オレスタです。今日も今日とて、日刊「作曲入門」のお時間がやってまいりました。
今回は「コード進行入門」というテーマですが、一気に難しい内容になりますので、今日と明日の2回に分けてお届けしようと思います。前半となる今日は「ダイアトニック・コード」と「カデンツ」について。そして明日に「有名なコード進行」をお話しします。繰り返しになりますが、ダイアトニック・コードあたりから突然難易度が上がります。よく分からない時は前日の内容に戻って復習することをお勧めします! それでは、頑張っていきましょう。
Chapter.5 コード進行入門
5-1 ダイアトニック・コード
ハ長調の音階に従ってキーを1つ飛ばしに押していくと、以下の7つのコードが現れる。
根音 | C | D | E | F | G | A | B |
---|---|---|---|---|---|---|---|
コード(3和音) | C | Dm | Em | F | G | Am | Bdim |
コード(4和音) | CM7 | Dm7 | Em7 | FM7 | G7 | Am7 | Bm7-5 |
↓ハ長調のダイアトニックコードを順番に
これらの和音のことをダイアトニック・コードと呼ぶ。ダイアトニックは"全音階の"という意味。
Ⅰ・Ⅳ・Ⅴの3つを主要3和音と呼ぶ。また、Ⅱ・Ⅲ・Ⅵの3つを副3和音と呼ぶ。
ダイアトニック・コードはあるキーに限らない書き方をするため、ローマ数字で表記されることも多い。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
数字表記(3和音) | Ⅰ | Ⅱm | Ⅲm | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵm | Ⅶdim |
数字表記(4和音) | ⅠM7 | Ⅱm7 | Ⅲm7 | ⅣM7 | Ⅴ7 | Ⅵm7 | Ⅶm7-5 |
例えば、ト長調におけるダイアトニック・コードは以下のようになる。
数字表記 | Ⅰ | Ⅱm | Ⅲm | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵm | Ⅶdim |
---|---|---|---|---|---|---|---|
コード | G | Am | Bm | C | D | Em | F#dim |
主要3和音
ダイアトニックコードにおける主要3和音には、それぞれ働きがあり、働きに応じた名前が付いている。
- Ⅰはその調の中心となる和音である。この和音をトニックと呼ぶ。
- 調の中心というだけはあり、曲の最初と最後を任される場合が多い。
- Ⅴは、中心となるⅠを支える働きを持っている。この和音をドミナントと呼ぶ。
- ドミナントの次にトニックが来ると安定感があると言われている。このような関係性をカデンツと呼ぶが、それは続く5-3に任せる。
- Ⅳも同様で、中心となるⅠを支えている。この和音をサブドミナントと呼ぶ。
- ドミナント同様にトニックを支える存在なのだが、ドミナントよりも不安定である。不安定というのは悪い意味ではなく、むしろサブドミナントが無ければかなり味気の無い音楽になってしまう。
最もシンプルな作曲であれば、この主要3和音だけで構成出来てしまう。それだけこれらの和音は重要ということである。
副3和音
続いて、副3和音についても考えてみよう。
- Ⅵm、例えばAmはA・C・Eという構成であり、これはCのC・E・Gと1音違いである。
- したがって、ⅥmはⅠの代わりに用いることができる。
- したがって、ⅥmはⅠの代わりに用いることができる。
- Ⅲm、例えばEmはE・G・Bという構成であり、これもCのC・E・Gと1音違いである。さらに、GのG・B・Dとも1音違いである。
- したがって、ⅢmはⅠとⅤのどちらの代わりにもなれる。
- したがって、ⅢmはⅠとⅤのどちらの代わりにもなれる。
- Ⅱm、例えばDmはD・F・Aという構成であり、これはFのF・A・Cと1音違いである。
- したがって、ⅡmはⅣの代わりに用いることができる。
- したがって、ⅡmはⅣの代わりに用いることができる。
まとめると、主要3和音と副3和音は以下のように整理することが出来る。これらの副3和音の働きのことを代理和音と呼ぶ。
働き | 主要3和音 | 副3和音(代理和音) |
---|---|---|
トニック | Ⅰ | Ⅳm・Ⅲm |
ドミナント | Ⅴ | Ⅲm |
サブドミナント | Ⅳ | Ⅱm |
トニック・ドミナント・サブドミナントはT・D・Sと略記される。
なお、ここまで「Ⅶdim」にはあまり触れてこなかったが、正直な所Ⅶdimは使い方が非常に難しいのでここでは扱わないことにする。コード進行を考えるうえで有効な使いどころを見つけてもらいたい。検索すれば出てくる…はず。
5-2 カデンツ
ダイアトニックコードをT,D,Sの3つにまとめた上で、これらの順番を考える。
ダイアトニックコードの並びには、ある程度のパターンがある。このパターンのことをカデンツと呼ぶ。
カデンツにはいくつかのルールがある。
- トニックで始まり、トニックで終わる。
- ドミナントの次はトニックが来る(ドミナント・モーション)。
このルールに従うと、以下のようなパターンが考えられる。
- T→D→T
- T→S→T
- T→S→D→T
この3つが、伝統的なカデンツと言われる王道のパターンである。
★練習7
伝統的なカデンツの1つ「T→D→T」を構成してみよう。
- C→G→Cの順に和音を鳴らす。各2拍程度が良い。
- そのまま鳴らすと、Gの高いDが耳障りに感じるかもしれない。このDを1オクターブ下げよう(転回)。
- この3つの音を続けて聞いてみよう。聞き覚えが無いだろうか?
↓練習7の解答(出来れば、練習7を自分でやってから聞いてみてください)
さて、上の3パターンだけでは非常に味気の無いコード進行だと言わざるを得ない。そこで、先程紹介した代理和音や、セブンスコードを活用してみよう。
-
例えば、ハ長調でT→S→D→Tは「C・F・G・C」となる。
-
最初のCを代理和音であるAmに置き換えてみると、「Am・F・G・C」となる。
- 実はこの進行は、後日紹介する予定の"小室進行"というコード進行である。小室哲哉氏が多用していたコード進行だ。
-
代理和音は置き換えるだけでなく、付け加えることも出来る。Cの直後にAmを挿入すれば「C・Am・F・G・C」となる。
- 本来必要ないAmを入れることで、多少軽快に聞こえてこないだろうか?
-
代理和音は2つ連続でもOK。Fの代わりにDmを用いると「C・Am・Dm・G・C」となる。
- この「Dm・G」をローマ数字に戻すと「Ⅱm・Ⅴ」となる。この進行はツー・ファイブと呼ばれ、直後にトニックへと戻ることで、そのトニックを効果的に使うことが出来る。
-
また、各和音はそれぞれ(ダイアトニックコードの表で)対応するセブンスコードを使用しても良い。例えば、Gの代わりにG7を用い(て、ついでに最後のCを消してみ)ると「C・Am・Dm・G7」となる。
(体感的に、セブンスを使っている事の方が多い気がする…) -
やってはいけない接続も存在する。
- 代理和音から本来の和音に戻ってはいけないというルールがある。よっぽどの事情とセンスがない限りは失敗する。
- 理由は説明しづらいが、本来の和音が必要なら代理なんて使わずにさっさと使え、ということだろうか。ともかく違和感の元になる。
- 具体的には、Am→C、Em→C、Em→G、Dm→Fは危険。使うなら逆にしよう。
- 代理和音から本来の和音に戻ってはいけないというルールがある。よっぽどの事情とセンスがない限りは失敗する。
-
(上級編)
- ダイアトニック・コード以外のセブンスコードは、本来の音階には無い音を使うため、良い意味でも悪い意味でも大きな印象を与える。
- 上手く使えば感動や興奮を伝えられる。
- 下手に使えば違和感だけが残る。
- 本来の音階ではない音を使うと"不協和音"になりがちだが、作曲においては不協和音は必ずしも"悪"ではないのだ。
- ダイアトニック・コード以外のセブンスコードは、本来の音階には無い音を使うため、良い意味でも悪い意味でも大きな印象を与える。
★練習8
ヘ長調(Fが根音)でのコード進行を考えてみよう。ヘ長調でのダイアトニック・コードは以下の通り。
数字表記 | Ⅰ | Ⅱm | Ⅲm | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵm | Ⅶdim |
---|---|---|---|---|---|---|---|
コード | F | Gm | Am | B♭ | C | Dm | Edim |
(1) まずはカデンツ通り、F・B♭・C・Fのコード進行を打ち込んでみよう。
(2) FとB♭の間に、Fの代理和音であるDmを入れてみよう。
(3) B♭を代理和音であるGmに変えてみよう。
(4) ここまでの作業をすると5つの和音が並んでいるはずだ。最後のFの後に3つ和音を付けて、8つの和音から成るコード進行を作ってみよう。ループすることを考えて、最後はトニックで終わらなくても良い(9つ目にトニックが来ることを想定すること)。
↓練習8を筆者がやってみた例1
「F→Dm→Gm→C→F→Gm→Am→C→F」
↓例2(ダイアトニックコード以外も使用しています)
「F→Dm→Gm→C→F→Gm→D#→C→F」
7番目の和音を「D#」にしてみました。ちょっと感動的?
参考:これだけは避けて通るな音楽理論
5-1節・5-2節を編集する際に参考にさせて頂いたwebサイト。その他ヒット曲の分析等もあるので初学者にはお勧め。
終わりに
コード進行について、如何だったでしょうか。ちょっとでもイメージできたら…いいな…と思ってます。ただ、イメージしづらいですよね…。もうちょっと実際の例に近づけられるように後日やろうと思っていることがあります。お楽しみに。
明日は「カノン進行」とか「小室進行」「王道進行」などの説明をしていこうと思います。この3つを覚えておくだけで、かなり作曲の幅が広がります! ぜひご覧ください!
(…毎回"終わりに"書くのがちょっと疲れてきました。)