この記事は、「traP夏のブログリレー2021」13日目の記事です。
忙しい人のための要約
- モニターヘッドホンを音の好みで選んではならない
- モニターヘッドホンは普及率・供給安定性で選ぼう
- 自分のミックスの弱点をカバーできるヘッドホンを選ぼう
お前は誰だ?
19Bのリキッド(@liquid1224)です。サウンド藩でDTMしたり、個人でCD作ったりしてます。SpotifyやらYouTubeやらで聴けますので良かったら聴いてくださいね。
大学入学前後からDTMを始めた、まだまだ未熟なアマチュア音楽家ですので、毎日新しい発見や気づきを得ます。今日はそんな私が、自分の音の好みへのバイアスに気づいた、というそんなお話をいたしましょう。
私のイヤホン・ヘッドホン遍歴
中学高校の頃からずっとオーディオが趣味で、通学中に使えるポータブルオーディオを始め、大学に入ってからは音楽制作用の機材なども購入してきました。どんな機材を使ってきたか、イヤホン・ヘッドホンに絞ってざっと見ていきましょう。
Shure SE215SPE
オーディオに詳しくない人でも街で見かけたことがあるであろう人気モデルです。ちょっと高めのイヤホンを奮発して買っちゃった!という人が多く使用している感じがありますね。ステージモニター向けに設計されたという触れ込みで、リケーブル可能だったり、遮音性が良かったり、使い勝手が良いのも人気の秘訣かと。ただだいぶ低音もりもり感があって、すぐに手放してしまいました。
SONY MDR-EX800ST
人生を変えた一本。ソニー・ミュージックスタジオと共同開発されたステージモニターです。SE215と違って業務用製品として販売されているため、修理などのサポートが有料だったり、箱が無地の白だったりと色んな意味で異彩を放つ製品です。中古で買ってから6年以上経った今でも愛用しています。
Klipsch X10
中学生の頃に流行っていたイヤホン。今はもうディスコンなので、中古でしか手に入らないです、たぶん。めちゃくちゃ小さいBA型のイヤホンなのですが、かなり頑張った低域が出ると話題になりました。最近まで使っていましたが、機材整理の過程で手放しました。
Audio-Technica CK10
かなり古いイヤホン。eイヤホンで偶然出会った、これまた小さいイヤホン。当時はかなりいい値段したらしいです。小さすぎて装着しづらかったので、結局あまり使いませんでした。
AKG K550
名門AKGのヘッドホン。高校の頃から大学1年の頃まで使ってました。とても気に入ってましたが、後に低域がまっっっっったく出てねえ事に気づいてしまいました。まだ持ってますが、最近はすっかり使ってません。
iBasso SR1
iBassoはその界隈では有名なメーカーです。アンプとかプレーヤーとか作ってたんですけど、本数限定でヘッドホン出してたらしく、昨年中古でゲットしました。かなり気に入っており、このヘッドホンでCD2枚作りました。今はサブになってしまいましたが。
お分かりいただけただろうか
そう、コイツ、一本も、世に言うモニターヘッドホンを持ってないのです。
もちろん自分の好きなヘッドホンを使ってるわけですから、その特性とか癖とかはかなり把握しています。ですから作業ができないわけではありませんし、実際SR1はCD制作に一役も二役も買っているわけです。
が、早い話がコイツらは、業界標準でもなんでも無いオーディオ機器なのです。そして、コイツラが業界標準になっていないということは、業界の雄たちが選ばなかったということであり、それはつまり業界標準の機材に比べて作業に適さないということでもあります。まぁ必ずしもそうとは言えないですけど、結果的にそうなっていることが多いってことです。
で、最近になってようやく「もしかして有名なモニターヘッドホン使えば作業が楽になったりする?」と思ったわけです。もちろん今まで、モニターヘッドホンとして有名なヘッドホンを聴いたことはありました。しかし、「自分の好みの音ではない」という理由で採用を見送り続けていたのです。唯一例外としてSennheiser HD800は音が好みのモニターヘッドホンでしたが、バカ高いので買えません。
さて、思い立ったが吉日、使わなくなったイヤホン・ヘッドホンなどをメルカリで売却し、eイヤホンに行きました。そこでいわゆる標準的なモニターヘッドホン類を取っ替え引っ替え試聴すること3時間。秋葉原の大通りにビルを一棟借りするまでに成長したeイヤホンをあとにする私が手にしていたのは...
beyerdynamic DT990Pro 250Ω
はい、買ってしまいました。イヤーパッド欠品、中古、9500円。純正イヤーパッドは買い足して13000円。
正直一聴しての感想は、「ドンシャリすぎない?」でした。実際ネットでレビューを漁ってみると、ハイコスパドンシャリヘッドホンとの評が多く見られます。しかし一方で、ミキシング・マスタリングを行うエンジニアが、サブモニターとして多く採用していることでも知られています。
他に試聴したヘッドホンですが、Audio-Technica ATH-M50x、Yamaha HPH-MT8、SONY MDR-EX900ST、SONY MDR-M1STでした。
このうち、SONYの2本はミキシングには使えないと思ったので早々に敗退しました。特に900ST。
Yamaha HPH-MT8はかなり高いシェアを誇る有名ヘッドホンですが、あまりに薄味な仕上がりでとらえどころがなく、しかもちょっと高いので見送りました。多分王道なんですけどね。
最後まで拮抗していたのがM50xだったのですが、キャラクターはDT990Proとはガラッと違います。DT990Proがドンシャリなのに対し、M50xはかなりシャカシャカです。低域がタイトという言い方が良いのかもしれません。ではなぜM50xを購入しなかったかというと、それは私のミキシングの癖に起因します。
私がミックスした音源を時間を置いて聴き直すと、たいてい低域が暴れていると感じていました。特にサブベースの暴れがひどく、それに気づかずにリリースしてしまうことが多いのです。逆に気にしすぎて低域がスカスカになったり、低域と一緒に中低域が抜けてしまったりということもあり、うまく低域を捉えられていないという悩みがずっとあったのです。
で、この悩みを解決するためには、多少低域が大きめに出ており、ベースの暴れや不要な音に気づきやすいヘッドホンのほうが適しているだろうと判断したわけです。こうしてDT990Proが勝ち残りました。
ちなみに、数年前からSoundhouseがbeyerdynamicの正規代理店になっており、eイヤホンでは取り扱いをしていないようです。試聴したくなったらどうすれば良いんですかね。
所感
メチャクチャミックスしやすい~~~~~~~~~~~~!ミキシングはフェーダーバランス8割だと考えているのですが、そのフェーダーバランスの取りやすさが段違いです。
特にキックとベースの音量バランス取ったり、サブベースをサイドチェインで棲み分けたりするのがどうしても苦手だったのですが、DT990を使えば耳を頼りに作業を進められました。
DT990を聴いたときに思った「高域・低域がデカい」という感想は、裏を返せば今まで使ってきたイヤホン・ヘッドホンがすべて「中域がデカい」だったということに気づくことが出来ました。いつの間にか好みが凝り固まってたんやなって...。
結論
音の好みは人それぞれなので、有名機種が必ずしも自分にアウトは限らないのは確かです。しかし楽曲制作を行う場面では、やはり有名所を抑えておいたほうが良いということでしょう。
参考までにヘッドホン変える前後での音源を載せておきます。アレンジごと変わってるので純粋な比較にはならないですけど。
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2021/03 SR-1
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2021/08 DT990 Pro
オススメのモニターヘッドホン
- beyerdynamic DT990 Pro
今回買ったヘッドホン。お金に余裕がある人はT1とか買っても良いかもしれないけど、モニター製品として売り出されているわけではないからアレ。
- Sennheiser HD660S
ベイヤーとゼンハは2大巨頭だと思ってる。お金がメチャクチャある人はHD800s買って欲しい。アレは本当に良かった。いつか欲しい。
- Audio-Technica ATH-M50x
国産で安定した品質のヘッドホンといえばオーテク。お金がある人はM70xにしてもいいと思う。音が結構違うので試聴すべき。
明日は@logicaくんの記事です。