(この記事は新歓ブログリレー2017 8日目の記事です。)
初めての方ははじめまして、初めてでない方はおはようございます。
デジタル創作同好会traPで主にBGMやSEといった音系のリソースを作っているCLKと申します。
本日は、DTMにおけるエフェクトの一種である「ディストーション(Distortion)」について簡単に紹介したいと思います。
ディストーション is 何
distort : ゆがめる、ねじる、曲げる、曲解する、ひずませる
(出典 : Weblio辞書 英和辞典)
「歪ませる、曲げる」という意味を持つ動詞"distort"の名詞系。
特に音楽界隈では音を歪ませるエフェクトの一般名称として使われます。[1]
音を歪ませるというのは、別の言い方をすると「人為的に音割れさせる」とだいたい同義です。後ほど詳しく解説します。
余談ですが、ディストーションの起源はエレキギターの「あの」アグレッシブなサウンドの誕生と深く関係しています。ここでは省略しますが、なかなか面白いので気になる方は調べてみてください。[2]
ゆるふわ入門編
このブログ記事を読んでいる皆さんは高校物理の波動なんでラクのショウだと思いますが、一応復習です。
一般に、ある地点で観測する音というのは「時間」に関する「変位」の関数として表すことができます。主に正弦波の場合、変位の絶対値の最大値を「振幅」と呼びます。
さて、本題に入ります。
ここでは簡単のため音速や振動運動の減衰を一旦無視し、音を出す人と聴く人で同時刻に全く同じ音が聴こえる状況を仮定します。
図は先程の使い回しですが、とりあえずこのような音を考えます。
これは音源の近傍での空気の単振動運動でもありますが、その元はスピーカー内部のコイルの運動です。さらに元を辿れば、その内部の電気進行の運動でもあります。[3]
その点を踏まえた上で、まずスピーカーから音を出してみましょう。当然、スピーカーのコイルの振動運動と空気の振動は一致しています。
そのまま音量をどんどん大きくしていきます。すると、スピーカーのコイルの振動も大きくなっていきます。
しかし、ある付近を境に様子がおかしくなります。そもそもコイルはスピーカー本体に内蔵されている以上、無限の振れ幅で振動できるわけではありません。一定範囲以上にコイルが動こうとすれば、必然的にブレーキがかかってしまいます。それでも無理やり音量を上げると……
さっきまではy方向に引き伸ばしてただけなのが、波形そのものが変わってしまいました。波形の山のてっぺんが潰れたような波形に変化しています。
これが「音割れ」の状態です。なんだか元の音より音質が悪い感じがします。
実際に音を破壊してみよう
ぶっちゃけ理論なんてどうでもいいのです。とりあえずかけてみましょう。
ディストーションが効果的なのは例えば以下のような場合・トラックです。
- ジャキジャキした乱暴な音にしたい場合
- エレキギターもここに含みます。
- 無理矢理にでも音圧を上げたい場合[4]
- ガバキックを作る際にキックに挿す
- 音割れを擬似的に演出したい場合
逆に、以下のようにディストーションをかけない方がいい場合もあります。
- マスタートラック
- 前述の演出として使う場合に限りOKの場合あり。
- それ以外で挿すとマスタリング担当者にアンプで殴り殺されます。
- 綺麗な・上品な生音系トラック
- 音の強弱をはっきりさせたいトラック
また、ディレイやリバーブをディストーションより前にかけるとモゴモゴになってしまうので、
「ディストーション → (ディレイ or リバーブ)」
の順にかけた方が良い感じになる場合が多いです。
実用例1: SuperSaw系リード
before:
after:
バリッバリでブリッブリな強い音になります。
より強くするとノイズ感のあるエレキギターのような音色になります。
実用例2: ガバキック
before:
after:
より頭が悪い感じの音になります。
実用例3: ピアノ
before:
after:
この例は特にわかりやすいと思います。
擬似的な音割れによって「劣化」「退廃」「破滅」を感じるような印象深い音になりました。曲の全体でピアノを使いつつ、曲の一部だけディストーションをかける(強くする)とより効果的かもしれません。
さいごに
ディストーション講座、いかがだったでしょうか。
是非、色々試してみて「これだ!」というディストーションサウンドを見つけてみてください。
音圧で差をつけろ。
明日はsusugi,Double_oxygeNの2名です。
ではでは。