2017年11月8日 | ブログ記事

数学と仲良くなりたい人へ

60

こんにちは。Advent Calender 11月8日担当の60°です。

さっそくですが、皆さん数学は好きですか?

好きか嫌いかで二分できるものではないかもしれませんし、数学とひとくくりにしてしまうのもあまりに大雑把ですが、この記事は 数学を好きになりたい方数学に対する苦手意識を克服したい方 などに読んで頂けたらなと思って書いています。 数ヤ すでに数学が大好きで得意ですという方も、暇つぶしくらいにはなるかもしれないので良ければ読んで行ってください。

数学ガールはいいぞ

自分は数学が得意だとはとても言えず、仲良くなれているかどうかも怪しいのですが、それでも数学が好きだなと思えるきっかけになった本があるので今回はそれを紹介したいと思います。

結城浩さんの 『数学ガール』シリーズ です。

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『数学ガール』
結城浩/著
ソフトバンククリエイティブ 2007年

どんな本?

数式が出てくる読み物で、主人公の男の子が一人で数学したり女の子と一緒に数学したりするお話です。
巻ごとにメインとなる定理や理論が決まっていて(各巻のテーマは後述)、そこに向けていくつかの題材を扱いながら物語が進んでいきます。難易度は小学生レベルから大学生にとっても難しいものまでさまざまです。
数学を題材にした読み物だと『博士の愛した数式』や『浜村渚の計算ノート』あたりが有名だと思いますが、これらと比べると数学部分の占める割合がやや大きいかなという感じです。
この記事では、以下の内容について書いています。

全て独立しているので、気になったところだけ飛ばし読みしていただいてもまったく問題ありません。
(「数学を好きになりたい人におすすめしたい本」というテーマなので以降の文章もそのような書き方をしていますが、『数学ガール』は数学が得意な方が読んでも楽しいと思います。未読の方はぜひ!)

おすすめする理由

読みやすい

とにかく数式の変形とその説明がものすごく丁寧です。高校や大学で数学を学んでいる人にとっては「え、そんなところまで説明するの?」みたいなことまで書かれていたりするかもしれません。
また、数学部分の話は基本的に登場人物の台詞や考えていることとして書かれているので、本を読んでいるというよりは数学の得意な友人から話を聞いているみたいな感覚で読むことができます。

楽しい

問題を解いたり定理を証明したりといった一連の流れを、登場人物たちはよく旅にたとえます。学んだ定理や式変形のセオリーといった武器を使って道を模索したり、おおまかな論理の流れを書いた旅の地図に沿って進んだり。わくわくしながら式を追うことができます。
初めのほうの章で考えていたことが後半になって再登場することも多いので、「こことここが繋がっていたのか!」みたいな感動も味わえたりします。楽しい。

「考え方」が学べる

いわゆる教科書だったり参考書だったりって、ほとんどの場合は最短経路しか書いていないじゃないですか。つまり定理の証明とか問題の解答とか、正しいものが頭から整然と説明されていて。もちろんそれを目的として書かれているので当然ですが、数学ガールが教科書や参考書といちばん違うのはここなんじゃないかなと個人的には思います。登場人物たちが「まずはこのあたりを探してみよう」「この道はダメだったから、こっちに行ってみよう」などと模索しつつ、時に回り道をしながらも進んでいく、その思考のプロセスをなぞることができます。
こういった考え方のいくつかはキャッチフレーズとして言語化されていて、すっと頭に入ってくるのがすごく良いなと思います。「例示は理解の試金石」とか「整数の性質は素因数が示す」とか「変数の導入による一般化」とか。

おすすめの読み方

数式が難しかったら飛ばす

著者の結城浩さんが数学の話を書く際心がけていることに「数式を全部『ほげほげ』に変えて読んでも理解できるように」があるそうです。実際その通りで、数式を読まずに文字を追うだけでも、論理の流れをつかむことができます。
それでもわからない場合は、何ページか飛ばして先に進んでしまいましょう。難しさのレベルはジェットコースター並みに上下するので、一部分がさっぱり理解できなくてもそこで本を閉じてしまうのはもったいないです。

時間を置いて読み返してみる

飛ばしながらでも途中で挫折してでも、とにかく一回表紙を開いて読んでみたなら、そのまた一ヶ月後、一年後などにもう一度読み返してみることをおすすめします。
読み飛ばしていた数式の意味が理解できるようになったり、「どこが分からなかったのか」が分かるようになったりしているとすごく楽しいです。授業で数学を学ぶことのある学生の方には特におすすめです。

「参考文献と読書案内」から

各巻の最後には、扱われたテーマに関する本などが紹介されています。
数学ガールは読み物なので、いくつかの定理の証明や必要な条件の確認が省かれていたり、わかりやすさのために厳密性に欠ける表現がされていたりもします。数学書できちんと学びたい方は、巻末のリストを参考にしてみてください。

シリーズの構成

2017年11月現在、『数学ガール』シリーズは5巻まで出ています。

  1. 数学ガール
  2. 数学ガール フェルマーの最終定理
  3. 数学ガール ゲーデルの不完全性定理
  4. 数学ガール 乱択アルゴリズム
  5. 数学ガール ガロア理論

物語は1巻から順に進んでいくので 巻数通りに読むのがおすすめ ですが、 数学的な内容は各巻で独立しているのでどの順番で読んでも問題はない と思います。著者の結城浩さんのブログ記事「数学ガール」って、どれから読めばいいの?も参考にしてみてください。また、各巻のテーマをさらに詳しく見たい場合はWikipediaへ。
以下に、各巻で扱われている主なテーマの一覧と、個人的な感想を載せておきます。
(ちなみに、この5冊の他に『数学ガールの秘密ノート』シリーズもあり、そちらは『数学ガール』シリーズよりも易しい内容となっています。中学・高校で学ぶ数学に親しみたい方はそちらもぜひ。)

『数学ガール』

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数列、漸化式、無限級数、離散と連続、因数分解、母関数、不等式、二項定理、カタラン数、ゼータ関数、バーゼル問題、冪級数展開、テイラー展開(マクローリン展開)、代数学の基本定理、上界

2,3章でほぼ説明なしに Σ,Π\Sigma, \Pi や複素数、三角関数の2倍角の公式などが出てくるので、知らないときついかもしれません。その後の章のほうがとっつきやすいように思います。
一冊を通して手に入れてきた手持ちの武器を使いながら長い道を進んでいく最終章がとても気持ち良いです。

『数学ガール フェルマーの最終定理』

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整数、素数、互いに素、原始ピタゴラス数、背理法、素因数分解、2\sqrt{2} が有理数でないことの証明、複素数平面、鳩の巣原理、合同式、集合、群、環、体、無限降下法、オイラーの式、テイラー展開、フェルマーの最終定理

整数にまつわる話が多く、シリーズの中では一番読みやすいと思います。中学生〜高校一年生くらいの方でしたら1巻より先にこちらを読むのも良いかもしれません。
自然数や素数といった身近な題材から始まりながら、3世紀以上も数学者を悩ませ続けた定理の証明を追った一冊です。

『数学ガール ゲーデルの不完全性定理』

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論理クイズ、ペアノの公理、集合論、ド・モルガンの法則、極限、形式的体系、論理式、εδ\varepsilon - \delta 論法、連続、加算集合、カントールの対角線論法、三角関数、弧度法、無矛盾性と完全性、同値関係、表現定理、ゲーデル数

個人的に最終章が一番難しいのがこの巻だと思います。
扱われているテーマも、大学一年の数学で学ぶ内容が多いです。東工大一年だと εδ\varepsilon - \delta 論法が後期微積分学、同値関係やカントールの対角線論法あたりが5類の情報基礎数学、でしょうか。
また、論理式が丁寧な説明と共にごりごり出てくるので、読み方や書き方に慣れたい方にはおすすめです。

『数学ガール 乱択アルゴリズム』

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順列、組み合わせ、確率論、公理的確率、線型性、アルゴリズム、リニアサーチ、バイナリサーチ、ソート、木構造、ランダウの記号、線型性、行列、ベクトル、線形変換、固有値、従属可能性問題、 PNPP\neq NP 問題、乱択アルゴリズム

やや情報学よりのテーマが多い巻なので、そのあたりの分野に興味のある方におすすめです。また、行列の章は大学一年の線形代数学、ソートやサーチなどのいくつかのアルゴリズムはコンピュータサイエンスで学ぶ内容だったと思います。

『数学ガール ガロア理論』

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あみだくじ、置換、複素数、2次方程式の解の公式、解と係数の関係、対称式、群、正規部分群、体、因数分解、1のn乗根、ド・モアブルの定理、円分多項式、角の三等分問題、3次方程式の解の公式、正規拡大、剰余類、ガロア理論

数学者ガロアの遺した「5次以上の方程式には一般的に解の公式が存在しない」という定理の証明を追った一冊です。
誰もが知っているあみだくじや中学校で学ぶ方程式の話などが全て繋がっていく感動を、特に後半〜最終章にかけて味わうことができます。

ぶっちゃけ受験数学には役立つの?

読んだからすぐに問題を解けるようになる、テストの点数が上がる! みたいなことは多分ないと思います。それを期待するなら問題集をガリガリ解きましょう。
強いて言うなら、 「考え方を学べる」 ことが一番大きいのではないかと思います。いわゆる解法暗記とは違いますが、この分野の話だったらまずはここをしらべるとか、うまい式変形の方法とか。実際に自分が受験数学と戦っていた時に役立ったなと思ったのはこのあたりでした。
あとは、 授業の予習・復習の補助 として読むのも良いかなと思います。授業で学んだけれどいまいちピンとこなかった概念が理解できるようになったり、予習としてなんとなくのイメージを掴んでおいたり、みたいな。

おわりに

以上でこの記事は終わりとなります。ここまで読んでくださってありがとうございます。
もしもこれを読んで数学ガールに興味を持ってくださった方がいれば、書店でも図書館でも電子書籍でも、一度手に取ってページをめくってもらえればなと思います。(ちなみに東工大の附属図書館には『数学ガール』シリーズ全5巻が揃っています!)
著者の結城浩さんはよくエゴサーチをされていますので、感想を呟くときは「数学ガール」などの言葉を入れておくととても良いです。 自分はツイッターをやっていないのでよくわかりませんが。

明日はshanalさん、rencon_manさんの記事です。お楽しみに!

この記事を書いた人
60

60° です プを勉強中 競プロ、CTFに興味があります

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