こんにちは。サウンド班のリキッドです。普段はこんな音楽を作っています。
Mixing Is Monitoring
突然ですが、ミキシングやマスタリングなどのポストプロダクションにおいて大事なものは何でしょうか?ヴィンテージ機材?高価なプラグイン?いいえ。
モニタリングです。
各トラックの周波数バランス調整やゴミの除去はもちろん、トラック間の音量バランス、楽曲全体の周波数バランス、ダイナミクス...。なんでもモニタリングが大事です。
モニタリング環境と一口に言っても、いろいろな要素があります。たとえば、
- スピーカ
- トリートメントされた部屋
- ヘッドホン
- キャリブレーションソフト
- 一長一短ではあるかも?
- メーター類
- スペアナ
- ラウドネスメータ
- ビットメータ
- リファレンス音源
で、こいつら全部フルに活用できれば本当に便利なんですが、そういうわけにもいかないのが貧乏学生の辛いところ。というわけで、本記事ではなるべくお金をかけずにモニタリング環境を整備するために私が行ってきたことをお話します。
スピーカー
ヘッドホンとスピーカの違いは、ステレオ2チャンネルから出てくるそれぞれの音声と我々の体との相互作用の違いと言えます。ヘッドホンの場合、Lチャンネルから出力された音声は、ほぼ100%左耳に入力され、右耳にはほとんど聞こえません。また、人間は耳の穴から拾った振動だけではなく、頭部の振動を始めとして体全体の振動を知覚しており、その振動が聴覚に与える影響は無視できません。
こうした複雑な振動体験を、ステレオ2チャンネルの直接入力に簡素化したものがヘッドホンなわけですが、実際的にはヘッドホンで音量バランスや周波数バランスを調整するのは難しいと言わざるを得ません。
ですので、できることならスピーカが使いたいわけですが、現在住んでる部屋は築60年近い木造ボロアパートでして、到底スピーカを鳴らせる環境などではございやせん。よって、スピーカを使わないか、スピーカを使える別の拠点を手に入れるしかありません。
スピーカーを使わないための手段
Waves NX Ocean Way Nashville
ヘッドホンによって、スピーカのような音響体験を擬似的に再現するためのプラグインとして、AcusticaやWavesやその他メーカーからいろんな製品が出ています。中でもオススメなのがこのWaves NX Ocean Way Nashville。いろいろ比較したなかで一番スジがいいような気がしました。もちろん実際にスピーカと聴き比べると物足りないのですが、トラック間の音量バランスを大幅に取りやすくなりました。
で、こういうスピーカエミュ系には必ずアンチがおりまして、「そんなの買うくらいなら部屋の整備をしろ」とか「良いスピーカを買え」とか仰ってくるのですが、上述したように、こういう発言はそういった選択肢を取れない人間のことを考えていないがゆえのものなのです。スピーカ買って鳴らせるならとっくに使っとるわい。
SoundID Reference
ヘッドホン・スピーカルームキャリブレーションの雄です。スピーカが使えないならヘッドホン周りを最強にするしかねえってことです。
ヘッドホン各機種が持つ特性を打ち消すようなEQカーブを噛ませることで、スペアナ上でフラットな特性を持ったヘッドホンを実現するというソフトです。じっさい一回使うともう離れられないのですが、デジタルフィルタを噛ませるため位相の変化またはレイテンシを気にしないといけないのがトレードオフですね。まぁそんなに気にするもんでもないといえばそうなんですが。
で、対応しているヘッドホンじゃないと導入が大変なので、ヘッドホン選ぶときは対応機種表に載ってるものから選ぶといいと思います。音の好みで適当なヘッドホン使っていいことなんか一つもないですよ。
スピーカを使える環境を用意するための手段
大学生という立場を十分に利用しましょう。そう、サークルの部室です。
まず部費でモニタースピーカを買いましょう。YamahaとかJBLとかから選べばいいと思います。安いので。
次に部室のトリートメントをします。とりあえず吸音スポンジペタペタするだけでかなり見違えます。Tech-nation Recordsの部室を整備したときは、こんな感じに貼りました。
適宜って書いてあるところは、手作業で振動するポイントを探索して、臨機応変に貼りました。あと、家具や備品が共振して悪影響を出してる場合があったので、できる範囲で除去するといいと思います。具体的には金属製の棚、磁石がくっつく掲示板などが悪さをしていました。
もしまだ余裕があれば、部室にもSoundIDを導入してしまいましょう。
ヘッドホン
ヘッドホンは普及率と供給安定性で選びましょう。以下の記事を読んで下さい。あとSoundIDに対応しているかどうかも重要です。
これらを踏まえて、開放型と密閉型で一種類ずつ持っておけばまぁ問題ないでしょう。Beyerdynamic、Sennheiser、Yamaha、Audio-technicaあたりから選べば外れません(国産と海外産で1台ずつにするのもアリです)。ちなみに私は、Beyerdynamic DT990pro 250ΩとBlue Microphone LOLAを併用しています。
メータ類
いろんなメータがあって迷いがちですが、この辺を抑えとけば間違いないだろ、というものを紹介します。
Voxengo SPAN
無料最強スペアナです。最強ですが、ちゃんと設定はしたほうがいいです。以下の記事を読みましょう。私はごみ取り用・ミックス用・マスター用で違うプリセットを作っています。
iZotope Tonal Balance Control
本当に素晴らしいカーブマッチングアナライザ(?)です。リファレンスとなる音源をいくつかぶち込むだけでリファレンスカーブが生成されるので、あとはその範囲に収まるようにフェーダーバランス取るだけでそれなりの仕上がりになります。どうしてもそこから外れるときは作編曲音作りに問題があると考えましょう。
リファレンスを生成するための音源がないという人はサブスクに頼り過ぎか音楽を聞かなすぎなので、機材なんか買ってないでBandcampやタワレコに行って音楽を買いましょう。
ちなみにこのプラグイン単体で買うのは全くオススメできなくて、MSP5とかMix and Master Bundleとかそういうのをセールで買ったほうがいいです。多分。
Metric AB
世界最強リファレンス比較プラグインです。セールで25ドルくらいなんで買って使ってください。ここで説明すると文字数無限になるので。
個人的に好みの使い方は、フィルタを使って各帯域ごとに音量バランスを取り、最後にフィルタを外して全体像を確認するというものです。ラウドネスメータも付いてるので、コレ一つでマスタリングまで監視できます。スペアナはだいぶ見づらい。
Stillwell Bitter
無料のビットメータです。未だにiZotopeみたいな大企業の製品でも、内部処理が32bitだったりするので、そういうのを監視するのに使います。ぶっちゃけそこまで気にしてないんですけどね。ハイレゾ音源造るわけでもなし...。
LVC Meter
マスターの波形を見るときに使っています。変なピークが出てないかとか、そういうアレです。こういうのも無料なの本当に素晴らしすぎる。
いかがでしたか?
やっつけ感のある記事なので赦してほしいですが、今まで色々やってきて良かったと思った道具や方法について解説したつもりです。皆さんも試してみてくださいね。
明日は@Napolinの記事です。お楽しみに。