この記事は夏のブログリレー11日目の記事です
はじめに
こんにちは、konryuです。関数アートを始めて6年が経とうとしているので、改めて関数アートを俯瞰してみようと思いました。関数アートについて知らない人に、関数アートとは何か、私が現在(2026年8月)知っている限りの全体像をこの記事で知ってもらおうと思っています!
「関数アート」とは?
皆さんは「関数アート」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 最近はzboyさんの「きゅうくらりん」関数アートなどによって知名度が上がっていますが、まだまだ知らない人も多いと思います。

簡単に言えば関数アートとは「数式を用いて絵を描くこと」です。
学校での数学でも や などのグラフや円の方程式 などを習いますよね。他に図形に関するものと言えば不等式が作る領域、ベクトルと媒介変数表示などがあります。
関数アートではこれらの直線や円、さらに高度な数式などを組み合わせながらさまざまな図形を作り、絵を描きます。

ところで、関数アートはDesmosという、数式をグラフにして表示できるサイトで主に描かれています。このDesmosが関数アート界隈で圧倒的なシェアを占めているために、Desmosを使って作られた作品(絵に限らない)は関数アートと呼ばれがちです。しかし実は、Desmosは静止画しか作れないわけではないんですね。
静止画だけでなく動画、それにとどまらずプログラミング、ゲーム、音楽まで再現できてしまうので、この意味で関数アートの定義はかなり曖昧になっています。「形態を問わず、制作手法として主に数式を用いている作品」が関数アートだと個人的には思っています。
では具体的に、どんな関数アートがあるのでしょう? まず絵の描き方が主に大きく2つに分かれるので、まずはそれを見ていきましょう。
① 媒介変数表示を使う
媒介変数表示とは、といったように、2つの変数( と )の関係を別の変数()を用いて表すこと、ですね。関数アートではもっと単純に「動く点の軌跡を描画する」ととらえると分かりやすいです。

点を動かせば線が引かれるというのはペンみたいですね。Desmosでは媒介変数表示で描かれた図形を塗りつぶすこともできるので、実際に絵を描くのに使えます。
この媒介変数表示は関数アートの中では最も手軽で、表現力が高いです。その理由は普通のお絵描きソフトでも使われるベジェ曲線が扱えることにあります。
ベジェ曲線を扱う
そもそもベジェ曲線とは、制御点と呼ばれる点から作られる曲線です。点を置くだけでいい感じの曲線が作れるので、表現力はとても高く、ベクター画像を扱うようなロゴやアイコンの制作ソフトやフォントのデータなどに応用されています。
このベジェ曲線、実は数学的な背景がある曲線で、関数アートにそのまま持ち込めます。これでお絵描きソフト同様の表現力を手に入れることができるわけですね。zboyさんの「きゅうくらりん」関数アートもこのベジェ曲線を使って描かれています。

これら媒介変数表示を使う関数アートはその手軽さ、表現力の高さから、関数アート界隈でも人気です。ただ、ペンのたとえから分かる通り、ペンで描けるような図形しか描けないという弱点(?)があります。また、規則的なパターンがある図形なども、フリーハンドに近い状態でそのまま書かなくてはいけません。せっかく数式を使っているのにもったいない気がします。
そのような図形は方程式を使って描くことができます。多くの人が「数式を使って描く」「関数アート」と聞いて想像するのはこっちかもしれません。
② 関数・方程式を使う
数式をしっかり使いながら図形を描く方法です。関数アートっぽさがあって私は好きです。「はじめに」で載せたようなグラフなどを使って絵を描くのですが、の形の関数は表現力が低いので使わずに方程式を使って描くことが多いです。
そんなぁ。「関数」アートなのに、、
それはさておき、不等式を使うと図形を塗りつぶすことも可能です。


さらに、これらの式に対して様々な関数を加えることで図形同士を結合、共通部分を抜き出す、重なった部分だけ消すなど色々な操作をすることができます。以下に式を載せるので、気になる人は見てみてください。







また、1つの方程式に対しても少し変えるだけで色々な操作ができます。以下に一例を挙げます。気になる人はぜひ見てみてください。







こちらはベジェ曲線が使える媒介変数表示に図形単体の表現力は劣るものの、図形に対する操作の自由度がとても高く、違うベクトルで表現力が高いです。あと描いてて楽しいです。
下の絵は1時間半程度で描いた関数アートで、方程式を使って描いています。雲の複雑な図形をペンで描くのは難しい(私の画力だと不可能)ですが、方程式を使うと簡単に描けます。

ここまで紹介した手法を使うと様々な図形が描けます。次は色を塗りたくなりますね。Desmosでは色を定義できる色関数というものがあり、デフォルトで用意されている色のほかにも色が扱えます。色関数rgbなどを使って定義した色を変数に入れると、Desmos上でその色が塗りつぶす色として指定できるようになります。

普通にべた塗りするだけなら簡単にできるのですが、これまでの手法ではグラデーションを扱うのが大変でした。そこに約1年前、Desmosに画期的なアップデートが起きました。
座標を含んだ色関数を使う
約1年前、3DのDesmosで色関数に座標を含められるようになり、場所によって色が変化する、つまりグラデーションの実現が簡単にできるようになりました。
Have you noticed a change of colors? 🍂
— Desmos (@Desmos) October 28, 2025
You can now define colors in the 3D calculator that depend directly on coordinates. 📝Learn more in the Desmos Help Center: https://t.co/JjQfutKPtv #desmosart #colors #iteachmath pic.twitter.com/x1g9GbYRc0
また、任意の絵は座標(x,y)から色を表すベクトル(r,g,b)の関数だとみなすことができるので、方程式の手法と組み合わせると、xy平面に本当にどんな絵を描くこともできるようになりました。ただ、3Dを使う、数式が複雑になるなど、難点が多く、まだ界隈全体に浸透はしていない印象があります。ただ、一部でその圧倒的な表現力を使った作品もあり、今後が楽しみな分野です。
T=1
— てねうら (@teneshinuran) July 5, 2025
n=[0...64]/64
Y=y+.006sin6τT
p=(x,Y,1)/(max(|x|,|Y|))
c=hsv(0,join([0...32],[32...0])/32,n)
c:.3/|(p.x,p.y,mod(p.z+4T,4))-(0,1,2)|>n#関数アートhttps://t.co/tGc5ApQURD pic.twitter.com/Ca2Brbuzd1
以上でDesmosで絵を描く方法を説明しました。他にもDesmosでできることはあるのですが、詳しく書くと長くなるので以下ではざっくり説明します。
Desmosで動画を作る
Desmosは変数を定義でき、しかもこの変数を時間によって動かすことができます。つまり、媒介変数表示や方程式を変数によって変化させることでアニメーションが作れるんですね。一般的にアニメーションに使われるイージングも数式で表せるものばかりなので、関数アートに簡単に持ち込むことができます。この関数アートは私の描いたもので、1つ1つの円を方程式で描き、これを変数Tによって変化させてアニメーションを作っています。

Desmosでプログラミングをする
Desmosにはアクションと呼ばれる構文があり、a->bと書くことでaにbを代入する操作を表せます。これを実行するには式の左にある矢印ボタンを自分でクリックします。ただ、「ticker」という機能を使って指定した秒数ごとに自動的にアクションを実行することができます。代入しかできませんが、Desmosは関数の自由度が高いのでこれで大体のロジックが書けるようになります。主に次で紹介する技術と組み合わせてインタラクティブにしている作品が多いです。
Desmosでゲームをつくる(グラフを操作できるようにする)
Desmosでは、点がドラッグ可能だったり、グラフをクリックしたときに任意のアクションを実行できたりします。
これを使うとユーザーの操作をグラフに反映させられるので、ゲームだったり簡単なツールだったりが関数アートとして作れるわけですね。実際にテトリスを再現した例もあります。(作者:FG_1024氏、Shou氏)

Desmosで音を鳴らす
Desmosにはtone関数と呼ばれる構文が3年前に追加され、tone(周波数, 音量)で指定した周波数、音量の正弦波を鳴らすことができるようになりました。
なんで、、?
グラフ計算機に必要な機能とはあまり思えませんが、関数アートを作るうえでは革命的で、音楽を作品に組み込めるようになりました!ありがとう! また正弦波しか出せないのですが、任意の波形はフーリエ変換を用いて正弦波の組み合わせとして表現できる(らしい)ので理論上問題はなく、すべての音色をつくることができます。関数アートとしてはすでにある音楽の再現がよく見かけますが、オリジナルなものもあり、国際アートコンテストでは、入賞作品のうちtone関数を使って音楽や効果音を入れた作品が毎年一定の割合を占めるようになりました。
国際数学アートコンテスト13~14歳部門入賞作品(制作者:Ryker VanderHorn)

関数アートを取り巻く環境と文化
ここまで関数アートに使う技術を紹介してきました。最後に、ここまで関数アートを発達させたコミュニティーやその文化について軽く書こうと思います。主に私の知っている日本国内での話です。
Desmodder
有志によるDesmosの非公式の拡張機能です。関数アートの作成に特化した機能が追加され、関数名の自動補完・GPUを使った方程式のレンダリング・動画出力など、数々の便利機能が使えて、関数アートにおいてほぼ必須級の機能になっています。便利!
国際数学アートコンテスト
これはDesmos公式が年に一度開催している、関数アートの世界大会です。関数アート技術の最前線を見ることができます。日本人だとzboy氏とてきちょく氏が4年連続で入賞していてやばい。
また、日本国内でも「関数グラフアート全国コンテスト」「全国小学生関数アートコンテスト」などが開催されていて、こちらは中高生、小学生を主な対象としているようです。
ゆっくりと学ぶDesmosと関数アートの話
てきちょく氏が作成している関数アート入門のための動画シリーズで、現時点で日本でほぼ唯一の、関数アートの技術が体系的に説明されているコンテンツです。めっちゃ分かりやすい。最近では100話を超え、レイトレーシングをDesmosで実装するといったかなり高度な内容が展開されています。関数アートを始めたい方はまず見てみるといいと思います。
関数アートサーバ / Unofficial Desmos
関数アートサーバは日本の、Unofficial Desmosは世界全体の関数アートのdiscordサーバーで、どちらも関数アートの作品が日々飛び交っています。今関数アートサーバは800人ちょい、Unofficial Desmosは5700人近くが参加しているようです。他にもredditのr/Desmosがでかいコミュニティーとしてあるらしいのですが、詳しくないので挙げるだけにしておきます、、
#MathInReality
現実世界にある図形を関数アートにする遊びです。twitterや関数アートサーバ上で時折見られます。


数式ゴルフ
目的の図形をどれだけ短い式で描けるかを競う遊びです。名前はコードゴルフに由来すると思われます。ときに や など、奇抜な(そして数学的に怪しい)関数を使いながら文字数を短縮していくのは、見ているだけで面白いです。てきちょく氏の運営する関数アートサーバで盛り上がりを見せている分野の一つで、不定期で大会なども開催されています。
【関数アートサーバ 2周年記念 #数式ゴルフ大会】
— 【彳▼亍 ▼てきちょく】 (@TETH_Main) October 28, 2023
📈📈結果発表~~!📈📈
今回は提出された式を他の数式ゴルフ勢がより短くしていく協力体制が見受けられました!
派生とともにすべての作品は以下のツリーから見れます! 👀 https://t.co/s63Gg7MGW2 pic.twitter.com/YJYHrBsMHq
おわりに
関数アートに使われる技術から関数アート周辺の環境まで、現時点での私から見た関数アートの全てをざっくりとまとめてみました。得意分野の違う色々な人・分野が集まっているのに共通の言語で話せる・扱えるという感覚が関数アートの良いところの一つだと思っています。
ひとくちに「関数アート」といっても様々な分野があることと、またその魅力も一緒に伝わっていたら嬉しいです。ここまで読んでくださりありがとうございました!
明日の投稿者は@ryokuです!



