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2024年12月24日 | ブログ記事

流体力学を†超速理解†したい

この記事はアドベントカレンダー2024 24日目の記事です。

はじめに

皆さんごきげんよう。24Bの@otimaです。1か月前の自分がこんなことをほざいていたのでこの記事では流体力学を†超速理解†していこうと思います。デジタル創作同好会とは----------2024-12-23-20.25.49
1か月以上あると余裕をこいていたら期末試験の勉強と課題に追われて1週間前に慌てて教科書を読み進め始めた阿呆は私です。皆さんはもっと計画的に生活しましょう。

内容

流体力学は液体や固体などといった滑らかに変形する物質である「流体」の性質や運動について調べる物理学の分野です。
流体の状態は密度、速度、圧力、温度などの量を座標と時刻の関数として表すことによって決まります。そしてそれらの量を支配する3つの式、「連続方程式」、「運動方程式」、「エネルギー方程式」はそれぞれ「質量の保存」、「運動量の保存」、「エネルギーの保存」から導かれる微分方程式であり、この解は適当な初期条件と境界条件を与えることによって決まります。
この記事ではこれら3つの式を導くことを目標とします。
いかんせん図を用意する時間がなく、説明が分かりにくくなってしまったので、必要なら適宜図を描くことで理解が深まると思います。

連続方程式

計算する上で考える必要はないですが、密度や速度の定義について1つ注意することがあります。ご存じの通り、密度とは単位体積あたりの質量であり、ある領域に含まれる流体の質量をその体積で割り、その領域を小さくしていった時の極限です。しかし、単純に領域を限りなく小さくしていくと、領域に分子が1つ含まれるか否かによってその値は∞か0に近づいていってしまうのでこれは数学的な極限ではなく、分子の大きさより十分大きな範囲で領域を小さくしていったときに近づいていく値が密度として定義されます。速度など他の量についても同様です。

まずは連続方程式を導きます。
流体内に、空間的に固定された閉曲面をとり、で囲まれた領域をとします。また、流体の密度を、流体の速度をで表します。
内の流体の質量の変化を考えると、「質量は生成も消滅もしない」という質量保存則により、「内の流体の質量の単位時間当たりの変化」は「単位時間あたりにを通って内に流入する流体の質量」に等しいという関係が成り立ちます。
流体内の質量は微小質量を積分する事で求められ、前者は

と表されます。
内に流入する流体の質量について、流入する流体の微小体積が面に垂直な内向き方向の変位と微小面積の積なので流入する微小質量はであり、単位時間当たりに流入する質量はを積分する事で求められるので、後者は

と表されます。の外向き単位法線ベクトルです。
よって

という関係が成り立ちます。
ここで左辺の積分について、は空間に固定されているので

が成り立ちます。
また右辺の積分については、ベクトル解析のガウスの定理を適用することにより

が成り立つので質量保存の式は

左辺に移項して、

と書き換えられます。
は任意に取ることができるのでインテグラルの中身は0である必要があり、
連続方程式

が成り立ちます。
これで1つ目の連続方程式を導くことができました。残り2つも同様に、流体内に固定された閉曲面を設定し、それぞれその内部の運動量、エネルギーの変化が外からの要因による変化と等しいとし、積分をガウスの法則により体積分に帰着して体積分のインテグラルの中身が0とする、という流れで導かれるので、そのことさえ分かっていれば見た目ほど難しくはないと思います。

運動方程式

表記の都合で、アインシュタインの縮約記法という表記法を用います。これは大層な名前の割に単純な表記法で、「同じ項で同じ添字が2度現れた場合、その添え字について総和をとる」という、単に総和記号Σを省略するだけのことです。

流体に働く力には、その大きさが質量または体積に比例する体積力と、面を通して作用し、その大きさが面積に比例する面積力があり、単位面積あたりの面積力を応力といいます。応力は一般に働く面の法線ベクトルの向きに依存し、向きは面から見た法線ベクトルの向きにある流体が面の反対側の流体に与える力の向きです。これを分かりやすいように外向きの閉曲面で考えると、閉曲面の外側の流体が内側の流体に与える力の向きです。詳細な説明は演習問題とs割愛しますが、面積力のつり合いを考えることで、法線ベクトルの向きの応力方向成分は2階のテンソルを用いて、

と書けることが分かります。なおここでは縮約記法を用いています。
テンソルとは何かを説明するにはこの余白は狭すぎるので、テンソルとは多次元配列、2階のテンソルは行列みたいなものだと思ってください。

これで運動方程式を導く準備ができたので運動方程式を導きます。
連続方程式の時と同様、流体内に固定閉曲面内部の領域を考えます。また、単位質量当たりに働く体積力をで表します。
内の流体の運動量の変化を考えると、「内の流体の運動量の単位時間当たりの変化」は、「単位時間あたりにを通って内に流入する流体の運動量」と「面における応力が内の流体に与える応力による単位時間当たりの力積」、および「面内の流体に働く体積力による単位時間当たりの力積」の和に等しいという関係が成り立ちます。
内の流体の力積は微小質量と速度の積を積分する事で求められ、1つ目は

と表されます。
内に流入する流体の運動量について、流入する流体の微小質量は連続方程式の時と同様なので、流入する流体の微小運動量はであり、単位時間あたりに内に流入する流体の運動量はを積分することで求められるので、2つ目は

と表されます。
における応力が内の流体に与える応力による単位時間当たりの力積、即ち力の成分は、微小面積を通して応力が流体に与える力を積分する事で求められ、3つ目は

と表されます。
内の流体に働く体積力による力は、微小質量が受ける力を積分する事で求められ、4つ目は

と表されます。
よって、成分について、

という関係が成り立ちます。
また、連続方程式の時と同様、が空間内に固定されていること及びガウスの定理により

が成り立つので全て左辺に移項して

となります。よって連続方程式の時と同様にして

であり、左辺に移項した分を右辺に戻すことで、
成分の運動方程式

が成り立ちます。
これで2つ目の運動方程式を導くことができました。この式がそれぞれについて成り立ちます。連続方程式の導出のアイデアが理解できていれば、応力以外に行き詰まるところはなかったと思います。実はミレニアム懸賞問題の題材の1つであるナビエ-ストークス方程式は、この運動方程式に流体の1種である粘性流体という条件を仮定することによって得られる方程式です。粘性流体は流体の局所的な変形が小さな範囲で現実の気体や液体の近似となるモデルですが、それを説明するにはやはりこの余白は狭すぎたので割愛します。

エネルギー方程式

流体の持つエネルギーには運動エネルギーの他に内部エネルギーがあります。また、エネルギーの収支には、流体の流入(出)によるエネルギー変化、応力・体積力のする仕事の他に熱の流入があります。

それでは最後のエネルギー方程式を導きます。先程と同様、流体内に固定閉曲面内部の領域を考えます。流体の単位質量当たりの内部エネルギーを、単位時間、単位面積当たりに上の面要素を通って法線の向きに内部に流入する熱量を、向きを含めてベクトルで表します。
内の流体のエネルギーの変化を考えると、「内の流体の全エネルギーの単位時間当たりの変化」は「単位時間当たりにを通って内に流入する流体の全エネルギー」と「単位時間当たりに内部に流入する熱量」、「単位時間当たりに面を通じて応力が内部の流体にする仕事」と「単位時間当たりに体積力が内部の流体にする仕事」の和に等しいという関係が成り立ちます。
内の流体の全エネルギーは、微小体積の全エネルギーを積分することで求められるので、1つ目は

と表されます。
内に流入する流体の全エネルギーについて、流入する流体の微小質量は先程と同様なので、流入する流体の微小全エネルギーはであり、単位時間当たりに流入する流体の全エネルギーはを積分することにより求められて、2つ目は

と表されます。
単位時間当たりに流入する熱量は、単位時間当たりに面を通って内に流入する微小熱量を積分することで求められ、3つ目は

と表されます。

で応力がする仕事について、面の微小領域で応力がする微小仕事はなので、応力が単位時間当たりにする仕事はを積分する事で求められ、4つ目は

と表されます。
体積力がする仕事について、微小体積に体積力がする微小仕事はなので、体積力が単位時間当たりにする仕事はを積分する事で求められ、5つ目は

と表されます。
よって、

という関係が成り立ちます。
再び同様にが空間内に固定されていること及びガウスの定理により

が成り立ちます。ただし、最後の式で添え字を入れ替える所がありますが、ここで応力の対称性を利用しています。これは力のモーメントのつり合いから分かる事ですが詳細な説明は演習m割愛します。
これで全ての積分が体積分で書けたので先程と同様、全て左辺に移項してインテグラルの中身を0として移項した分を戻すことにより、
エネルギー方程式

が成り立ちます。
これで最後のエネルギー方程式を導き、全ての式を導出することができました。

おわりに

これらの式を導いても、流体力学†完全理解†とは言えないですが、これらの基礎方程式を用いて流体力学の理論が展開していくので、これらの式を導出することにより皆さんは流体力学に一歩足を踏み入れたと言えるのではないでしょうか。
明日アドベントカレンダー最後のクリスマスの担当は@o_ER4さん、@Hueterさん、@Pugmaさん、@Oxojoさん、@Naru820さんです。

参考文献
巽友正 著『流体力学』(培風館)

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この記事を書いた人
otima

24B きららオタク

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