こんにちは。19B応化系のHTです。
東工大では、後期に電磁気学基礎と謂う授業があります。ここでは誰に習うことなくベクトル解析の話が出てきます。そこでつまづくと単位が危ない(気がする)のでここで全て紹介しようと思います。PDF形式で欲しい人は連絡ください。
前提知識
ベクトルの外積、2変数関数におけるTaylor展開、重積分、Hamilton演算子
線積分、面積分について
線積分とは一言で言うと一般の曲線に沿った積分である。
今回は簡単のため、代表して二次元の場合のみを記述する。
を上のスカラー場とし、を二次元平面上の2点,を端点とする滑らかな曲線とする。
曲線上に個の相異なる点を取る。(ただし、の時,の時とする。)
また、とおく。この時、は十分小さいとする。
この時、和
を考える。ただし、は媒介変数を用いて表されるとする。
この時、となるように極限を考えると
を得る。ここで、線素の定義より
より上の積分を
と定め、これをのに沿ったと謂う。
次に、曲線の端点における値の差を考える。展開より
であることが分かり、
が成り立つ。この時、となるよう極限を考えると
が成り立つ。ここでは「方向を持つ」線素である。
一般に、のベクトル場に対して二次元平面上の曲線の線素ベクトル との内積による積分
をのに沿ったと謂う。
三次元以上のものに対しても同様に定義される。
面積分とは一般の曲面上で行う積分である。
曲面を内の表裏がある滑らかな曲面とし、そのパラメータ表示をとする。微分積分学で習うことであるが、が上を動くときに対応する曲面上の面積は
で与えられる。このとき、面素を
と表す。
一般に上のスカラー場に対して
をの曲面上のと謂う。
また、上のベクトル場に対して、曲面の法線ベクトル方向にを横切る量は
となる。これをの曲面上のと謂い、をベクトル面積素と謂う。
・壁谷喜継/川上竜樹(2019)「ベクトル解析入門 初歩からテンソルまで」 pp.81〜89,共立出版株式会社
grad,div,rotについて
一般の曲線について、それぞれの点における傾斜を定める。
一般のスカラー場と単位ベクトルに対して、をを方向ベクトルとし、を通る直線とするとを実数として
となる。このとき、直線に沿って
と変化した時の平均傾斜はも考慮すると、の時
となる。よって点における傾斜は
となり、この時、は演算子
を用いて
と書ける。このをの方向への方向微分係数と言い、より
ゆえ、 はその方向が最大傾斜となり、大きさが最大微分係数に一致するベクトルである。これにより定義されるベクトルをの、またはといい、gradと表す。
も同様。
gradはからを作るものである。
上のベクトル場を考える。この時、を微少量として、4点を頂点とする正方形領域でのベクトルの増減(ベクトル量の増減の合計は長方形の各成分に対して直交する方向でのベクトル量の増減の合計)を考える。
今、は微少ゆえ正方形の各辺上の流量は一定とみなせるため、ベクトル量の増減は
ここで、が共に滑らかであるとすると、展開ゆえ
が成り立つので、正方形領域におけるベクトル量の増減は
これを正方形領域の面積で割り、の極限を考えると単位面積あたりの増減は
といい、これをベクトル場のと謂い、divで表す。また、発散は演算子を用いて
のようにとのとして見ることができる。
ここからわかるようにdivはからを作るものである。
次に、divの符号について
一般に流体の速度場に対し
もし、divなら、流体は単位面積当たりで膨張し、密度は減少する。
もし、divなら、逆に圧縮され、密度は増加する。
もし、divなら、この流体は膨張も圧縮もされなくなる。
の時と全く同じベクトル場、正方形領域について、各辺の接線方向に流れるベクトル量を考える。は微少量で、接線ベクトルは反時計回りを正とする。
全く同様に正方形の各辺上では流量は一定と考えることができるため、ベクトル量の増減は
で与えられる。これより単位面積当たりの変化は
となる。これは単位面積あたりを垂直に貫く軸周りの回転を表す指標となる。
一方、上のベクトル場に対しては
を表す。そこで、上のベクトル場に対して三次元ベクトル
を対応させる作用をのと謂い、rotと表す。すなわち、rotはからを作るものである。
また、先ほどと同様にrotは演算子とベクトル場のとして
と表記できる。また、行列を使って
とも表される。
ベクトル場に対して
もし、rotなら、は渦なしと謂う。
・壁谷喜継/川上竜樹(2019)「ベクトル解析入門 初歩からテンソルまで」 pp.70〜79,共立出版株式会社
あとがき
そういえば、熱化学でも線積分は使いますね。まあ、役に立つといいな。時間があれば次は微分方程式についても書くのでその時はまたよろしく。