この記事は、「traP夏のブログリレー2021」32日目の記事です。
ブログはじめました
みなさん、はじめまして!今回はじめてブログというものを書いてみました、1年生のこときです。
同校サークルのFSC,ロッ研,ジャズ研でエレキギターを弾いています。
traPではサウンド班に所属しており、班内のすごい生物を遠目で眺めながら、ひっそりとDAWをいじっています…
五度圏であそぼう!
色々な歴史や理論を書こうと思ったのですが、それはいったんおいといて遊んでみましょう!タノシイヨ
五度圏ってそもそもナニ?
五度圏を簡単に説明すると、
- まずCの音(ドレミファソラシドをCDEFGABと表記しています)を頂点に設定します。
- そこから五度上の音(ある音から見て、半音7つ上の音のこと)を右側に配置していきます。
- 左側には、五度下(もしくは四度上)の音を配置していきます。
- これを繰り返すと最終的に右側にはF#,左側にはG♭が現れますが、これは異名同音のため、ここで繋げます。
そうして出来た輪っかが、五度圏なのです。
なんの役にたつの?
五度圏自体はただ単音を並べた円に過ぎないのですが、これを利用すると音楽理論の色々なかゆいところに手が届くようになります。
これを調に応用することで、特に調号を覚えるのが非常に楽になります。
メジャーキーへの応用
ここでいうメジャーキーとは、つまりドレミファソラシドのことです。
(もっと正確に言えば、ディグリー表記でⅠ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ,Ⅵ,Ⅶを構成音とする音階のうち、Ⅰを主音とした調のことです)
もちろん音階というのはこれらだけでなく、和声的長音階、旋律的短音階などありますが、最も一般的な音階はやはりドレミファソラシドですよね。
ピアノで見るとこんな感じの並びですが、
ぜんぜん左右対称じゃない!間隔も等しくないし、どういう理屈で並んでるのかわからない!
って思ったことありませんか?僕は無いです。
このような見方だと等間隔ではない理由は単純で、並べ方が間違っているから。
本来のダイアトニックの成立の仕方(要出展ですが、話すと長いので省略)から考えると
このようになります。前よりキレイですよね?これで等間隔になりました。
もう、言いたいことわかりますよね、この並び方見たことありませんか?
五度圏の、この部分なのです。
つまり五度圏は単一の音を並べただけの様に見えて、「調」の情報を含んでいるのです!
五度圏ダイヤルを回してみよう
「この部分」をダイヤルとして考えてみましょう。黒電話みたいに、グルグルまわすのです。
※#は外側、♭は内側に行くことに注意!
※※G♭とF#は表記上、便宜的につながっているに過ぎず、ダイヤルとしては全く繋がっていないことに注意!!
ダイヤルの中身にも役割があります。具体的には左から下属音,主音,属音,上主音,下中音,上中音,導音となります。
(ディグリー表記だとⅣ,Ⅰ,Ⅴ,Ⅱ,Ⅵ,Ⅲ,Ⅶまたは4th,1st,5th,2nd,6th,3rd,7th)
早い話、左から2番目がこのダイヤルのリーダーという事を覚えておけば大丈夫です。
試しに時計回りに1音分ダイヤルを回すと、ダイヤル左端のFが外れ、ダイヤル右端にF#が入り込みます。
もう1つ回すと、Cが外れC#が入る…と続いていきます。
右に回した数だけ調の構成音に#が増えていくのです
同様に、反時計回りに1つ回すと、右端のBが外れて左端にB♭が入ります。もう1つ回すと、Eが外れE♭が入り…と続きます
左に回した数だけ調の構成音に♭が増えていくのです
調に同名の派生音が共存することはないーつまり同じ調にC#とCは同時に存在しないー ことや、
調に#のつく音と♭のつく音が共存することはないということも五度圏から理解できますね!
…結局なんの役にたったの?
ここまで色々五度圏について、特有の早口で長々と説明していきましたが、具体的な使用方法について話していきます。
前述した通り、この五度圏を頭に思い浮かべられるようになると、様々な音楽理論の問題(?)がわかるようになります。例題を解いてみましょう。
例題1
何メジャーキーでしょう?
Cメジャーキーは#,♭が付いていません。
ヒント
思い出してみましょう、調の構成音の#の数は、何に応じて増えていくのでしょうか?
解答
正解はEメジャーキーでした!
調の構成音に「#」が「4つ」あることから、五度圏を「右」に「4回」動かしていることがわかります。
ダイヤルのCの部分を右に4回動かした時の場所を探してみましょう。そう、Eですね。
よって動かしたダイヤルの主役はE、つまりEメジャーキーである、と考えることができます。
例題2
何メジャーキーでしょう?
Cメジャーキーは#,♭が付いていません。
ヒント
思い出してみましょう、調の構成音の♭の数は、何に応じて増えていくのでしょうか?
解答
正解はG♭メジャーキーでした!
調の構成音に「♭」が「6つ」あることから、五度圏を「左」に「6回」動かしたことがわかります。
ダイヤルのCの部分を左に6回動かした時の場所を探してみましょう。そう、G♭ですね。
よって動かしたダイヤルの主役はG♭、つまりG♭メジャーキーである、と考えることができます。
「え、でも楽譜の表記がさっきと違うじゃん!」と思った人がいると思います。
例題1はト音記号で、例題2はヘ音記号なのですが、その違いは基準音の場所です。
五線譜上での基準音をどこへ変えようとも、調の#や♭の数が変わることはありません。
よって#や♭の数だけを考えて問題ないのです。
例題3
何メジャーキーでしょう?(今回はキーの構成音以外の音は含まれていないものとします)
コード理論の知識がある人も、音階の構成音という観点から解いてみましょう!
(コード理論を適応してキーを判別するのが、かなり難しい曲を選びました)
ヒント1
いったん音名の横の数字や記号は無視して考えましょう!(Em7はEとして見る)
ヒント2
書いてあるだけの情報では#や♭の数が特定できませんよね。
とりあえず出てきた音名を五度圏上でマークしてみましょう。
解答
正解はGメジャーキーでした!
実直に#の数を数えていくと、F#の一個であることがわかります。
調に同名の派生音は共存できないことから、C,D,E,Gは#も♭もついていないこともわかります。
ですがA,Bが登場していません!
調に#と♭は共存できないため、F#が居る以上、♭は存在しませんが、A#,B#の可能性があります。
これでは解けないと思うかもしれませんが、考えてみてください。
C,D,E,F#,Gが存在する以上、このダイヤルには「可動域」が存在します。
「可動域」によって、A#やB#をダイヤルに入れることは出来ないですよね。
可動域からC,D,E,F#,Gを含むダイヤルは、右に1回動かしたダイヤルである必要がありますね。
十分性を確かめましょう。
このダイヤルの構成音は C,G,D,A,E,B,F# 画像と矛盾が無いことが確かめられました。
よってダイヤルの左から2番目のGが主役であり、Gメジャーキーであることがわかりました。
この問題の小話
例題は解けたでしょうか、少し難しかったですね。
実はこの問題、もっと簡単に解くことが出来ることに気付きましたか?
「C」と「F#」の2音だけで、ダイヤルは完全に固定されてしまうのです。
五度圏上で対面に位置する2音の関係を、「トライトーン」「三全音」といいます。
例えばF#はCの半音6つ上、全音3つ上なので、このように呼ばれます。
このトライトーンは各調に対して1組しか無いという性質を持ちます。
(これはジャズにおいて、ドミナントは調に1つしかないという理念に繋がります…)
この理解し辛い概念も、ダイヤルを考えればわかりやすいですよね。
トライトーンを決めると調が決まり、調を決めるとトライトーンが決まるのです。
番外編 コード理論への適応
コード機能から考える多調性のおはなし
コード理論やモードそのもの説明はしないのでナナメ読みで構いません
コードの機能だけで調を判断しなければいけない時、人生で1度くらいはあると思います。
つまり、音階などの横の並びではなく、完全に縦の並びだけを考えるときです。
ところで例題3、とけましたか?
例題3でコード理論を適応するのが難しい理由は、ずばり音数が少ないからですよね。
まともに書いてあるのはEm7位なもので、Ⅱm7かⅢm7かⅥm7の判断が出来ません。
セブンスコードやdimコードがあったら一発でわかるのですが...
これはつまり「音数や音種が少ないと調性を失う」ということで、結局ダイヤルの可動域の話に帰結します。
ダイヤルの可動域が広い=多調性があるとも考えられます
ディグリー五度圏
ここで、実音を伴わない度数表記の五度圏を考えてみましょう。
調性を決める音
さらに、正体不明の音「x」を主音とするコードを考えます。
xM7
xM7の構成音は(1,3,5,7)なので、印をつけました。
1と5だけ(所謂パワーコードってやつ)だと、調性がかなり無いことがわかりやすいですね!
そのあとに3や7を足すことで、調性がどんどん明確になっていっていますね。
ダイヤルの可動域が狭くなっていくということです
ダイヤルを壊さない限りは、出せる音は限られています。
2や6は、調性が2つ(可動域1つ)を保ちますが、4や4#を鳴らしてしまうと調性が確定します。
4を鳴らすとアイオニアンXM711となり、4#を鳴らすとリディアンXM7#11となります
x7
x7の構成音は(1,3,5,♭7)なので、印をつけました。
これを見ると明らかなように可動域は0、つまり調性が明確です。
これは五度圏上で対面に存在する、♭7と3が原因です。
セカンダリードミナントや裏コードの存在から、調が明確という言い方に疑問を覚えるかもしれません
究極的に、転調と多調は異なる概念だということを押さえましょう
多調性を利用して転調することはあるのですが、転調したから多調性があるというわけではありません
その意味でセカンダリードミナントはその瞬間、完全に調性を変えて転調してると言って良いでしょう
xm7
xm7の構成音は(1,♭3,5,♭7)なので、印をつけました。
xM7やx7と比べるとダイヤルの可動域は2であることから、調性が不明瞭なコードであることがわかりますね!
4を鳴らすことで調は確定しませんが、2や♭6を鳴らすと可動域が1つ減ります。
2を鳴らすとエオリアンかドリアンとなり、フリジアンの可能性が消えます
♭6を鳴らすとエオリアンかフリジアンとなり、ドリアンの可能性が消えます
逆に、♭2や6を鳴らすと調性が確定します。
♭2を鳴らすとフリジアンXm7♭9となり、6を鳴らすとドリアンXm713となります
xm7-5
xm7の構成音は(1,♭3,♭5,♭7)なので、印をつけました。
これを見ると明らかなように可動域は0、つまり調性が明確です。
これは五度圏上で♭5が主音(1のことです)の対面に存在する事が原因です。
音楽用語
もとから印がついている音のことをコード・トーンといいます。
調性を確定させてしまう音とは、つまりキャラクタリスティック・ノートのことです.
そしてそれらを全て含めつつ最終的に出せる音のことをアベイラブル・ノートといいます。
上図:各モードの特性音=キャラクタリスティック・ノート
理論を勉強していると、こういうものを見せられて、「さぁ、覚えろ!」と言われることがよくあります。
そういう時は、五度圏を書いてみましょう。ある程度は覚える手助けをしてくれるかもしれません。
まとめ
五度圏、楽しかったですか?僕は書いてて楽しかったです!!ヨカッタネ
単純ですが奥が深く、この話題で永遠に話せてしまいます。
他にも、中心軸システムや五度圏上の幾何学的な作曲など五度圏の魅力はまだまだたくさんあります。
面白そうと思ったら是非調べてみてください!
もっと詳しいことが知りたい人のためにオススメの本やサイトを載せておきます!↓↓
明日の担当はサウンド班の大先輩@kasiwadeさんの記事です…!