夏のブログリレー (もう何日目か数えるのがメンドーになってきた)日目の記事です。9/4です。まあ、コレを書いてるのは8/21なんですけどね。
東京工業大学院 社会・人間科学系の入試を受けたので、その話をします。
社会・人間科学系……!? 何それ!?
社会・人間科学系って何?
一言で言えば、リベラルアーツしてるところです。
理系やりたくて東工大に入った東工大生に一番嫌われている系です[1]。
文化人類学者の上田紀行氏、芥川賞を受賞した小説家の磯崎憲一郎氏など、文系の各分野における高名な学者、著名人を擁しています。学者に限らず、サラリーマン出身の先生が比較的多いことも特徴です。前述の磯崎氏もそのパターンです(たぶん)。
私はもともと、プログラマーになりたくて情報工学系に入学しましたが、いろいろと思惑あって社会・人間科学系の受験を決めました[2]。
出願前
私が志望していた研究室は、これまで学生を受け入れたことがないというかなり特殊な研究室でした。そして、最初に相談に行ったとき(昨年の12月)は**「社会・人間科学系より情報工学系で研究した方がためになるんじゃない?」**のようなことを言われ、やんわりと断られました。
そのため、今年に入ってから4月以後は毎月~隔週くらいのペースで研究室に凸っていました。どちらかというと、出願のためというよりただ単に勉強したかっただけなのですが[3]。その甲斐あって…かどうか分かりませんが、「前は断ろうと思っていたけど、前向きに考えてみようと思う」というような返事が返ってきました。
出願
出願で一番苦労したのは、志願理由書です。他の系の志願理由書は1000字程度らしいですが、社会・人間科学系の志願理由書は3000字。長い。
志望理由や今後の展望について一番しっかりと伝えられるのはこの志願理由書になると思います。研究計画について考えることも非常に重要ですが、詳細まで思いつかなければ少し後にしても大丈夫だと思います。ただし、のちのち面接ではかなり突っ込まれたので、試験当日までにはしっかりと固めておく必要があるでしょう。
教授からのアドバイス
先述のとおり、私は志望する先生の研究室に何回かお邪魔していました。その中で、色々なことを言われましたので、こちらで共有させて頂こうと思います。
- 志望する先生の著書は10冊くらい読んでおく。また、TwitterなどSNS上での発言も注意しておくと良い。
- 10冊すべて読むということではなく、それぞれ一部だけでも、最悪目次だけでも良い。ただし、1冊はちゃんと全部読んでおいた方が良い。
- 第2志望以降に書く先生にも、1回は会っておく。「とりあえず枠を増やすために適当に書いておこう」というのは逆効果になることもある。なぜその先生を志望するのか? という理由をしっかり説明出来るようにすること。
- (筆者補足)今回の場合、後述するアンケートがあったので、"特に理由はないけど第2志望以後も書けって言われたから書いた"というのが存在しました。しかし、第2志望以後の先生の志望理由も考えておいた方が良いというのは確かで、第1志望の先生に対する志望理由を考える上でのヒントにもなるからです。
試験
私は学部時代の成績が非常に悪く、A日程などというモノには縁がありませんでしたので、B日程で受験しました[4]。
B日程の試験は、論述試験と面接試験の2部構成となっています。A日程であれば、面接試験だけのようですが、内容はほとんど同じだそうです。受験番号からの推測では、志願者は62人前後だと思われますが、B日程の座席は46人分用意されていましたので、A日程での合格者は最大で16人となります。系全体で受け入れ人数は48人前後らしいので、少なく見てもB日程で30人以上は合格すると思われます。今回のB日程では、46人中6人が欠席し、実際に受験したのは40人でした。
タイムスケジュール
8:45 東工大大岡山キャンパス 西9号館3F 933教室に集合
9:00 論述試験(~10:00)
10:00 アンケート
10:15 面接試験の説明、解散
11:00~ 面接試験(午前)
13:20~ 面接試験(午後)
論述試験
1時間で、1200字程度の論述を行うという、普通に考えたら時間が足りるわけのないテストです。内容は事前に「志望理由や研究に関するもの」のように提示されていたので、準備して来いよ、ということだと思います。
今回出題されたのは、以下のような課題でした(原文ママ)。
以下のテーマについて、別紙に1200文字程度を目安に論述してください。文字数を厳密に数える必要はありません。
論述内容は、面接員に配布され、論述内容と志願票、プレゼンテーションに基づいて面接時の質疑が行われ、その回答を含めた全てが採点の対象となります。以下の事項について、総合的にまとめて論述しなさい。項目毎に記述する必要はありません。
① 修士課程で予定している学習内容や研究テーマ
② ①を立案した動機や目的
③ 修士論文研究の具体的な進め方(予想される問題点やその克服策を含む)
原稿用紙は1行40字×35行で、B4縦の紙に横書きでした。用紙は2枚配布され、1枚は下書き等で自由に使ってよいとのことでしたが、下書きなんてしてる暇は多分無いと思います。1時間で1200字書くということは、5分で100字のペースが必要ですから。
ちなみに、論述試験の座席は、縦の列が5列ありました。推測に過ぎませんが、おそらくこの座席配置は面接試験の順番と一致しています。5列が面接試験の5教室に対応し、各列の前から順番に面接を実施するようです。
アンケート
論述試験の後、アンケートが実施されました。文面を正確には覚えていませんが、要約すると「出願時に志望教員を1人しか書いてない受験生がいた。最低でも3人は書いて欲しいので、志望教員のアンケートを改めて記入して欲しい。」とのことでした。なお、追加のみ可能であり、削除や順序の入れ替えなどは出来ないとのことでした。また、優先されるのは出願時の書類であり、万が一覚えていない場合でも出願時にちゃんと書いてあれば問題ないとのことでした。
私は出願時から4人の名前を書いていましたので、そのまま記入しました。
これは邪推ですが、「このアンケートをやらなければ、合格者が48人に満たなくなってしまう」ということがあったのかもしれません。つまり、特定の先生への志望が集中し、かつ、そこ以外を志望していない学生が多くいたために、このような措置を取ることになったのではないか、と考えています。実際にどうだったのかは分かりませんので、信用しないでください。
面接試験
アンケート終了後、同じ建物(西9号館)の7F奥、706講義室に移動となりました。そして、面接試験のスケジュールが発表され、面接の開始25分前までに706講義室に集合すること、面接開始時には面接員が直接呼びに来るので、面接室に直接行ってはいけないことが伝えられました。また、面接開始25分前に706講義室に戻ってくるのであれば、どこで何をしていても良く、学外に出ても問題ないとのことでした。706講義室は面接の待合室となっており、東工大以外から受験に来た人は待合室としてずっと使用していたようです。私の面接は午後で、2時間以上の時間があったので、その間は自分の研究室で発声練習していました[5]。
面接試験は1人あたり25分間実施されます。最初の10分間で、受験者がプレゼンテーションを行い、後半の15分間は面接員からの質疑が行われます。プレゼンテーションは、受験票とともに郵送されてきた書類に詳細が書かれていますが、以下のような課題でした(受験票と共に送付された書類の内容です)。
試験は、志願者一人あたり最長30分程度行います。はじめの10分間程度[6]、志望動機、学修・研究計画、将来の進路などについて説明を求めます。
以下の項目を参考にし、また、各項目の間の関係・つながりがわかりやすい説明内容となるよう、内容や資料などを事前にしっかりと準備してください。項目を適宜入れ替えるなど、わかりやすい説明になるよう工夫して頂いて結構です。プレゼンテーションの後、質疑応答を行います。
1. これまでの研究活動・学修内容について
(これまでに学習した内容や、卒業論文のタイトル・内容など)
2. 研究・志望の動機について
(志望教員や研究テーマを選択した理由など)
3. 学修・研究計画について
(具体的な研究計画、学修・研究のスケジュール、研究の目標など)
4. 進路について
(修了後の進路、研究の展開など)
試験の際には、下記2つの方法のいずれか、あるいは併用ができます[7]。
1. 書画カメラによる資料の投影 …紙に書かれたものなどを装置に載せて、スクリーンに投影する方法です。用紙サイズはA4版、用紙の向きは横を推奨します。
2. プリントの配布 …プリントは5部持参してください。
事前に資料を作成しておいたり、10分間何をしゃべるのか構成を考えたりしなければならず、筆記試験の勉強をしなくても良い分面接のウェイトが重くなっています。
ところで、私はあえて資料を使わない作戦に出ました。別に資料を家に忘れたとか、作り忘れていたとかではなく、私の武器はトークスキル、コミュニケーション能力なので、面接担当者の目を見て話したかったからです。資料を作ると、面接員が資料を見てしまい、あまり「目と目を合わせて話す」ことが出来ないと考えました。経験上、プレゼンの資料を作って話すと、聴衆は資料に意識を集中させ、話に対する集中が疎かになってしまう傾向にあると感じます。もし資料を作るのであれば、「言葉では説明出来ない絵や表」に限った方が良いと思います。
今回の面接では、これまでの学修内容と志望動機を絡めて「大学での学び」、系の志望理由と教員の志望理由を合わせて「志望動機」、そして「研究」という3つに分けて説明を行いました。研究については、どうせ質疑応答で聞かれるだろうと思っていたので、手前の2つの4分ずつ、研究に2分を割きました。
質疑応答は、ほぼ全部研究の話でした。特に、研究計画の書類について、言葉の定義はちゃんと考えているのか? ということを突っ込まれました[8]。コレに関しては、想定していた質問だったので、なんとかごまかせました。
おわりに
社会・人間科学系のB日程院試の模様をお伝えしました。A日程のみなさんにはあまり参考にならないかもしれませんが、A日程に呼ばれる優秀な学生の皆さんであれば、何も心配は要らないと思います[9]。
合格発表は明日です。合格していた場合は、多分来年もtraPにいます。そうでなければ、多分これが最後のブログ記事になります。今までありがとうございました。これからもよろしくおねがいしたいです。
余談
今週末のGame^3に、またまた「アイシューター」で出展します! 来てね!
プレイ中のスクリーンショット載せておきます。
「AO-ZORA Express」という曲のプレイ画面です。収録曲中では最難関の曲になります。挑戦をお待ちしております。
この主張には語弊があり、系のイメージよりもリベラルアーツという概念そのものへの嫌悪感が強い人が多いイメージです。特に私と同期の16年度入学の学生は、自分たちが「リベラルアーツ」の実験台にされた、ということで憤る人も多いです。 ↩︎
いや理由語れよ、と思うかもしれませんが、それを言うと身バレしそうなのでここでは言及を避けます。同様の理由で、志望した先生も明かしていません。 ↩︎
自主ゼミっぽい感じになっていました。関連する本の書評を書くなどしていました。 ↩︎
他のtraPメンバーに「東工大生全員にA日程配ってるんじゃねえの? B日程の奴って外部だけでしょ?w」と言っている奴がいました。ベジマイト食わせたいです。 ↩︎
発声練習していたところ、研究のためにやってきた先輩から心配されました。別に気が狂れたわけではないんですが…。 ↩︎
これは罠で、実際の面接では「10分以内」でした。当初は10分30秒くらいの発表を想定していたので、直前で1分くらいカットすることに。 ↩︎
後述しますが、もちろん「使わない」という選択もできます。 ↩︎
具体的には「印象を調べる、と書かれていますが、ここでいう"印象"って何のことですか?」みたいなことを聞かれました。文系に近い研究になるので、それだけ言葉の意味を明確にしなければなりません。特に、専門用語でない日常で使うような言葉ほど注意が必要です! ↩︎
このあたり、A日程が通った人への怨恨を込めています。 ↩︎