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2026年9月9日 | ブログ記事

ギリギリ発散する無限級数

この記事は夏のブログリレー24日目の記事です。

全擁者と申します。traPで一桁番目くらいに巨大数やってます。以後お見知りおきを。

Lv.1

調和級数って、いいですよねぇ。

各項はに収束するのに足し上げると発散するの初見だと非自明ですよね。
調和級数というのは以下のような無限級数のことです。

これが発散することを紹介するときに一番多いのは各項をの累乗で下から抑える方法でしょうか。つまり

という具合です。
直方体のブロックを僅かにずらしながら積み重ねると無限個のブロックで無限に横に飛び出すことができる、みたいな話で調和級数を知った人は多いんじゃないでしょうか。
授業や受験で見るときは積分で下から評価する方法が一般的ですかね。

調和級数の面白い点はそれだけではありません。
始めに式を提示した時にわざわざ次数を書いたので察せる人は察してると思うのですが、各項の分母となっているの次数を僅かにでも増やすと無限級数は収束します。
つまり次数をとでもおくと、

となるということです。
でも次数が丁度だと発散するんですよ。調和級数、次数的には本当にギリギリ発散しているんですね。
この限界を攻めてる感が溜まらなくて、いずれ認知症にも効くらしいです。

Lv.2

じゃあ、もっとギリギリを攻めることはできないでしょうか。
例えば、よりは速く増加するが任意のについてのにはでいずれ追い越されるような微妙な増加速度の関数があれば、それを分母に持つ無限級数は発散してもおかしくないのではないでしょうか?

嬉しいことにそのような関数はあって、以下の無限級数は発散することが知られています。

確かにの増加速度を考えれば良い感じに見えますね。
証明は積分に落とせばよくて、

のように。微分形の接触であることに気が付けば積分は一瞬です。
ちなみに調和級数の時と同じように任意のについては収束します。を微分してください。

Lv.3

じゃあ更にギリギリ発散する無限級数は、と行く前に。

今までのパターンからして無限級数を考えてもどうせ積分で評価することになるので、初めから積分だけを考えることにしてしまいましょう。
以後、この記事は「ギリギリ発散する広義積分」になります。

更に、をそのまま使うと実数上の定義域がどんどん変わってキモいですね。これでは認知症に効きません。
なので、代わりにとしてこれを扱うことにしましょう。上で単調な全単射になってくれて可愛いですね。
その関係で以下では上でにしていたものがではなくに代わってます。

じゃあ話を進めると、既にの発散は示しました。
で、これより収束しそうで発散する積分を考えたいわけですが、ここでといった積分達に想いを馳せてください。
要は今までの議論に関連する広義積分を途中で切った関数達です。

これ、どちらも増加速度が遅いけどで発散する関数じゃないですか?

じゃあ逆に増加速度がめちゃくちゃ遅いけど発散する関数を微分すれば簡単にお目当ての積分が得られるのでは!?

ということで、より増加速度の遅い関数を考えましょう。
ここで関数について(個)と表記します。

そして今の表記でやりたいことが分かりますね。
そう、が次なる関数です。
の性質からこれがで発散することは自明ですね。
微分しましょう。

連鎖律をゴリゴリやるだけですね。

ということで、の逆数を無限に積分すると発散します。

あれ、あんまり認知症に効く感じがしませんか?

まあ、そうでしょうね。なぜなら今まで求めてた「ギリギリ発散」の部分は「増加速度が遅いけど発散する」の部分に起因しているので。
今回はを容易に用意できたので、それを微分しても自明に見える結果しかでてきません。

この記事は「ギリギリ発散する広義積分」ですらなく「ギリギリ発散する連続関数」だったわけです。
じゃあなんで始めからを重ねずに調和級数をこねこねしてたのかというと、それはこの後に分かります。めちゃくちゃ遅く発散するスーパー鈍足発散関数を作るために別の形が必要なのです。
 
ということで、ひとまず任意のについてのの微分を一般化すると、以下のようになります。

自然数にはを含みますがなにか。なんて常識常識。
兎角この総乗各項の分母に目をつけておいてください。これらはよりほんの僅かに増加速度の大きい「ギリギリ逆数の無限級数が発散する連続関数」です。

Lv.4

更に遅く発散する連続関数を考えたいですね。
つまり任意のについてより遅く発散するような連続関数はあるでしょうか?

あるかないかで言えば、まあ、あるのですが。
自然な形の連続関数でとなるとこれが難しい。
 
少し寄り道しましょう。

遅く発散する連続関数自体ではなく、その逆関数について考えてみます。
例えばですが、まあここではを使いましょう。
の逆関数はで、これはめちゃくちゃ増加速度の速い関数になりますね。
遅く発散する関数の逆関数は速く発散する関数になります。
ならめちゃくちゃ速く発散するクソデカ関数を考えれば、その逆関数として目的の関数が得られないかという考えが湧き上がるわけです。

しかしこれも任意のについてより速く増加する自然連続関数となると難易度が急増します。
連続でなければ話は簡単です。を定数としてとかやれば良いです。他の表記ならテトレーションというのがあって(個)と定義されたりします。これを更に反復したり一般化したりすると自然数上の急増大関数がどんどん得られて、いわゆる巨大数界隈に繋がっていきます。
自然でなくても話は簡単です。今言ったような巨大関数を折れ線で繋げばいいだけです。なんなら上手くやれば級にするのだってそんなに難しくありません。
でもそれでは認知症には効かないのです。巨大数の文脈では使う関数がデカくなると近似の規模もデカくなって(ある巨大数)≒(その巨大数の桁数)みたいな現象が普通に起きるのですが、この意味での近似において上のような不自然な関数では或いはのようになってしまいます。より強く、微小なについて或いはのようになってしまいます。これは巨大数的に非常にくねくねした関数で、認知症を加速させます。

てなわけで、巨大関数をこねこねして自然な超鈍足関数を得るのは難しいのです。自然数から実数への自然な超鈍足関数ですら巨大関数から得るのは困難です。
ちなみにそのような自然数→実数への鈍足関数から連続な鈍足関数を得る方法については自然な方法があるのですがここでは割愛します。
 
話を戻します。

自然で遅い発散関数を考えるために、Lv.3で言及したような微分の逆数を考えます。
などは逆数の積分が発散し、などは収束するのでその間を狙いたいですね。

単純に極限を取ってなどとすると定義自体が発散してしまいます。
各項のとなる係数をかけて無理やり収束させることはできそうですが、どちらにせよ無限積を扱うことになってしまうので逆数の積分が発散することを示すときに厳しくなりそうです。

なので、少し気持ち悪いですが各項を減らしてという関数列を考えましょう。
逆数の積分を計算することについては難がありますが、収束発散は今まで扱っていた関数と比較して示すことができます。
この形式ではを固定して乗じる項を増やすと次第に減少に転じてくれるため、次のような関数の収束が示せます。

ただしで、ここでは無いのと同じですが今後の一般化のために敢えて表記しています。
関数の形は、全部足しただけですね。先程と違って各項が付近でに近い挙動を取るので扱いやすくなります。

さて、これが収束することを証明するのですが、続く証明の為にもう少し具体的に「定数が存在して、任意の及びについて」を示します。
これを示せばについてが収束することは従いますね。ではで雑に抑えても収束します。

で割ると、

のようにに依らない定数で上から抑えることが出来ます。
ここで関数が全単射のときと表記しています。
また変形の中でにおけるの単調増加性と不等式を用いています。も用いてるかな?まぁどっかで用います。

次に今示した補題を用いて逆数の積分を評価すると、

となり発散することが証明できました。
ここではの単調増加性に加えての等式も用いています。

新たな関数

と定義すると、任意のにおいて十分大きなとなることが簡単な計算で示せます。証明は読者への演習とします。
これで反復対数関数よりも遅く発散する自然な連続関数が得られたわけです。とても嬉しい。認知症がドパドパ治る。

また、の単調増加性、における不等式などが成り立つことも確認しておいてください。最後の不等式は及びにおけるが直ぐに示せることを用いれば良いです。
これらからの逆関数の存在も示せます。はテトレーションクラスの増加速度を持つ自然で連続な巨大関数になって気持ちいいですね。

lv.5

さて、もっと遅くしましょう。

とはいえ始めにやることは簡単で、新しく得られたスーパー超鈍足関数を反復すれば良いです。
つまりなどですね。
例のごとく一般のについてを微分すると以下のように。

の微分は定義から直ぐに分かります。

さっき見た気がしますねこの式。
あれ、じゃあ次は

とかやればこれも収束して逆数の積分が発散したりしちゃうんじゃないですか~?

答えはyes。さっきと殆ど同じようにしてやれば証明できます。
何ならこれ以降それの繰り返しで任意の自然数回だけ超々鈍足発散関数を得続けることができるので、もう帰納的に一般化してしまいましょう。

写像を以下のように同時に再帰的に定義する。なおとする。

  1. なら、である。
  2. を満たすが存在するなら、である。
  3. である。

この定義の正当性を証明したいのですが、Lv.4での式変形を繰り返すだけなので省略。
実際の証明では帰納的に以下のような命題を示します。

  1. の狭義単調増加性
  2. において

Lv.4においてに、に置き換えれば上手く回る筈です。
4.だけはLv.4で言及していませんが定義からが自明なので問題ないですね。

さて、の関係と同様に、の反復でも到達できないほど遅く、の反復でも到達できないほど遅く、...と続きます。
逆関数を考えるなら、はペンテーション(テトレーションの反復)クラス、はヘキセーション(ペンテーションの反復)クラス、...と急増大する連続関数の列を成します。

Lv.6≤

ではこの並びを一般化するためにはどうすればよいでしょうか?
先程までの方針を思い出すならやはり遅く増大する関数の微分の逆数に着目するでしょうか。任意のについて十分大きなを追い越すような、それでいて逆数の微分を収束させないような微妙な増加速度の関数を考えることになります。

単純になどとすれば発散してしまうので、少し工夫して以下のような関数が収束すると予想できます。

はい。予想といった通り、私はまだこの関数の収束すら証明できていません。
の微分の単調増加性とかが示せれば希望があるんですが中々。

これの収束及び逆数の積分の発散が示せれば任意の原始再帰関数より速く増大する自然な連続関数が得られることになるので、この関数は巨大数的に強い意味を持ちうると思っています。
というのも、実は原始再帰関数で表せるレベル(冪乗→テトレーション→ペンテーション→...のような反復を有限回やって到達できるレベル)の自然な連続関数に関しては級数ではありませんが極限によって得る手法が既にあるんですよね。その手法でも反復階数の変数化まではできないので、この関数が上手くいけば今まで破れてない壁を破れるわけです。

調和級数の話から始めたのに気が付いたら巨大数の話になっちゃいましたね。
自然な連続巨大関数を構成するという分野はまだまだ掘る余地があるので、皆さんも興味があったら是非こねこねしてみてください。今回は非負実数の範囲で考えましたが、複素数全体への拡張を考える方向とかもあるので面白いですよ。

今回はこの辺で。新しく成果が出たらまたブログ書くかもしれません。

終わりに

明日のブログリレーは@chikuwa_vさんです。

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