それらについて述べます。
習得すべき知識がふわふわとしている
DTMは習得すべき知識が結構多いと思います。……とこれだけならまだ他の趣味にも比較的共通していることなので良いのですが、DTMに関しては「ふわっと」した知識、もっと言えばある種の「勘」のようなものが要求されることが多いような気がします。例えばアルゴリズム班が取り組んでいる競技プログラミングでは「グラフ上の最短経路を求めるアルゴリズムにはダイクストラ法やベルマンフォード法があって……」というような明確なメソッドがそれなりに存在していますが、DTMにはこれといって正解がない要素が多く含まれています。
音楽的知識・演奏技術がないとやや不利(?)
作曲という行為をする限りは当然といえば当然なのですが、どうしても多少の音楽的知識がないと厳しくなるシーンがあるかもしれません。筆者は未だに全く無いのでさすがにそろそろ少しは勉強しないといけないかなぁなどと思っています(思ってはいるけどしてません……)。でも、作曲するにあたって厳密な音階とかコードとかの知識が要るかと言われればそんなに必須ではない気がしている(例えば意図しない不協和音の回避とかコードの作り方とかは続けているうちになんとなく察せるようになる)ので、あまり神経質にならなくて大丈夫だと思います(おそらくこのあたりの知識は「必須」というよりは「あると作業が捗りやすい」側面が強いのではないでしょうか?)。
どちらかといえば演奏技術(とそれに付随して身につく楽器の鳴らし方の知識)の方があると便利なのかな、と思います。筆者は全く弾けないので使っていませんが、キーボードで打ち込みができるのはやはり強いです(作業時間の短縮になる)。またPCでの打ち込みがやや難しいギターを生演奏で録音できたりするとそれもまた強みになると思います。
このように音楽的知識や演奏技術があると有利になる側面はありますが、かといって無ければDTMができないとか、始める資格がないとか、そういったことはないので、そこは心配しなくていいです。どうしても必要に感じた部分はあとで習得するというスタンスでとにかくまずはDTMを始めてみるという方がよっぽど良いでしょう(このあたりの事情で始めるのを躊躇うケースはかなり多そうだと思ったなので強く主張しておきます)。
有力な参考書や記事が少ない
DTMの敷居が高いと感じる理由の1つは、有力な参考書や記事の少なさがあるのではないかと感じています。例えば競技プログラミングは、AtCoderと呼ばれるサイトに初心者でも取り組みやすいチュートリアルが用意されていたり、ネット上に多くの解説記事があがっていたりして、プログラミング初心者でも非常に手を付けやすい環境が整っています。
一方でDTMに関しては、体系的なチュートリアルのようなものは(おそらく)なく、そもそも記事として文章化することが難しいトピックがあったり、自己流でDTMをする人が多いために記事によって主張していることが違ったり、間違った情報が含まれていたりするなどの背景から、全体としてあまり文献の品質が高くないと感じることがあります。そのような記事を読み漁っているうちに、結局何が正しいのか分からなくなり、初心者が挫折してしまうということがありがちです(これを一般に人は「敷居が高い」と呼ぶのかもしれません)。
幸いなことにtraPのブログではサウンド班のプロによる、ためになる記事が多く公開されています(「サウンド班」タグで検索すると調べやすいです)。
参考
初期費用が高い
プログラミングとは異なり、どうしても始める際にお金が掛かります。こればかりはどうしようもありません。具体的にはDTMをするのに必要なDAWと呼ばれるソフトを購入したり、必要であればオーディオインターフェース、有料の音源、ピアノ・ギターといった楽器類、ボーカロイドなども加えて揃えていく必要があります。これらの初期投資の必要性がまたDTMの敷居を高めてしまっていることもまた事実だと感じます。
なお実際には無料のDAWを利用して0円で作曲することは可能ですし、まずはそれでDTMに触れてみることも重要ですが、いざしっかり始めようということであれば、思い切ってすぐに有料のものを買ってしまうのが吉です。ちなみに初音ミクなど一部のボーカロイドでは有料版のDAWがセットで付属されていたりするので、興味のある方は是非チェックしてみて下さい(別途購入するよりもかなり初期投資を抑えられると思います)。
思い描いていたような音源が無い
少しDTMを続けていくと、思った以上に自分が思い描いていたような「良い音源」が見つからないという壁にぶつかることになります。有料の音源はクオリティが高いと聞きますが、かなり高額であり初心者には手を出しづらいこともあります。
幸いなことに、無料で配布されている外部の音源にとても良質なものがあるため、それらを導入していくことで環境の改善が可能です。良い音源を揃えて、自分の思った通りの音を表現できる環境を整えることは、DTMのモチベーション維持に強く直結します。Googleで「DTM 音源 フリー」などと検索すれば、おすすめのフリー音源まとめ記事がヒットすると思うので、そちらを参考にしてもいいですし、traPのブログにも無料音源の紹介記事があります。ちなみに筆者は現時点でまだ一度も有料の音源を購入したことがありません。買ってみてもいいのかなぁ。
参考
traPはいいぞという話
2021年、大学生で輝かしいDTMerデビューを飾ろうと意気込んでいた私、しかし現実に立ちはだかる厳しいDTM事情を目の当たりにして絶望に泣き崩れてしまう。そんな私の人生を変えてくれたのは1つのサークルだった――。
このようになかなか難しい面も多いDTMですが、そんなあなたにおすすめ!traP保険のご案内です。ここでは筆者が分析するDTMをするうえでのtraPはいいぞポイント3選を紹介します。
①プロに相談できる
まずtraPには筆者よりも5000兆倍プロな人が多く在籍しています。前述のように有力な参考書や記事が少ないDTMにおいて、プロに直接アドバイスや意見を求めることができるという環境は貴重です。
②定期的な作曲機会がある
1つの曲を作りあげるというのはやはりそれなりに時間を要する作業であり、何かきっかけがないとなかなか重い腰が上がらないという人もいるかもしれません。しかしtraPに所属することで、例えばゲームを制作するプロジェクトに音屋として参加してゲームのBGMを担当する、新歓コンピレーションやM3といったサークル名義のアルバムに曲を出す、ハッカソン(※短期間でゲーム等を制作するイベント)に参加する、というように定期的な作曲機会を生むことができます。曲を完成させる「目的」ができるというのは、結構大きいことだと思います。
③作った曲をみんなに聴いてもらえる
そしてtraPに所属する何よりのメリットは、作った曲をみんなに聴いてもらえることだと思っています。前述のプロジェクト所属やコンピレーションへの参加はもちろん、traPの部内SNS『traQ』には曲作りの進捗を上げて共有するチャンネルがあり、投稿することで曲を聴いた人からスタンプやコメントでリアクションを貰うことができるようになっています(グラフィック班等にも同様のチャンネルがあり、ある意味traPの真髄と呼べる場です)。ここ最近はチャンネルが特に活発に稼働しており、連日多くのサウンド班の部員が制作物を投稿しています。完成した曲をアップロードして聴いてもらうだけでなく、未完成の曲を投げてアドバイスをもらうといった使い方もされており、初心者でもあまりハードルを感じずに投稿することができます。作った曲に多くの反応を貰えることは、DTMのモチベーション向上にも繋がります(これはかなり大きいです)。
要するに
traPはいいぞ。みんなもサウンド班でDTM、しよう!!!
DTMを続けるのに一番必要だと思うもの
というわけでtraPがDTMをするのに素晴らしい場所であることが証明できたのですが、継続的にDTMを続けていくためには、結局のところ自らモチベーションを維持していくことが重要です。筆者が思う、DTMを続けるのに最も必要なもの、それは
作りたいと思うものがあること
これに尽きる気がします。これが無ければどんなに音楽に精通している人でもなかなかDTMは続かないでしょうし、逆に何かを作りたいというモチベーションさえ持っていれば、初心者でも十分DTMは続けていけると思います。そして楽しく続けているうちに気が付いたら脱・初心者しているというものです。筆者が初心者ながらも2年間DTMを続けてこられたのは、結局のところ、何かしら作りたいと思うものを持ち続けられてるからなのではないかと思っています。
「自分が作りたいと思うもの」を自由に表現できるDTMという一種の創作活動は、きっと人生を豊かにしてくれます(筆者自身も実際にそうなっていると思います)。この記事を読んで少しでも、DTMを始めてみようと思っていただけたら嬉しい限りです!
明日は@Hinaruhiさんの記事です。
備考
- traPの「班」は明確に組織として分かれているとかではなく、結構ふわっとした概念です。DTMをするからといって必ずしもサウンド班に所属する必要はありませんが、自分がDTMをしているというアピールにはなります。言うなれば班所属とは自分の活動の「意思表示」のようなものでしょう。