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2023年12月13日 | ブログ記事

【Senirenol開発秘話】②直感的でとっつきやすいボタン音ゲーが作りたかった話

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この記事は2023年工大祭traP Expoにて制作・展示した音ゲー「Senirenol Chronicle」の開発秘話になります。ゲーム紹介と工大祭の振り返りをした前前回の記事は別で上げてるので、未読の方はまず先にそちらをお読みください。

はじめに

おはこんばんちは。最近おうちボルテをやり始めたしがない音ゲーマー非常識です。ボルテ、楽しいですよね。操作はちょっと難しくてハードルは高めかもしれませんが、そこらの音ゲーにはない唯一無二の体験が味わえて、ボタンを押すのも気持ちよく、おまけになんか強そうなことをしてる自分にも酔えます。最高です。

おうちボルテ環境
自宅のおうちボルテ環境

前回の記事から間が空いてしまいましたが、ぼちぼち続きを書いていこうと思います。前回は高校時代、Senirenol無印を爆誕させたもののなんだかスキッリしないまま終わってしまいました。今回はそのあと月日が流れ、東工大に入学しここtraPでもう一度Senirenolを作り直すお話です。

Senirenol無印の問題点のおさらい

Senirenol無印を文化祭に出展したところ様々な問題が浮かび上がってきたと言いました。具体的には

でした。特に、ボタン音ゲー特有のハードルの高さによりプレイ感が損なわれ、更にそれにより高難易度譜面がこぞって選曲されないというのは制作者としてかなり悔しかったです。Senirenol無印を作った動機は、ただプログラミングの勉強がしたかっただけであって、音ゲーを作るというのはあくまでそのための手段にすぎませんでした。しかし、文化祭の一件でボタン音ゲーがいかに世間に受け入れられていないかを目の当たりにして衝撃を受けました。どうすれば、初心者でもとっつきやすいボタン音ゲーが作れるだろうか…元々手段にすぎなかったものが、徐々に「とっつきやすいボタン音ゲーを作りたい」という欲求へと変わっていきました。

Senirenol作り直し構想

問題の原因

ではとっつきやすいボタン音ゲーはどうすれば作れるのでしょうか?そもそもボタン音ゲーのハードルが高いのはなぜかというと、弐寺のようにレーンに対応するボタンが直感的に押せないことであったり、ボタンが一つ一つ独立しているがゆえにmaimaiのように間違ってボタンの隙間を押してしまうからでした。

https://www.aruki-mendes.biz/entry/2018/07/12/195211
beatmania IIDXの運指の一例(ややこしすぎる!)

ではボタン音ゲーそのものをやめて、チュウニズムのようなスライダーやスマホ音ゲーのような画面を叩く音ゲーにすればどうか。確かにそうすれば問題は綺麗サッパリ解決し、プロセカのように世間一般に浸透しているやりやすい音ゲーの形になります。しかしそれでいいのか。ボタン音ゲーにはボタン音ゲーの良さがあり、それは板を叩く音ゲーに代えられるものではありません。特にボタンを押した時の気持ちよさは、板を叩いた時の反発の無さに比べたらそれはそれは気持ちが良いものです。それをただやりにくいからと妥協して捨てるのは

音ゲーマーの恥、末代までの恥

というものでしょう。それにスマホ音ゲーは既に数が生まれすぎていて新規性に乏しいのも問題です。もうパクりはこりごりです。もっと革新的な、それでいて今までの問題を全て解決してくれるようなすっごいボタン音ゲーを、私は作りたかったのです。

直感的な音ゲーとは

ではどうすればよいか?チュウニズムやプロセカが直感的である所以は、ノーツが落ちてきた場所を叩くというゲーム性にあります。チュウニズムならレーンの真下、プロセカなら落ちてきた場所そのもの。実に直感的です。

チュウニズムの例

対してボタン音ゲーはどうでしょうか。例えばオンゲキ。ノーツが落ちてくる位置はある程度ボタンの位置と対応したものになっていますが、実際にそれを映す画面とボタンが離れすぎている。それゆえノーツを捌こうとすると、まずノーツの色を見て、それに対応するボタンの位置を考えて、指を運んで押す、という複雑なステップを踏む必要があります。これはいけない。単純にノーツを捌く行為一つ一つが重労働になってしまいますし、画面と手元を同時に見れない以上自分の手が画面上のどの部分に対応する場所にあるのか容易にこんがらがります。これはボルテや弐寺、ポップンなどの多くのボタン音ゲーに当てはまります。

オンゲキの例

ちなみにmaimaiはどうかというと、確かに操作は直感的ですがその独特なゲーム性ゆえに操作がこんがらがりやすく、また他と比べてかなり疲れるので惜しいですがこれもいけない。

ノスタルジア

そこで私は考えました。直感的じゃないのなら、直感的にすれば良い。すなわち、ノーツが降ってくる場所にボタンを置けば済む話じゃないかと。なーんだそんなことか。一体どうして他のボタン音ゲーもやろうとしないんだろう?

ノスタルジアみたいに。

ノスタルジアのプレイのイメージ図

ノスタルジアは落ちてきたノーツに対してその真下にあるピアノの鍵盤型のボタンを押すという、チュウニズムをボタンでプレイするかのような操作感の音ゲーです。確かにこれならノーツと押すボタンの場所の対応関係が直感的に分かり、そこまで特異的ではないゲーム性も相まってボタン音ゲーとしてのハードルはかなり低そうです。目指すべきものが段々と見えてきました。

個人的にはノスタルジアにはまだ問題点があると思っていて、例えばボタンをピアノの鍵盤のような特殊なデザインにしたせいでボタンの押し心地がネチョネチョしていてあまり気持ちよくなかったり、ノーツが流れてくるレーンが奥側に大きく折り込まれた構造になっているせいでノーツの軌道が酷く曲がっていてやりにくい点、ノーツの幅が固定されていてチュウニズムやプロセカのような自由度に欠ける、といった点が気になっています。

一対一対応の固定観念

先ほど「ノスタルジアはノーツの幅が固定されている」と言いました。ですがこれは当たり前のことで、考えてみればオンゲキ、maimia、ボルテ、弐寺といったボタン音ゲーの他、Arcaea、デレステ、ガルパといったスマホ音ゲーに至るまでみんな大体ノーツの幅が固定されている、つまり1つのレーンに1つのノーツが対応している形になっています。

ガルパ(ノーツ幅が固定されている)

一方、チュウニズム、wacca、プロセカ、ユメステといった音ゲーはノーツの幅が固定されておらず、より多彩な表現が可能になっています。チュウニズムやプロセカの人気が強すぎるだけで、実はこのタイプは少数派です。

プロセカ(ノーツ幅が可変)

特に、ボタン音ゲーでこのタイプなのは僕が知る限りではノスタルジアしかありません。そこに私は疑問を抱いたのです。なぜやらないのか?ノーツの幅を可変にして複数レーンにまたがるようにし、その範囲のボタンのうちどれを押しても処理できる、という仕様になぜしないのか?私の考えではこのようにノーツの幅を可変にした方がより初心者に優しい音ゲーになると考えています。なぜなら、初心者向けの譜面ではノーツの幅を広くとることで1つのボタンを正確に狙って押す必要がなくなるからです。それなのにどこの音ゲーもこのシステムを導入していないというのなら、チャンスです。初心者により優しくなる上に新規性まで手に入りおいしいです。

目指すべき音ゲーの形

以上の話からどのような特徴を持った音ゲーを作るべきかをまとめると、

です。ではこのような仕様でSenirenolを作り直していきます。

完成したものがこちらになります

キューピー3分クッキングみたいな端折り方してますが、実装がどうとか、コントローラー制作がどうとかの専門的な話はまた別記事でまとめます。結果的にこのような形になりました。

Senirenol Chronicle(開発段階の様子)

モニターのすぐ下に8個のボタンを横並びに配置し、奥からノーツが流れてきてその場所にあるボタンを叩く、それでいてノーツの幅が自由に変化する事でレーンを跨いで複数のボタンで取れるようになっている、我々がよく見た馴染みある音ゲーの形をしていながらそのゲーム性は類を見ない新感覚音ゲーとして出来上がりました。これは2023年の工大祭で展示しました。そのときの工大祭テーマ「chronicle」からとって、これを「Senirenol Chronicle」と名づけました。

ノーツの種類としては、ごく普通のシングルノーツ、長押しするロングノーツの他に、ボタンを押してもいいし押しっぱなしでもいい、必ず最高評価で取れるEXシングルノーツを実装しました。このノーツ区分はDeemo2に近いかな?EXシングルノーツは初心者への配慮や譜面の表現をより豊かにする目的で導入しました。

結局これは成功だったの?

結果

工大祭の振り返り記事でも書きましたが、お客さん自体は大量に来てくれて行列は絶えませんでした。しかしながら、目論見通りとっつきやすいボタン音ゲーであったかと言われれば少し唸ってしまいます。プレイして頂いた方々は小さな子供から本物の音ゲーガチ勢まで様々でしたし、単に音ゲー経験者も多かったです。しかしながら、彼ら彼女らのスコアは私の想像を大きく下回っていました。(煽りではないです)むしろその光景は高校の文化祭を彷彿とさせるものでした。その時とは違って多くの人が高難易度譜面に挑んでいきましたが、まともに戦えたのはごく少数でした。とっつきやすいボタン音ゲーとは何だったのか…?

理由

理由として考えられるのは、まずこちらの設定ミスです。というのも、実はこのゲーム、私の設定ミスで判定がfastに大きく偏っていたり、判定幅もちゃんと決まっておらず工大祭の1日目と2日目で判定幅を変更したくらいです。このようにゲームの仕様が固まっていなかった影響で実際のスコアが低く出てしまったことが考えられます。

判定がfastに大きく偏っている様子

しかしながらこれは主な理由としては考えられません。システム的な理由ではなく、人々がそもそもこのゲームに順応できていない様子でした。つまり、そもそもこのゲームにとっつけていないのです。人々の声としては「ボタンの間を叩いてしまう」「なんかやりにくい」「難しい」というのがちらほら。私が提起した問題がまるで解決されていません。そんな…やはりボタン音ゲーは一般に受け入れられない運命なのか…?

しかし私はこのSenirenol Chroniclenには大きな可能性を感じています。諦めていません。しっかりと調整を行えば今までにない音ゲーとして化けると信じています。というのも、もう1つ、上手くいかなかった理由が考えられるのです。それは譜面です。今回、制作した譜面を推敲する時間も環境もろくにとれておらず、そのまま実践投入してしまったのです。そのため、このゲームに最適な譜面が作れていなかった可能性があります。このゲームは全く新しい感覚の音ゲーですから、他の音ゲーと同じような感覚で譜面を作っては上手くいきません。長い時間こいつと接して他の音ゲーの譜面とは傾向が違う独自の譜面体系を確立しなくてはなりません。なので、もっと譜面を洗練してこのゲームに最適化すればプレイヤーにとってもやりやすくて気持ちがいいものになるでしょう。私はその可能性に賭けています。

おわりに

かくしてSenirenolは生まれ変わって新登場しましたが、前世のわだかまりを今だに残したまま幕を下ろしました。来年の工大祭ではこれらの問題をきちんと解決した、本当のSenirenolを出せたらいいなと思っています。さて、Senirenol Chronicle誕生の経緯はこれで話せましたが、飛ばしてしまった話がまだあります。次回の記事では自作コントローラー制作の経緯と作り方などについて書こうかなと思っています。どうぞご期待ください。

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この記事を書いた人
hijoushiki

23B情報工学系、しがない音ゲーマー。たまに音MAD、稀に音ゲー制作。

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