2024年2月29日から3月3日までヴェトナムのハノイで初めてのPlayoffが開催されました。
東工大からtonosama,AMATSUKAZE,Bocchi The Techの3チームが出場し、そのすべてのコーチをしました。
ICPC Asia Pacific Championship (Playoff)
今シーズン(2023/2024)からWFよりもティアが一つ下のアジア太平洋地域大会が行われました。
コーチ視点で大会のために何をいつ用意したかなどがメインです。何かの参考になれば幸いです。
事前準備編
Yokohama Regional(11/25,26)後
これよりも前からPlayoffの存在自体は明かされていたが、詳細については分かっていなかった。この大会のどこかで「2024年2月の真ん中くらいにヴェトナムで行われる」という言及がなされた気がする。
個人的にはいつでもよかったが、ちょうど修論と被っていたのでその時期と被らなければいけると思っていた。
2023年年末
この時期くらいに、Playoffの専用サイトが公開されて、「2月の末から3月の頭にかけてヴェトナムのハノイで行われる」ことが確定した。
2024年1月中旬(開催まで6-7週間前)
海外リージョナルに遠征した人たちの参加記を見て大雑把な計画を立てたり、現地の運営員会にメールを送って大会の詳細を把握したりした。
各所にメールのやりとりをして情報把握も大事だが、このタイミングで航空機チケットを購入した。「いつ、どこで、誰が」が確定しているのでできるだけ早くとった。払い戻しや変更可能のお高いチケットにするか、そういうことが不可能な安いチケットにするか迷ったが、全部で10人いてアクシデントがそこそこの確率で起きそうだったので変更可能なチケットにした。
さすがに全員分のチケットを立て替えられるほどの余裕がなかったので、各自でチケットを取らせたら、チケット予約日の差によって値段が人によって2万円ほど異なってしまった…
航空機チケットの取り方もだいぶ奥が深く、とことんまで旅費を削ってLCCや乗り継ぎ路線を選択するか、高い金を払ってフルサービスキャリアや直行便を使うかで結構悩んだが、これもトラブルを嫌ってにフルサービスキャリアの直行便(ANA)を使うことにした。
後ほど判明するが、他大チームは割とLCCのVietjetairで行く人が多くてびっくりした。
1月末(開催まで4-5週間前)
ヴェトナムは海外なので当然日本から行くときにパスポートが必要になるので、パスポートの発行や更新をさせた。それに伴って、パスポート情報が必要だった宿の予約も完了させた。宿と飛行機はこの時点で抑えたので後は大会に準備と旅行の用意のフェーズに移った。
大会参加のためにチームあたり200USDを海外送金しないといけないので行った。そこで、手数料が安く済むインターネット上で完結する海外送金システムを使ったが、海外送金の中継した銀行に手数料を別でとられて実際に着金された額が送金される予定の額を下回ってしまった。あまりにも罠すぎる。
2月上旬(開催まで2-3週間前)
ICPC遠征のための大学の支援制度の申請各自行った。ここら辺は大学や学科によって大きく異なるのであくまでも参考程度。
2月中旬(開催まで1-2週間)
大学に大勢で海外渡航する申請を行う。トップレベルで出すべき書類を直前まで忘れてバタバタしてしまった。
2月下旬(開催直前)
海外旅行のための買い出しをした。メモして1回で済ませればいいものを、あれを忘れたこれ忘れたを繰り返したので3回位渋谷に行った。
買い出し関連で一番面白かったのは、Appleのワールドトラベルキットを買って開けた時にコンセント形状があまりにも似ているものが多すぎて何が何だかわからなかったこと。付け替えプラグ自体は6個か7個くらいあるのにどれも同じに見えるので実質3種類くらいしかなかった。
選手にするべきことを伝えた。例えば航空機チケット、ライブラリの印刷やWi-FiやSIMの契約、航空会社のスマホアプリのダウンロードなど。後から考えてみればだいぶ過保護っぽくて「うわぁ」となっていたが、やっておかないと現地で解決できず地味に詰む可能性があったので結構リマインドした。
ハノイ
2/29
日付が変わる直前に現地入りしたので、ホテル移動だけ。
界隈では有名(?)なゲーミングバスでホテルまで向かった。
結局ホテルについて落ち着いたのは2:30くらいだったので、もっと早い飛行機便にすればよかった、前日入りすればよかったと思い始めて就寝。
3/1
バスが7:00で朝食が6:30からだったので6:00に起きた。睡眠時間が3h30mしかなくこの日ずっと眠かった。これが後に悲劇をもたらすとはだれも思わなかった。
バスでの移動中の風景や、特定人物の胸像などから東南アジア、ヴェトナムの洗礼を受けた。
この日はリハーサルだったので、各種写真や動画の撮影や、ジャッジシステム、プリントシステムの直前トライアルを行った。そののちに会食①が存在するのだが、ここで悲劇が起きる。
端的に言うと、全員同じところで食事するのに食事処へ向かうバスがホテルごとに分かれていて乗り過ごしてしまった。そもそもなぜみんな同じ場所に向かうのに、すでにホテルによって分かれているのかは謎のままである。乗り過ごしてしまった人たちを食事処へ向かわせるためのバスは渋滞でいつまでたっても来ないし、バスが来たと思ったらバスに入りきらず渋滞の中タクシーを呼んで別に食事処に送ることになったが、当然渋滞なので全然タクシーが来ない。やっとのことで食事処へ着いたらその後15分程度で先に食事をしていた人たちをホテルに返すバスが来た。今度こそは乗り過ごすまいと、ほとんど食事は食べていないもののバスに乗った。これが悲劇の顛末だ。ただ「乗るべきバスに乗り遅れた」だけなのだ。ここは日本ではないということをこれで思い知った。受動的だったらここヴェトナムでは生きていけないのだ。
その悲劇についての詳細は
を参考のこと。
なんやかんやあったが、明日は本番なので23時前後には就寝し、明日に備えた。
3/2
本番。ハノイなのに上着が必須レベルの寒さ。体育館なのでまともな暖房設備がない中でのPlayoff本番となった。
PostechのAllSolvedin1557のメンバーがT1のジャージを着ていたのでLoLの会話を韓国語でちょっとした。「2022年DRXのファンです」と言ったのでもしかしたら彼らを煽り散らかしてしまったかもしれない。ごめんね。Postech以外にもTwitterで知っていたSogang大学のshiftさんとエンカもしました。ありがとうございました。
本番がどうであったかについては各競技者の参加記に詳しく書いてあると思うのでそちらを参照してほしい。(コーチはこの間やるべきことがないので書くことがない)
弊学は6位のtonosama,18位のAMATSUKAZE,25位のBocchi The Techとどのチームも好成績をおさめてくれました。とりわけtonosamaは銀メダルを獲得しWFの出場権を獲得しました。おめでとう!
競技後の夕食はなぜか選手とコーチで食べる場所が分かれており、それを逆手に取って選手を先にホテルへ返し、コーチはコーチ同士パンパシフィックホテルハノイの屋上のバーでのんだ。ごめんね。
3/3
今回の遠征の一番の目的が無事終了しつつも、まだ日本へ帰っていないので「遠足は帰るまでが遠足」ということを痛感している日だった。
連日のワクワク(トラブル)と競技が終了した疲れなどからexcursionなしですぐに帰りたいといいつついざ観光地に行くと満足してしまう「いつもの」をやった。
無事空港に到着し日付が変わってすぐの飛行機で無事日本に帰ることができた。
海外遠征のために用意した対策とその効果
海外でのトラブルを防ぐためや、より快適に過ごすためにいくつか用意したものがある。その中には目的通り役割を果たしたものから微妙なものまで幅広く存在した。
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eSIM(効果:★★★★★ 5/5)
- 物理的なSIMではないので、SIMトレーをいじってSIMを入れ替える必要がないので旅行中に日本で使うSIMを無くすといったトラブルが未然に防げることと、スマホ1つで契約が完結する手軽さはかなりよかった。
- 海外ローミングサービスと違って、地元の通信会社のものなのでヴェトナムでの通信もおおむね問題なかった。4日で3GBくらいあれば余裕だった。(YouTube等を観なければ)
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ポケットWiFi(効果:★★★★☆ 4/5)
- 通信端末を定期的に充電しないといけないことや、行きでレンタルして帰りに返却しないといけないという点でeSIMに劣るが、複数人にシェアできるので最終的なコスパはeSIM以上かもしれない。
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カロリーメイトなどの非常食(★★★★☆ 4/5)
- 途中でワクワクが起こったり、食事が合わなかったりした時にこれでしのげる。
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コンセントプラグ変換器(★★★★☆ 4/5)
- 持っていくとかさばるがあると便利。逆にないと初日か2日目で詰む可能性が出てくるので絶対に持って行った方がいい。
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ナルゲンボトル(★★★☆☆ 3/5)
- コンタクトや、メガネ、常備薬などをまとめて入れられるし、衝撃が加わっても中身が出にくいのでそういう衝撃に弱いものを入れやすい。欠点はかさばる。
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ナップサック(★★★☆☆ 3/5)
- 家庭科で作ったドラゴンの…。貴重品やスポンサーからもらったものを入れるのに便利。買い出しでレジ袋に課金しなくてよくなる。でもなくても詰むことはない。
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ネックピロー(★★☆☆☆ 2/5)
- 人による。いい航空会社だと席がいいのでそもそもネックピローがいらないレベルところもある。空気入れるタイプにしろ、クッションタイプのものにしろ思ったよりもかさばる。航空機の中のQoL上昇という点ではコンパクトなスリッパのほうが便利で汎用性と満足度が高い気がする。
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エンカした人などに渡すお土産(効果:★☆☆☆☆ 1/5)
- Yokohama Regionalで持ってきているチームがあったのでそれを真似して持って行ったが、渡すタイミングがほとんどなかった。結局行き帰りの荷物スペースを占有しただけになってしまった。
遠征前にやっておいてよかったこと・やらずに後悔したこと
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現地料理に慣れる
- よほどマイナーな国でなければ料理専門店(ヴェトナム料理専門店など)があると思うので、1回か2回そこで食べて、どんな食べ物や素材が使われているかを把握することはやっていてよかったです。美味しそうと思って食べた物の中に、苦手な野菜などが含まれていて苦しむといったことを防ぐことで料理を楽しむことができますし、合わないとわかったのなら予備食を用意すると行った計画も立てることができます。
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特定の病気に対するワクチン接種
- 気づいたのが直前だったので、集団接種以外の予防接種できずに海外に渡航することになりました。そのため、狂犬病対策として道端にいる繋がれていない犬を積極的に避けるしかありませんでした。
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両替
- 国によって使われている通貨は異なるので、現地で買い物するためにはお金を使える形に変換する「両替」を行わなけれななりません。キャッシュレスが進んでいる国だとクレジットカード1枚でなんとかなることもありますが、保険としてある程度の現金は持っておいたほうが何かと安心できます。その両替は日本でしたほうが得なケースと、現地で両替したほうが得なケースがあるので、きちんと両替レートを調べておくことで現地で使えるお金が増えてお得です。
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前日泊の検討
- 今回はイベント開催日に現地インしたのですが、あまりにも余裕がなくバタバタしたのと、日によって睡眠時間がバラバラになってしまいました。睡眠時間の確保は選手のパフォーマンスに直結してくる要素なので、多少お金をかけても選手のコンディションを整えるためにも早めの便にのったり、早く現地インすることを視野に入れて計画するべきだと痛感しました。
まとめ
3チームのコーチを引き受けたものの、至らない部分も多くありました。
それでもついてきてくれた選手たち、そして選手とコーチをサポートしてくれた競技プログラミング大会事情に詳しい専門家ことtatyamさんありがとうございました。
そして、西崎先生やtraPをはじめとする弊学の関係者、そして筧先生、山口先生をはじめとするすべてのICPCの関係者(ボランティアも含む)ありがとうございました。