この記事は以前に執筆した「FL StudioとMid2BMSを用いた音切り」の加筆修正版記事の前編です。
お詫び
2018年中に書くって言ってたのに遅くなってすみませんでした。
まえがき
前回同様、Ryu0316 (月風 竜。)氏が作成した解説動画「FL Studio+BMS制作補助ツールでBMSを作る(2017)」に追随すべく執筆いたしました。
投稿めちゃくちゃ遅くなったけどBOFXVには間に合わせるので許してください。
思ったより遥かに長くなってしまったので前後編の2記事に分割しました。
当ページは「前編:BMS化を見越したFL Studioでの素朴な打ち込み」となっています。こちらは前回記事との大きな相違点はありません。
動画の内容はほとんど後半と対応しており、こちらは全て私の勝手な蛇足です。
「前回記事読んだよ~」「はよ音切り本番の事教えろタコ」という方はこちらは読み飛ばして後編「FL StudioとMid2BMSを用いた音切り(2019 update)」をご覧ください。
概要
対象者
基本的に以下の全てを満たす人が対象です。
- FL Studioユーザー
- 諸事情で私自身は12.5を使用していますが、20でも大きな違いはないと思います
- BMS楽曲制作初心者
- 作曲専門/音切り専門ではなく、打ち込みから音切りまで一人でやる人
- 音切りに向けて打ち込み段階から気をつけるべき要素が多々あります
- 基本的な音切りはMid2BMSで行う人
- 一部トラックをwoslicerや波形編集ソフト(Edison等)でブツ切りするのは可
- BMHelper等他のBMS音切り支援ツールを使う場合も参考にはなると思いますが、あくまで後編の前置きということで
当記事の目的
- FLユーザーがMid2BMSを用いてBMS楽曲の基本的な音切りを一通りできるようになること。
- 最終目標です
- 後編でやります
- その前段階として、BMSの音切りに向いた打ち込み手法を最低限学ぶこと。
- 今回はこちら
最低限FLで作編曲ができれば、BMS化についてはこの記事及び後半の記事だけで完結するよう心がける。
今回の内容に「含まない」もの
- 譜面制作・差分制作・作曲(楽曲そのものの構成)
- 他の記事をご参照ください。
- 作曲部分についてはasahi3さんの「かんたん!FL Studioを使った作曲&BMS制作入門その2」が素晴らしくわかりやすいです。マジでオススメです。
BMS化しやすい「素朴な打ち込み」のコツ
気をつけるべき事
参考
①チャンネル名・並び順を簡潔にする
普段の曲作りでも気をつけるに越したことはありませんが、BMS化する場合は特に注意して下さい。欲しいキー音が行方不明になるなど、色々面倒が起こる恐れがあります。
また、音源を立ち上げただけで使っていないチャンネルがあったら絶対に消しておきましょう。後で面倒になります(体験談)それとチャンネル名がそのままキー音のファイル名になるので、見られて恥ずかしくないように。
②なるべくノートの「長さ」「ベロシティ」を揃える
Mid2BMSではいずれか一方でも、少しでも違うと別の音として切り出されてしまいます。サンプラーによるドラム打ち込み等では特に気をつけましょう。
無駄に音数が増えてしまうと容量がかさばり、プレイヤーのストレージを圧迫してしまいます。その上、何らかの理由でキー音を差し替えたい場合などは作者自身が大変です。なるべく揃えるようにしましょう。
もちろん、意図的に音に変化をつけたい場合は構いません。
③ステップシーケンサーは使わない
理由は②とほぼ同じです。通常FLはステップシーケンサー(画像参照)で打ち込むと「Infinite」という特殊な長さのノートになってしまいます。MIDI書き出しの際に厄介なので、ドラム類もピアノロールで打ち込みましょう。
最初はステップシーケンサーで打ち込んで後でピアノロール上で引き伸ばしても一応構いませんが、結構な確率で忘れたり漏らしたりするので最初からピアノロールで打ち込みましょう。
(救済用の「Oneshot?」モードもありますが、手間やミスを減らすため・書き出し時間短縮のために打ち込み段階で気をつけるのが良いと思います。)
④適度にクオンタイズする
①の「ノートの長さ」の問題はもちろんですが、あまりに細かい微ズレがあるとMid2BMSなど関連ツールがバグるらしいです。そしてなにより、曲全体を通して微ズレばかりだとやっててしんどいです。(※個人の感想)
基本は16分や24分程度でクオンタイズして、微ズレのノートを置きたい場合も一目でズレを認識できる程度の間隔を取りましょう。BPMにもよりますが、全体でも96分程度でクオンタイズするのが良いと思います。[1]
⑤なるべくキー音でオートメーションを使わない
MIDIノートを完全にバラしてしまうblue modeで困るのはもちろんですが、FLはパラメーター変化をMIDIに含められないためにred modeですら本来の方法で音切りすることはできません。しかもキー音一つ一つが別の音になるので容量もかさばります。「ここだ!」という決め所以外では控えるように努めましょう。
BGMにしてしまう場合や、オートメーションと同じ長さの単一のキー音に手切りする場合(ワブルベースやスウィープ等)ならあまり問題ありません。ですがその場合も同じトラックにblue,red,BGM,手切りが混在すると面倒なので、同じ音色でもチャンネルを分けておくことをオススメします。[2]
⑥ダイナミクス系エフェクトに気をつける
全BMS制作者の宿命です。
通常BMS制作の際、音切りの段階で全キー音が時間軸に対して単音ずつになるようバラされるため、普通にDAW上で再生する場合とコンプやリミッター等の挙動が変わります。
マスターに挿すのは論外、各トラックに指す場合も和音やレイヤリング(後述)、リリースタイム・ディレイ・リバーブによる音の重なりに気をつけましょう。
BGMトラックに限っては気にせずガンガン挿して大丈夫です。
⑦レイヤーに気をつける
シンセ(音源)同士でレイヤリングしている場合、音を切る前に少し考えましょう。
少しでもキー音を増やすため、それぞれのシンセを単独でキー音にした方がいいかもしれません。(BMS完成後のキー音が不足しそうな場合は特に検討すべきです)
そういった場合は作曲段階の仕上げに「レイヤーチャンネルをミュート」→「レイヤーチャンネルのピアノロールを各シンセのピアノロールにコピペ」するとよいでしょう。
一方で、下記のような場合はそのままの方が良いかもしれません。
- それぞれ単独のキー音だと著しく演奏感を損なう
- エフェクトの関係でバラせない
- 各シンセがミキサートラックを共有していて⑥に該当する場合など
- 難易度的にキー音が十分足りている
難易度に関して悩む場合、まとめて切って後からバラす事はできないので、ひとまず別々に切ってから考えた方がいいと思います。
後になってまとめたくなった場合は、後編のおまけコーナーで解説する予定の「Simamu」が便利です。
⑧BGMの長さに気をつける
FLやMid2BMSに限らない上に厳密には書き出し時の問題なので本来この記事に書くべきではありませんが、あまりにミスをする人が多い[3]ので書かせていただきます。
LR2には「1分以上のWAVを含むBMSはIRに登録できない」という仕様があります。しかし通常、音ゲー曲は多くが2分前後(BMSだと長めも多い?)なので、キー音にしない音をDAW上で単純にまとめて書き出せば1分を超えることになります。そうなったら全ておしまいです。
BGMの分割についてはいくつかテクニックがありますが、個人的にはプレイリスト上のキリの良い箇所で区切り、順に範囲選択してから書き出すのが良いと思います。(あれば)無音の箇所を最初から省く事もできます。
全体の曲長が2分弱の曲をド真ん中で2つに区切ればそれぞれ1分未満になります。しかし、ド真ん中だと区切りが悪い場合や曲長が2分を超える場合、2つ区切りではいずれかのBGM音源が1分を超えることになります。
そのため、最終的にBGMは3つに分割されるケースが多いと思います。1つや2つの場合は1分を超えていないか再確認しましょう。また、ディレイやリバーブの関係でDAW上での見た目より長くなるケースもあるので気をつけましょう。
実はあまり気をつけなくてもいいかもしれないこと
①チャンネル毎のパターン統一
BMHelperだと作曲段階から気にした方がいいらしいのですが、Mid2BMSの場合は特に気にしなくても大丈夫です。MIDIへ書き出す際、パターンに関係なくチャンネル単位で一連のMIDIトラックになります。むしろ、モード別書き出しの関係で分けたほうが楽な場合もあります。
②エフェクト(ディレイ,リバーブ等)のdry/wetを分ける・wetをBGMに送る
正直この点は各BMS作者のポリシーや制作ジャンルによって違うので、「CLKの場合は」という前提の元こちらで扱います。
この行為のメリット・デメリットは概ね以下のように考えられます。
メリット
- wetだけBGMに送る事ができる
- wetだけに(サイドチェイン)コンプ等をかけられる
- 音圧を稼ぎやすい
- Dub感を出しやすい
- キー音が時間的に短くなる
- 書き出し時間や容量の面で優れる
デメリット
- めんどくさい
- 書き出しが複雑になる
- 音によっては 演奏感を損なう
- 楽曲中でもよく聴こえる音量のディレイ・リバーブとか
TranceやHouseのようなDub感を重視するジャンルでは多少考えた方がいいかもしれませんが[4]、私の場合は各音がハッキリ聞こえやすい曲調が多い事もあり、既に4作を制作した今でもやっていません。
初心者の方にも、個人的にはデメリットが大きいと思うのであまりオススメしていません。(特にBMS制作だけでなくDTMの経験も浅い場合)
③音圧
②でも触れましたが、初心者が下手に音圧こだわろうとするとマジでハゲるのでオススメしません。
というか中級者以上でも多くのBMS製作者がハゲてると思います。
個人的にですが、最初はBGMも使わず実質2mixのパラデータを切り出した物ぐらいでもいいと思います。
最悪、曲の最初に「この曲をプレーする時はデバイスの音量を上げてね♡」という声ネタを入れましょう。
④容量やファイル名の長さなど
これも中級者以上は色々と気にしますが、初心者が下手に弄ろうとすると死にます。
前者に関しては、よほどの爆弾容量でなければ無理に削るのはやめましょう。
後者に関してはBMSEにもWAVのファイル名を連番で簡略化する機能がありますが、製作時の事故率が非常に高い上に差分制作時の余計な負担になる場合もあるので強く非推奨です。
最後に
今回の内容は以上です。
駄文・乱文失礼しました。
後編:FL StudioとMid2BMSを用いた音切り(2019 update) (執筆中)
余談「サンプラーvs.波形直貼り」
10000%筆者の主観のもと、BMS楽曲制作におけるサンプラーのメリットとデメリットをざっくり並べていきたいと思います。[5]主にワンショット系SFXの使用時を想定しています。お互いメリットとデメリットが相補的な関係だと思っていただければいいと思います。
サンプラーのメリット
- 基本的に音切りが楽
- 特に何かを気にすることなく通常のblue modeやred modeで処理できる
- エンベロープを調整しやすい
- 私がBMS楽曲のみならず日頃からサンプラーを多用する主な理由です
- 短い間隔でたくさん並べるのが楽
サンプラーのデメリット
- チョップやスプライシングが面倒
- FL付属のSliceXのような特殊なサンプラーを使用することで解決するケースもあります
- リバース系のSFXなど、頭ではなく後ろを合わせるタイプの音には非常に不向き
- いわゆる「ドラム」というタイプの音(特にワンショット寄りのクラッシュシンバル等)と「SFX」を明確に区別しにくい
- チャンネル名をいちいち考えたり覚えたりするより、波形を見て判別する方が楽
- これは各個人による
総評
めったに直貼りしない私でも直貼りの優位点が結構思いついてやばい……
でも音切り考えるならできる限りサンプラー使おう!!!!!