こんにちは。毎日暑い日が続いていますが、お元気でしょうか。夏休みが始まって3日ほどになりますが、こちらはインターンシップの準備でjavascriptを勉強するものの飽きて…を毎日繰り返しています。
あ、申し遅れました、サウンド班のオレスタ(@OrangeStar)です。
夏のブログリレーということで、たまには作曲について語る記事があってもいいよね…! と思ったのですが、なんか作曲って難しいイメージがあるよなあ…ということで、今回は弊サークル内で行った「作曲入門講習会」の資料を一般公開しようかな、と思います。
作曲初心者向けとはいえ、理系の大学生に向けた内容だったので対数が出てくる場所もありますが、よく分からない場所は飛ばしても大丈夫です。特に序盤は。
非常に長いので、何回かに分けて公開します。せっかくなので、毎日17:00に予約投稿する予定です。忘れなければ。
さて、今回は「音について」です。音楽を語る前に、そもそも音とは何か? 音階とは何か? などをしっかりと理解しておきましょう!
Chapter.0 パソコン上での作曲とは?
と、その前に「パソコン上で作曲すること」を知らないと意味が分からないと思いますので、一応説明しておきます。DAWが何か、あるいはmidi、wav、mp3が何か…などが分かれば飛ばしてOKです。
0-1 DAW
- DAW(Digital Audio Workstation)
- 作曲に必要ないろいろな機能が詰まったソフトウェア
- DAWあるいはMIDIシーケンサーなどの作曲に必要なソフトウェアは持ってますか?
- win : FL Studio / Cubase / Studio Oneなど
- mac : GarageBand / Logic Pro Xなど
- Windowsユーザーで、もし持っていない人は何かしらDLしてください
- とりあえず今日使うだけなら「Domino」がおすすめ
- Macユーザーは「Garage Band」がデフォで入ってるので使いましょう
※Dominoは厳密にはDAWではありませんが、このシリーズではまとめてDAWに含めることにします。ラクなんだもん…。
0-2 音声ファイル
- 音声を保存する形式には色々なものがある。
- チーム制作する時には拡張子の知識を正しく持っておくことが必要。
- これはサウンド系の人以外も知っててほしい…。
- wav / aiff
- もっとも単純な形式で、音声データが圧縮されずに(劣化せずに)そのまま入っている。
- そのためデータサイズが非常に大きいのがネックになる。
- もちろん音質は最高。
- もっとも単純な形式で、音声データが圧縮されずに(劣化せずに)そのまま入っている。
- mp3
- 音質をある程度犠牲にして圧縮した形式。
- 普通に聴く分にはあまり違いはない。
- 圧縮した分ファイルサイズはwavより圧倒的に小さい。
- 音質をある程度犠牲にして圧縮した形式。
- midi
- 音ではなく、演奏データを記録したもの。
- midiファイル自体は楽譜に近いものであり、音を鳴らす媒体は別で用意する必要がある。
- midi単体で聴かせる場合は、再生環境によって聞こえ方が変わることに注意。
- 演奏は相手のPCに任せるので正しく再現されるかはわからない
- 音ではなく、演奏データを記録したもの。
Chapter.1 音について
1-1 音とは何か?
音とは,空気の振動のうち周波数が可聴域(聴覚として認識できる周波数の範囲)内であるものについて,それを知覚した内容のことをいう。
- ヒトの可聴域
- 20–20000Hzと言われている。周波数が高いものほど音が高い。
- 上限を超えるものを超音波、下限を超えるものを低周波音と呼ぶ
- 17k–20kHzの音をモスキート音と呼ぶ
- 加齢に伴って可聴域が縮小していくため、この音は若者にしか聞こえないと言われている。
- 音楽に使うのは非推奨。
- 何Hzがだいたいどのくらいの高さの音なのかを知っておくと便利。
- ピアノの真ん中あたりにある「ラ」が440Hz。
- ちなみに、人間の声はこの"440Hz"周辺が出やすく、生まれた子供の産声は440Hz周辺になるらしい。
1-2 音の三要素
小中学校の理科、あるいは高校物理でも学んだ通り、音には「大きさ」「高さ」「音色」の3つの要素がある。
-
音高(ピッチ)
- 音波における周波数に相当する。単位はHz(ヘルツ)
- 補足:周波数とは、1秒間に波が何周期分入るか、という値。例えば100Hzであれば、1秒間に波が100個入る。周波数は高いほど音の高さも高くなる。
- ラジオの電波などでも"周波数"という言葉は使うが、コレも同じ意味。電波も波であるから、この波が何個入るかという値を表す。
-
音量(ベロシティ)
- 音波における振幅に相当する。単位はdB(デシベル)
- dBは対数を取っている単位。20dB増えると音量が10倍になる。
- 40dB増えると音量は100倍、60dB増えると音量は1000倍。
- 作曲においては、最大出力を0dBとし、-3dB、-6dBなどと音量を表すことが多い。
- 無音は「-∞dB」となる。
- もし0dBを超えてしまうと出力に不具合が生じる。この現象を音割れと呼んでいる。
- 具体的には、0を超えた分を強制的にすべて0にする(クリッピング)ため、音の波形が潰れてしまう。
- コレを防ぐために、パート毎に音量を調節したり、イコライジングをしたりする。また詳しく語るかもしれません。
- 音波における振幅に相当する。単位はdB(デシベル)
-
音色
- 音波の波形に相当する。波の形であるため、単位は存在しない。
- 楽器によって異なる。
-
3つ揃うと楽音と呼ばれる。
- ただし波形が正弦波である純音(音叉の音)は楽音に含めない。
- 打楽器などの噪音(そうおん; 騒音ではない)は一般に波形が周期性を持たないので、音高はない。
-
音の3要素は独立しているわけではなく、互いに関わり合っている。
- 例えば太鼓を強く叩いたときと、弱く叩いたときでは、大きさだけでなく音色も明らかに違うだろう。
1-3 音程
相対的な音高の差(正確には比)を音程という。
(以下、一般的な12音平均律を前提として話を進める)
- オクターブ(octave)
- 周波数比が であるような2音の音程を1オクターブという
- オクターブの違いは一般に同じような印象を受けるため,同じ音名で呼ばれる
- オクターブ上下の音も同じようにAと呼ばれる。なお、区別のため「C4」「A3」等とオクターブの高さを示す数字を後に付けて呼ぶこともある。数字が大きいほどオクターブが上、つまり音が高い。
- 半音・全音
- 周波数比が であるような2音の音程を半音という。
- 半音2つ分の音程()を全音という。
- 12半音 = 1オクターブである。
- 数字使わずに書くと、ピアノの隣り合った鍵の音程。例えば、ドを基準とすると、ドの隣にあるド♯は半音上がっている、というように使う。
- 全音は半音2つ分、つまりピアノの2個隣の鍵。ドを基準としたときのレは全音上がっている、というように使う。
- 微分音
- 半音よりも小さな音程の幅。数学の微分は全く関係ない。
ルートがたくさん出てくるが覚えなくても問題はない。
1-4 音名・階名
特定の音を表すものとして,音名と階名がある。
- 音名
- 絶対的な音の高さを表す音の名前
- 英語,ドイツ語,日本語が主に用いられる
- 階名
- 相対的な音の高さを表す音の名前
- イタリア語(ドレミ…)が主に用いられる
音名
- A4=440Hzとした時の周波数と音名は以下の通り
- Online Tone Generatorで何Hzがどんな音か確認できる。
周波数[Hz] | 英語音名 ポップスに多い |
ドイツ語音名 クラシックに多い |
日本語音名 調の主音を表すのに使う |
---|---|---|---|
261.63 | C | C(ツェー) | ハ |
277.18 | C♯/D♭ | Cis(ツィス)/Des(デス) | 嬰ハ/変ニ |
293.66 | D | D(デー) | ニ |
311.13 | D♯/E♭ | Dis(ディス)/Es(エス) | 嬰ニ/変ホ |
329.63 | E | E(エー) | ホ |
349.23 | F | F(エフ) | ヘ |
369.99 | F♯/G♭ | Fis(フィス)/Ges(ゲス) | 嬰ヘ/変ト |
392.00 | G | G(ゲー) | ト |
415.30 | G♯/A♭ | Gis(ギス)/As(アス) | 嬰ト/変イ |
440.00 | A | A(アー) | イ |
466.16 | A♯/B♭ | Ais(アイス)/B(ベー) | 嬰イ/変ロ |
493.88 | B | H(ハー) | ロ |
- 英語音名だけは絶対に覚えること。今後、コードや和音について勉強するとしたら、英語音名が分からないと何をやってるのかサッパリという状況になりかねない。この資料中でも英語音名を使用していく。
- #(シャープ)は「半音上げる」、♭(フラット)は「半音下げる」という記号。
- 本来シャープは#ではなく♯だが、面倒なので以後#で代用することも多い。
- ちなみにShift + 3で出せる#は"ナンバー"という記号。携帯で入力するのもナンバー。
- 前述のとおりオクターブとは周波数が1:2になるような音であるため、上記の周波数をそれぞれ2倍すれば1オクターブ上の音を表す。
- 例えば、A5の周波数は880Hz、A6の周波数は1760Hz。
階名
主音をドとして,音階でいくつ離れているかを表す。主音を1とする。
主音からの高さ | イタリア語階名 | 日本語訳 |
---|---|---|
1 | Do | ド |
2 | Re | レ |
3 | Mi | ミ |
4 | Fa | ファ |
5 | Sol | ソ |
6 | La | ラ |
7 | Si | シ |
- 主音からの高さはローマ数字で表されることも多いが、後程和音絡みで登場するのでここでは明瞭にするため算用数字で表した。
- 日本語の「ドレミファソラシド」は音名としても使われることが多いので、あまり厳密に区別する必要はない。
- しかし、この資料中では英語音名に慣れてもらうためにも英語音名表記を用いる。重ねてになるが、英語音名だけは絶対に覚えること。
1-5 音階
ある規則に従って順序よく並べられた音の列を音階という。
以下,Cを始めの音(主音)とする音階で説明する。大事なのは隣り合う音との音程であり,その音程間隔が同じであれば主音が異なっても同じ音階である。
- 長音階(メジャー)
- C-D-E-F-G-A-B-C
- 順に、全-全-半-全-全-全-半
- 初めの音を基準として、2つ目の音は全音1つ分上。3つ目の音は2つ目の音より全音1つ分上…という意味です。
- 自然的短音階(ナチュラルマイナー)
- C-D-E♭-F-G-A♭-B♭-C
- 順に、全-半-全-全-半-全-全
- 和声的短音階(ハーモニックマイナー)
- C-D-E♭-F-G-A♭-B-C
- 順に、全-半-全-全-半-(1.5)-半
- 旋律的短音階(メロディックマイナー)
- C-D-E♭-F-G-A-B-C
- 順に、全-半-全-全-全-全-半
- ただし,下降時には自然的短音階を用いる
全、半は全音・半音の意。1.5は半音3個分を意味する。
3つの短音階については、多くの場合自然的短音階が使われている。クラシック音楽などでは和声的・旋律的短音階が使われることも時々ある。まずは長音階と自然的短音階を覚えよう。なお、長音階や自然的短音階のように、全音5つと半音2つとで構成される音階のことを全音階と呼ぶ。
★練習1
使っているDAWの操作に慣れるためにも、ちょっと触ってみましょう。
(1) Cを主音とする長音階、自然的短音階をDAWに入力し、再生してください。音符の長さは自由ですが、4分音符1個分くらいがちょうどいいでしょう。
終わったら、同じようにAを主音とする長音階、自然的短音階をDAWに入力してみてください。
(2) 時間が余ったら、和声的短音階、旋律的短音階も入力、再生してみてください。この3つの短音階、聞こえ方はどんなふうに変わってくるでしょうか…?
音程
相対的な音の高さを表す方法には階名があったが、もう1つの方法として音度というものがある。
同音を1度とし、音階に含まれる音1つごとに2度、3度…と数えていく。1オクターブは8度である。Cを基準とした時の音度は以下のようになる。
なお、1・4・5を完全系、2・3・6・7を長短系と区別する。言葉は重要ではないが、「1・4・5は特別」ということは後々大きな意味を持ってくるので頭の片隅に置いて欲しい。
1-6 和音(コード)
複数の音を同時に鳴らして合成された音を和音、あるいはコードという。
和音は、基準となる音(根音やルートという)をもとにどの音階が含まれているのかで区別され、根音の音名を取って「Cメジャーコード」「Gマイナーコード」などと呼称される。よく使われる和音として、「メジャーコード」「マイナーコード」などがある。
- メジャーコード
- 根音+(根音より半音4つ分上の音)+(根音より半音7つ分上の音)
- 例…Cメジャーコード:C + E + G
- 長調では一番よく使われるコードであり、すべてのコードの基本と言っても過言ではない。例えばCが根音のときは「Cメジャーコード」と呼ばれるが、ただ「C」とだけ書いてもCメジャーコードを指す場合がある。
- マイナーコード
- 根音+(根音より半音3つ分上の音)+(根音より半音7つ分上の音)
- 例…Cマイナーコード:C + E♭ + G
- 短調では一番よく使われるコードである。例えばCが根音のときは「Cマイナーコード」と呼ばれ、「Cm」のように略記される。
他に、「オーギュメントコード」やら「ディミニッシュコード」やら「セブンスコード」やらと多くのコードが登場するが、まずはメジャーとマイナーが理解できないことには始まらない。
★練習2
(1) Cを根音とする2つの和音、「C」「Cm」を鳴らし、どのような和音なのか聴いてみよう。
(2) 同様に、Eを根音とする2つの和音、「E」「Em」を鳴らし、どのような和音なのか聴いてみよう。(1)と合わせて、メジャーコード・マイナーコードにはそれぞれどんな雰囲気があるだろうか?
(3) 時間が余ったら、「Am」「F」「G」「C」という4つの和音を、1小節ずつ続けて入力し、聴いてみよう。このような、和音を続けて鳴らすパターンのことをコード進行と言う。
- hint:A=A+C+E、F=F+A+C、G=G+B+D
1-7 楽器(インストゥルメント)
音楽を演奏するために用いる道具を楽器(instrument)という。知っての通り楽器にはそれぞれ特有の音色があり、楽器の選び方ひとつで音楽を特徴付けてしまうこともある。例えば、同じ曲でもピアノとオルゴールではかなり雰囲気が変わるだろう。
- 本来であれば楽器を演奏するだけでもその技術が必要なのだが,DTMではその技術を何ら必要とせず,無数の楽器を操ることができる。
- つまり、ギターが弾けなくてもギターの音が出せるし、ピアノが弾けなくてもピアノの音が出せる。便利な時代だ。
- リアルな音を追求するのであれば、実際に弾いてみるに越したことはないし、弾けないにしても多少の知識がある方が良い。
- ギターはどのように演奏するのだろうか?
- グランドピアノのペダルは踏むと何が起きるのだろうか?
終わりに
今回は数式が登場する箇所があり、やたらと敷居が高い内容になってしまいましたが、次回以降は数学的知識があまり必要なくなりますので、ご心配なく。
この資料、4月に作成したのですが、大体2週間くらいかかってる中々の力作(自画自賛)なので、作曲が初めてという方にも何かしら得る物があれば嬉しいです!
また明日お会いしましょう!