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2024年9月7日 | ブログ記事

【2025年度】東工大 院試受験体験記【数学系】

こんにちは しょぼんです

今回は数学系の院試(幾何系)に合格した体験記を書こうと思います。これは夏のブログリレー20日目(9月7日)の記事です。

筆者

自分は東工大数学系の学部4年です。

普段は競技プログラミングという面白いゲームをやっており、結構強いです。

東工大の院試

2025年度の数学系の入試の傾向、仕組みはこんな感じです。

問が出題される。ジャンルは線形代数、微分積分、位相空間。

東工大数学系の必修科目で知識はだいたいカバーできるが、線形代数は(最小多項式・ジョルダン標準形など)やや足りないため「線型空間論」を履修するか自習する必要がある。

専門的な問題がたくさん出るので、 問を選んで解答する。

幾何分野は近年「多様体(幾何学第一・第二、幾何学続論)」「ホモロジー群(位相幾何学)」から 問ずつがでる。志望する系以外のジャンルの問題も解いてもよい。

英語。面接の合否にしか影響せず、点数には無関係なはず。(違っていたら教えて下さい。お願いします

紙の英語辞書は持ち込み可だが、英語数学辞書は持ち込み不可との噂がある。

面接を通過した受験番号の集合と、集まるべき時間が発表される。

面接を行う

合格した受験番号の集合が発表される

5月

院試対策会はすでに生えていましたが、自分は参加していませんでした。

5月の時点では「自分は院試はまだ解けない」と思っていたため、東工大の院試は解きませんでした。

線形代数の分野で「表現行列」「最小多項式」「ジョルダン標準形」などを勉強しました。とくにジョルダン標準形はいままで分からなかったので習ってよかったです。微分積分の分野では「全微分」を勉強しました。

また、公式解答があったため、金沢大の院試問題を解いたりしました。半分以上解けました。

6月

東工大午後では幾何を解くので、そのための準備を始めました。これは問題を直接解く訓練ではなく、雰囲気を知って知識をつける目的です。

自動車教習所に通いながら、位相幾何の勉強をしました。また、多様体も少し復習しました。仮免に合格しました。

勉強はしているものの、この時点で院試はほとんど解いていません。(問題のジャンルは知っているが、具体的に考察したことはないということです。これは自分の性格の問題ですが、あまりよくないです)

7月

競技プログラミングの大会 ICPC の国内予選が終わった(予選通過!)ので、ここから院試対策を本格的に始めました。

東工大は解答がなく不安だったので、代わりに東大の問題を解き始めました。東大の午前の問題の解き方を佐久間さんの解答を参考にしながら考えました。東大の問題は午前 2007, 2008 の必答の問題と、位相空間の問題を考えたと思います。東工大午前の知識はそれほど不足していなさそうだったので、あとは問題を解くための訓練だけだと思いました。

東工大の午前の 2011, 2012, 2013, 2014, 2015 の問題を解きました。この5年の問題は8割以上解けました。また、午後の多様体のための復習を本格的に始めました。午後の位相幾何は京大の院試(幾何)というpdfを参考にしながら解き方を学び始めました。院試(幾何) は様々なテクニックが散りばめられていて本当にすごいです。

胞体分割や Mayer-Vietoris 完全列でホモロジー群を求めるコツを習得したのがこの時期です。

8月第1週

東工大のホモロジー群の問題をやってみると、解けるものも解けないものもありました。数学系の人々の解答も参考にしながら解き進めました。(1週間で17年分くらい解きました。最後まで 2007, 2009 はよく分からなかったです。)

この1週間でホモロジー群の解き方はだいたい分かりました。

「複素解析は簡単」という情報があったため、複素解析を勉強し始めましたが、さすがに多様体を優先した方がいいということで複素解析の勉強は中断しました。

8月第2週

東工大の多様体をやらないとまずい、ということで東工大の多様体の問題を見ますが、何年分見ても一問も解けなかったので悔しかったです。かろうじて小問1個解けたものは何個かありました。

東工大の過去15年分の多様体問題を印刷し、その翌日から幾何(院試)のpdf、自分の過去のノート、chatGPT などを参考にして、できるだけ解けるように頑張りました。そうすると、だんだんと解けるようになりました。

最終的には考察した問題のうち完答できた問題が半分強、そうでなくても小問の1個や2個は取れるようになりました(微分同相を示す問題が全然解けない!1問成功しましたが結構天才寄りでした)。どういう問題がでるか、どういう解き方をすればいいか大体分かった気がします。

院試までの3日間

2023, 2024 の午前を解きました。半分くらいしか解けませんでした。 過去の問題より直近の問題の方がはるかに難しいという話は聞きましたが、ここまでとは思いませんでした。

また、引き続き多様体の問題を解き進めていました。2024 の午後は全然解けなかったので焦りました。

院試当日

2時半就寝、8時前起床。5時間半の睡眠は絶起の可能性があるためやめた方がいいです。自分は夜まで復習をしていました。 先輩にならってエナドリ(Monster)を飲みました。去年は60人程度ですが、今年は100人近い人が数学系を受けると聞いてびっくりしました。入試会場は本当に100人弱もの人数がいたようです。

午前

午前は 1, 2 が線形代数、3 が位相空間、 4, 5 が微分積分です。

1番の行列は「線形代数の世界」(斎藤毅)で見覚えがあります(同伴行列というらしいです)。(1) の固有多項式は根性で計算して求められましたが、(2) (3) は分かりません。後で記述することにして、他の問題に目をやります。

2番の線形代数はよく分かりません。3番は(1)が開集合系を確認するだけの簡単な問題なので、記述し始めました。

その後、1番の(3)が分かったので、(2)を飛ばして1番の(1)(3)を記述しました。3番の(2)(3)も分かったので記述します。

5番の微分積分の (1) は、極座標変換しろという圧力を感じたので、そうすると変数が分離できて条件が求まりました。(2)は複雑そうなので飛ばします。

4番の微分積分の (1) は、 の逆関数になることはすぐに分かりましたが、連続関数の逆関数が連続関数ということの証明がわかりません。間違ってはなさそうなので、それを認めて記述しました。3番 (位相空間) の(4)も分かったので記述して 3番は完答しました。

4番の (3) は反例を構築する問題ですが、(2) と対照になっていることを考えると、簡単な反例が見つかりました。(これはラッキーです)

最後は1番の (2) と2番の (1) を並行に考えましたが、2番の (1) は勘違いで大嘘を書きました。最後の最後に1番の (2) が分かりましたが、考え方はあっているものの少しミスをしてしまいました(あまり減点はされてないと思います)

最終的には

という感じになりました。2023, 2024 を解いたときの点数と同じくらい、5割~6割の点数を取ったと思います。同期たちは同じくらい解いていそうので、東大の人が試験を受けに来ることを考えれば、午前は耐え、午後次第かなと思いました。

あと、試験中の説明で先生が数学ジョークを言ったような気がしますが、よく覚えていません。

午後

午後は 4 の多様体と 5 のホモロジー群を解きました。

「ホモロジー群で3次元以下の図形、多様体で臨界点来い!(解けるので)」と連呼していましたが、問題を見てみると本当にその通りになって喜んでいました。

ホモロジー群の問題は (1) は胞体分割( 次元トーラスの境界)、 (2) は3つの点対を同一視したものなので同一視する点同士に辺を張って の1点和に帰着するもの(何度か見た)、(3) は明らかに Mayer-Vietoris を使う圧があったので使ったら解けました。ここまでで40分くらいだと思います。

多様体の問題は計算が激重なので工夫するのかと思っていましたが、結局重い計算を頑張りました。(1) は北極点付近を表示して祈りながら書きました。 (2) は北極点以外では がチャートになっているので極座標表示が になる、ということを考えれば、 が全射ではない点を求める問題となっています。これは計算量が大幅に減るため、嬉しい!しかし、最後まで見落としたケース(しかもそこが本質)がありました……

臨界点が 点しかないのはおかしいと思いましたが、本当におかしかったです。 減点は浅めだとは思いますが、 (3) はその本質を使う計算問題(臨界値を求める問題でしたが、臨界点が 点しかなかった場合、やるべきことは自明!)なので雪崩した形になりました。

午後は

なので 7割程度の点数だと思います。ちなみに、ホモロジー群の問題は今回のセットの中で一番?楽な問題だったらしいです。

英語

いつも読んでいるテキストが英語だったので英語はいけると思って辞書は持っていきませんでした。

グラフ理論について書かれた英語の問題がでました。(1)は和訳問題、(2),(3)は問題文に従う数学の問題でした。(2),(3)は解くだけなら中学程度の問題なので簡単ですが、最後まで(2)が理解できませんでした。結局エスパーで法則性を見つけましたが、正解だったらしいです。

和訳問題で「Recreational mathematics」という単語がでました。「recreation」を「レクリエーション」と言えば意味はまあ分かりますが、文字単体で見れば意味不明だったので「再構成的数学」みたいに間違って書きました。これは辞書を持っていけば防げたミスでした。

辞書は持っていった方が点数が上がりますが、英語は面接通過にだけ影響して試験の点数には関係ないらしいです。英語に自信があれば辞書は持っていかなくても大丈夫とは思いますが、持っていった方が必ず得にはなります。試験会場はほとんど全員が辞書を持っていました。

面接

面接では「解けなかった問題について聞かれる」という伝統があるため、午前の復習は重要です。

筆記試験の当日、数学系の一部のメンバーで集まり、問題についての議論をしていました(板書の写真を院試対策会のチャンネルに載せました)

翌日、夜くらいに数学系のwebページを覗いてみると面接が受かっていたので、午前の問題について何を聞かれても解けるように復習しました。

5時就寝、11時起床。面接当日の午前、多様体が間違っていることが判明したため、正しい答えを把握しました。面接の服装について、「数学科は服さえ着ていれば何でもいい」という風潮がありますが、サンダルはやめてスニーカーでいきました。

面接会場に着くと、知らない集団の方が多かったです。東工大生で固まり、緊張しながら話していました。数十分後呼ばれ、面接が開始しました。

面接では筆記試験の午前2番の(2)の答えのみ(説明は求められませんでした)、午後の多様体の(2)の黒板での説明が求められました。多様体のどこが間違っているか当日の午前まで分からなかったので危なかったです。あとは院で何をするかなどを聞かれましたが、正直に答えました。面接の内容は志望する系によっても違うと思います。

結果

合格しました!みなさんありがとうございます!第一志望の研究室(今所属しているものと同じ)でした。

具体的な対策

「受験は団体戦」という言葉がありますが、院試は文字通り団体戦にするのが強いです。院試には解答がなく、メンタル的にもきついです。そこで、院試を受ける人で集まって院試対策を行うと心強いです。東工大の数学系では院試対策会が開いていたので情報が手に入りやすく助かりました。

院試は基本独学なので、「院試のためにやるべきこと」を常に把握して、今やるべき勉強を見つけることが重要だと思います。ちなみに、大学入試も独学でやっていたので、同じ雰囲気のことをしていました。また、自分は飽き性で長時間の勉強ができないため、院試対策に使った時間は他人より短いと思いますが、その分効率的な勉強ができたと思います。

院試でわからない問題があり、情報がなかったら、chatGPT に聞くのもおすすめします。chatGPT は典型テクニックを教えてくれることがあり、重要な公式を認知できます。

午前

微分積分・線形代数は 年生までの知識があればいいと思います。微分積分は意外にも「ラグランジュの未定乗数法」が頻出で、東大の問題でも東工大の問題でも見た気がします。

位相空間は、コンパクト・ハウスドルフ・連結性・連続性の定義や性質を抑えておくことが重要です。他の話題はあまり出ない気がしますが、対策はしておいて損はありません。ハウスドルフ空間のコンパクト部分集合は閉集合、コンパクト空間からハウスドルフ空間への全単射連続写像は同相、などです。

知識がそろえば、試験は天才ひらめきバトルになります。ただし、今年の筆記試験の2番(解けなかった問題)は「典型」だったらしいので、問題を解いてテクニックを身につけることが重要だと思います。

午後

多様体

多様体は、「多様体の基礎」(松本幸夫著)で扱う話題が多いです。ただし、松本多様体の中であまり触れられていない de Rham コホモロジー群がでたこともあります(しかも二年連続!)。東工大の人は幾何学第一、幾何学第二(多様体)、幾何学概論(微分形式)のノートが参考になります。

また、京大の 院試(幾何) というpdfの最後に乗っている定理がとても有用です。なぜなら、多様体の問題で扱う多様体が の関数の正則値の逆像になっていることが多いからです(正則値定理より、これは の部分多様体になります)。過去15年の東工大の問題でもこれだけで解ける小問がいくつかあります。

位相幾何

位相幾何は、毎年「整数係数ホモロジー群」を求めさせる問題です。整数係数ホモロジー群を求める上で重要なのが Mayer-Vietoris 完全系列です。これは高頻度(というかほとんどの年)で使えます。Mayer-Vietoris 完全系列を適用した後、簡単な場合、

からホモロジー群が計算できます。複雑な場合は、 の部分の写像 がどういう形になっているかを考えると、短い完全列を導けることが多いです。とくに は簡単に考察できることが多いのでよく使えます。短完全列の形

もよく導きます( は求めたいホモロジー群)。ここで、 が自由加群なら、 になるという定理があります(分裂補題の特別な場合)。これはキャッチーで便利です。東工大の2023の問題が(難しめですが)いい演習問題になります。

また、胞体分割もホモロジー群を求めるときに高頻度で使えます。単体分割と比べて、胞体の数は少なくなりがちなので便利です。これは対象の図形が考えやすく、 次元以下のときに使いやすいです。

ホモロジー群問題の解答を書きました。正確性は保証しません(気楽に指摘・質問していただければ幸いです)
https://github.com/shobonvip/inshi/tree/main/homologyTitech

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同期の院試体験記はなぜか相互にリンクが張られているので、自分も張りたいと思います。

Riley さん

えっちょ さん

2025年度院試体験記(東工大数学系,RIMS)|えっちょ
こんにちは。というかnoteに投稿するのは初めてなので、初めましてですかね。今回は2024年8月に行われた大学院入試で私が体験したことを書かせていただこうと思います。 初めに断っておきますが、これから書くことはすべて実話です。現実離れしたことも数多く起こっており、多少の脚色も入るかもしれませんが、真実のみを語ることをお約束します。こういう注意書きをしないといけないような内容になっているので「これを真似して院試に受かってやるぜ!」という使い方のできる体験記にはなっておりません。ご了承ください。 あとマジでクソ長いので、興味のある所だけ読んでいただく使い方がよいかと思います。おすすめ

あしゅな さん

東京工業大学(東京科学大学)大学院 数学系(解析) 受験体験記|あしゅな
正直なところ、東工大数学系の受験体験記は先輩方が書かれたものを含め多くあるので、目新しさはない情報がほとんどかとは思います。しかし、先輩方含め、ネット上には順当に賢い人が順当に合格しているものが多いように思えるので、「出来の悪い人間がもがいた記録」としてはいいのかなと思い書きました。 というのは建前でただ自己顕示欲を満たしたいだけです。 一応目次も用意したので興味があるところだけ読んでいただいて、参考にしてもしなくてもいいです。 また文体が安定していませんが、そこはまともな国語教育を学士課程の入学試験に課していない弊学を恨んでください。 自己紹介 今(2024年9月現在)は東京工

Erun さん

東工大数学系院試体験記(2025年度)|Erun
Erunです。2025年度東京工業大学(東京科学大学)数学系大学院入試に合格しましたので、対策や試験当日の流れを記します。 普段あまり文章を書かないためか、大変読みにくいものが出来上がってしまいました。 また、「たくさん勉強したけど全然問題解けなくて、でも何故か受かってました!」という最も参考にしてはいけない受かり方をしてしまったので、暇な人だけ読んでください。 1.自己紹介 東京工業大学数学系B4で代数系の研究室に所属しています。X(旧Twitter)のIDは@Lnme14です。聞きたいことがあればこちらのDMにてお願いします。 2.試験の概要 東工大数学系の大学院試験

最後に

自分の院試を支えてくれたみなさんありがとうございました!

夏のブログリレーはまだまだ続きます!

明日の投稿者は @Pugma です。お楽しみに!

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shobon

黄溜まりの   自明非自明      最上川

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