feature image

2023年4月4日 | ブログ記事

【新歓ブログリレー2023 27日目】貧乏学生のDTMモニタリング事情

こんにちは。サウンド班のリキッドです。普段はこんな音楽を作っています。

Mixing Is Monitoring

突然ですが、ミキシングやマスタリングなどのポストプロダクションにおいて大事なものは何でしょうか?ヴィンテージ機材?高価なプラグイン?いいえ。

モニタリングです。

各トラックの周波数バランス調整やゴミの除去はもちろん、トラック間の音量バランス、楽曲全体の周波数バランス、ダイナミクス...。なんでもモニタリングが大事です。

モニタリング環境と一口に言っても、いろいろな要素があります。たとえば、

で、こいつら全部フルに活用できれば本当に便利なんですが、そういうわけにもいかないのが貧乏学生の辛いところ。というわけで、本記事ではなるべくお金をかけずにモニタリング環境を整備するために私が行ってきたことをお話します。

スピーカー

ヘッドホンとスピーカの違いは、ステレオ2チャンネルから出てくるそれぞれの音声と我々の体との相互作用の違いと言えます。ヘッドホンの場合、Lチャンネルから出力された音声は、ほぼ100%左耳に入力され、右耳にはほとんど聞こえません。また、人間は耳の穴から拾った振動だけではなく、頭部の振動を始めとして体全体の振動を知覚しており、その振動が聴覚に与える影響は無視できません。

こうした複雑な振動体験を、ステレオ2チャンネルの直接入力に簡素化したものがヘッドホンなわけですが、実際的にはヘッドホンで音量バランスや周波数バランスを調整するのは難しいと言わざるを得ません。

ですので、できることならスピーカが使いたいわけですが、現在住んでる部屋は築60年近い木造ボロアパートでして、到底スピーカを鳴らせる環境などではございやせん。よって、スピーカを使わないか、スピーカを使える別の拠点を手に入れるしかありません。

スピーカーを使わないための手段

Waves NX Ocean Way Nashville

ヘッドホンによって、スピーカのような音響体験を擬似的に再現するためのプラグインとして、AcusticaやWavesやその他メーカーからいろんな製品が出ています。中でもオススメなのがこのWaves NX Ocean Way Nashville。いろいろ比較したなかで一番スジがいいような気がしました。もちろん実際にスピーカと聴き比べると物足りないのですが、トラック間の音量バランスを大幅に取りやすくなりました。

で、こういうスピーカエミュ系には必ずアンチがおりまして、「そんなの買うくらいなら部屋の整備をしろ」とか「良いスピーカを買え」とか仰ってくるのですが、上述したように、こういう発言はそういった選択肢を取れない人間のことを考えていないがゆえのものなのです。スピーカ買って鳴らせるならとっくに使っとるわい。

SoundID Reference

ヘッドホン・スピーカルームキャリブレーションの雄です。スピーカが使えないならヘッドホン周りを最強にするしかねえってことです。

ヘッドホン各機種が持つ特性を打ち消すようなEQカーブを噛ませることで、スペアナ上でフラットな特性を持ったヘッドホンを実現するというソフトです。じっさい一回使うともう離れられないのですが、デジタルフィルタを噛ませるため位相の変化またはレイテンシを気にしないといけないのがトレードオフですね。まぁそんなに気にするもんでもないといえばそうなんですが。

で、対応しているヘッドホンじゃないと導入が大変なので、ヘッドホン選ぶときは対応機種表に載ってるものから選ぶといいと思います。音の好みで適当なヘッドホン使っていいことなんか一つもないですよ。

SoundID Reference - List of Supported Headphones
Browse through all supported headphone models that are currently available in the SoundID Reference software. Submit new model requests here.

スピーカを使える環境を用意するための手段

大学生という立場を十分に利用しましょう。そう、サークルの部室です。

まず部費でモニタースピーカを買いましょう。YamahaとかJBLとかから選べばいいと思います。安いので。

ヤマハ | MSP STUDIO Series - スピーカー - 概要
ニアフィールドモニターに求められる原音に忠実な再生能力を徹底的に追求したプロフェッショナルクオリティのフラッグシップスタジオモニター。
JBL 305P MkII | パワード12.7 cm(5インチ)双方向スタジオモニター
JBL 305P MkIIパワード5インチ (12.7 cm) 双方向スタジオモニターは、革新的なJBL Image Control Waveguideと洗練されたトランスデューサーを搭載し、緻密なディテール、正確なイメージング、広いスイートスポット、迫力あるダイナミックレンジで、現代のワークスペースに欠かせないリスニング機能を向上させます。

次に部室のトリートメントをします。とりあえず吸音スポンジペタペタするだけでかなり見違えます。Tech-nation Recordsの部室を整備したときは、こんな感じに貼りました。

適宜って書いてあるところは、手作業で振動するポイントを探索して、臨機応変に貼りました。あと、家具や備品が共振して悪影響を出してる場合があったので、できる範囲で除去するといいと思います。具体的には金属製の棚、磁石がくっつく掲示板などが悪さをしていました。

もしまだ余裕があれば、部室にもSoundIDを導入してしまいましょう。

ヘッドホン

ヘッドホンは普及率と供給安定性で選びましょう。以下の記事を読んで下さい。あとSoundIDに対応しているかどうかも重要です。

おお我らがモニターヘッドホンは音の好みで選ぶな高校
この記事は、「traP夏のブログリレー2021」13日目の記事です。 忙しい人のための要約 モニターヘッドホンを音の好みで選んではならない モニターヘッドホンは普及率・供給安定性で選ぼう 自分のミックスの弱点をカバーできるヘッドホンを選ぼう お前は誰だ?19Bのリキッド(@liquid1224)です。サウンド藩でDTMしたり、個人でCD作ったりしてます。SpotifyやらYouTubeやらで聴けますので良かったら聴いてくださいね。 大学入学前後からDTMを始めた、まだまだ未熟なアマチュア音楽家ですので、毎日新しい発見や気づきを得ます。今日はそんな私が、自分の音の好みへのバイアスに気づいた、とい…

これらを踏まえて、開放型と密閉型で一種類ずつ持っておけばまぁ問題ないでしょう。Beyerdynamic、Sennheiser、Yamaha、Audio-technicaあたりから選べば外れません(国産と海外産で1台ずつにするのもアリです)。ちなみに私は、Beyerdynamic DT990pro 250ΩとBlue Microphone LOLAを併用しています。

メータ類

いろんなメータがあって迷いがちですが、この辺を抑えとけば間違いないだろ、というものを紹介します。

Voxengo SPAN

無料最強スペアナです。最強ですが、ちゃんと設定はしたほうがいいです。以下の記事を読みましょう。私はごみ取り用・ミックス用・マスター用で違うプリセットを作っています。

iZotope Tonal Balance Control

本当に素晴らしいカーブマッチングアナライザ(?)です。リファレンスとなる音源をいくつかぶち込むだけでリファレンスカーブが生成されるので、あとはその範囲に収まるようにフェーダーバランス取るだけでそれなりの仕上がりになります。どうしてもそこから外れるときは作編曲音作りに問題があると考えましょう。

リファレンスを生成するための音源がないという人はサブスクに頼り過ぎか音楽を聞かなすぎなので、機材なんか買ってないでBandcampやタワレコに行って音楽を買いましょう。

ちなみにこのプラグイン単体で買うのは全くオススメできなくて、MSP5とかMix and Master Bundleとかそういうのをセールで買ったほうがいいです。多分。

Metric AB

世界最強リファレンス比較プラグインです。セールで25ドルくらいなんで買って使ってください。ここで説明すると文字数無限になるので。

個人的に好みの使い方は、フィルタを使って各帯域ごとに音量バランスを取り、最後にフィルタを外して全体像を確認するというものです。ラウドネスメータも付いてるので、コレ一つでマスタリングまで監視できます。スペアナはだいぶ見づらい。

Stillwell Bitter

無料のビットメータです。未だにiZotopeみたいな大企業の製品でも、内部処理が32bitだったりするので、そういうのを監視するのに使います。ぶっちゃけそこまで気にしてないんですけどね。ハイレゾ音源造るわけでもなし...。

LVC Meter

マスターの波形を見るときに使っています。変なピークが出てないかとか、そういうアレです。こういうのも無料なの本当に素晴らしすぎる。

いかがでしたか?

やっつけ感のある記事なので赦してほしいですが、今まで色々やってきて良かったと思った道具や方法について解説したつもりです。皆さんも試してみてくださいね。

明日は@Napolinの記事です。お楽しみに。

liquid1224 icon
この記事を書いた人
liquid1224

traPサウンド藩の浪士です。はやく老師になりたい。

この記事をシェア

このエントリーをはてなブックマークに追加
共有

関連する記事

2023年4月17日
ポケモンを飼いたい夢を叶える
tqk icon tqk
2023年4月25日
【驚愕】作曲4年目だった男が大学3年間ゲームサウンドに関わった末路...【ゲームサウンドのお仕事について】
tenya icon tenya
2024年8月21日
【最新版 / 入門】JUCEを使ってVSTプラグインを作ろう!!!!【WebView UI】
kashiwade icon kashiwade
2023年3月20日
traPグラフィック班の活動紹介(Ver.2023)
NABE icon NABE
2023年4月27日
Vulkanのデバイスドライバを自作してみた
kegra icon kegra
2023年4月25日
15時間でゲームを作った #Oxygenator
Komichi icon Komichi
記事一覧 タグ一覧 Google アナリティクスについて 特定商取引法に基づく表記