本記事は夏のブログリレー2022年の42日目の記事です。
自分の思うがままのゲームを作り、人を集め、目の前で遊んでもらう。そんなゲーム制作に、ゲーム好きなら一度は憧れたことがあるのではないだろうか。この記事は、私が高校の文化祭で実際に自作ゲームでイベントを開き、タイトルの通り大いにやらかしまくったことを振り返る記事となる。
発端
高校2年の文化祭のとき、所属していたパソコン部での展示内容を考えることになった私は、当時学んだばかりの技術を使って、複数人で協力して敵と戦うゲームを制作した。
ルールはざっとこんな感じ。
・ステージの周囲から出現する敵を5人で協力して倒す。
・フィールドにいるすべての敵を倒すと次の敵集団が出現する。
・敵に倒されると15秒間行動不能になる。
・制限時間内にすべての敵集団を倒し切ればゲームクリア。
こういったイベントの企画が初めてだった僕は、慣れないながらも数多のバグ修正と慎重なテストプレイ、難易度調整を行い、文化祭前日には何とか公開できるところまでこぎつけた。
そして、迎えた当日。パソコン部には二日間でのべ100人以上の人が詰めかけ、そして、
誰一人として、クリアできなかった。
最大の敗因
最も大きな原因の一つは、客層を考えていなかったことだった。
私が通っていた高校は中高一貫校であり、文化祭はほぼすべてのクラスが演劇を披露するというやや特殊な形式で行われていた。そのため校内の生徒の多くは、僕と違って気になる後輩や憧れの先輩の演劇を見る青春に大半の時間を費やすことになる。
結果としてパソコン部に来る人の多くは、中高一貫校への受験を考える層……すなわち小学生だったのだが、僕はそれを一切考慮せずにゲームを企画してしまったのだ。
ここからは、実際にどんな問題が起きたかを順番に見ていこう。
Case1:説明書を誰も読まない
これに関してはもう難易度調節とか以前の話だが、世の中の子供は概ね説明書を読まない。
文化祭当日、一人一人丁寧に操作説明をするのは難しいと判断した僕は、すべてのプレイヤーの机に操作説明書を張り、ゲーム開始前に操作説明を読む時間を用意していた。
が、マジで誰も読まない。 心が清らかな子供には見えない文字で書かれてるんじゃないかってぐらい読まない。逆ティンカーベルか?
説明書を目の前にして堂々と操作が分かりません! と元気よく手を挙げる子供たちを見て、せめてゲーム開始前にわからないとこありませんか?って聞いたあたりで質問してほしかったなああああああと内心絶叫しながら応対するしかなかった(顔には出さなかった)。
結局一人一人対応することになってかなり進行は遅くなったし、何より死ぬほど疲れた。
対策
説明書を読まない愚者の顔面を殴っても許される法を制定しよう。
……と言いたいのはやまやまだが、実際それで解決するほど問題は単純ではない。
今の子供たちは幼いころからネットやゲームに慣れ親しんでいる、というのはよく言われる話だが、ここでいうゲームとはあくまでswitchやスマホゲームであり、PCで遊ぶゲームではないのだ。
このブログの読者層は幼いころからPCゲームにも慣れ親しんだ人が多いだろうが(偏見)、世間的にPCでゲームをするというのはそれほど多数派ではない。多分。
我々がスタバに行って 「グランデチョコレートチップエクストラコーヒーノンファットミルクキャラメルフラペチーノウィズチョコレートソース」 とか注文したとて理解不能なのと同じように、何も知らない子供に 「ダブリューエーエスディーデイドウシテマウスデシテンイドウ」 などという異界の呪文を唱えたところでいまいちピンとこないのである。
対策としては、やはり多少進行が遅くなっても実際にキャラを動かしてもらうのが一番だろう。
老若男女問わず愛される任天堂などのゲームがやや過剰に感じるほどのチュートリアルを用意している理由はここにあるのかもしれない。チュートリアルはやはり偉大だ。
余談だが、必殺技になぜかホイールクリックとかいう奇怪なキー割り当てをしたせいで誰も必殺技を使えていなかった。 ゲームを作るときはおとなしくゲームでよく使われるキーを割り当てるようにしよう。
Case2:シンプルに難易度高すぎ
・制限時間内にすべての敵集団を倒し切ればゲームクリア。
この制限時間を設定するにあたって、まずは自分一人でこのゲームをプレイしたところ、約12分程度でクリアできた。しかし当時の自分は「敵のモーションからダメージまで事細かに知っている自分を参考にしても良いものだろうか?」と考え、初見の人にこのゲームのテストプレイをしてもらうことにした。ここまでは問題なかったのだ。
致命的だったのは、このテストプレイヤーに ゲーム廃人普段からゲームに慣れ親しんでいる友人2人を指定してしまったことだった。 この二人が初見のゲームをわずか6分足らずでクリアしてしまったのを見て、あろうことか自分は 「2人で6分なら5人でやればもっと短いはず!制限時間はかなり余裕をもって15分あれば余裕やろ~!」 で当日を迎えてしまったのだ。
「この数学の問題は東工大生2人が6分で解けたし、中学生5人なら15分あれば解けるやろ~!」 くらいの見通しの甘さである。そりゃ無謀だろ。
対策
時間制限を伸ばせばクリアできたのかもしれないが、これ以上時間を延ばすとせっかくイベントに来てくれた人に悠久の時を待たせることになるので得策ではない。
そもそもなぜこんなにも時間に差がついてしまうのかという話になるが、実際にプレイする小学生を観察していて、ある一つの事実に気がついた。
以下は実際にゲームに登場するキャラの攻撃パターンの一つである。
地面にいかにも 「これから攻撃しますよ~」と言わんがばかりの模様が表示され、数秒後に火柱による攻撃が来る…という、ゲームでよくあるアレである。
よくよく観察してみると、大半の子供たちがこの攻撃を避けられていなかった……というより、避けようとすらしていなかったのだ。
私がこれを「ゲームでよくあるアレ」と表現したのは、実際にそういう攻撃が出てくるゲームを多く遊んだことがあるからにすぎない。ゲームスキルが年齢に比例するとは思わないが、小学生くらいだとまだ「どれだけゲームを遊んだ・見たことがあるか」という経験値による差が大きく出てしまうのではないだろうか。
解決策としては、全体的に敵の攻撃を遅くするなどして、より親切に避けやすくするとかだろうか。というか根本的な問題点として、そもそも文化祭のようなちょっと遊ぶくらいのイベントの場でギリギリの難易度のゲームを出すべきではなかった。 ゲーム好きが集まるイベントとかならまだしも、そうでない人が集まるイベントで難易度を上げすぎたところで回転率と印象が悪くなるだけである。
Case3:途中で飽きる。
・敵に倒されると15秒間行動不能になる。
何の気なしにつけたこの15秒という制約だが、これが思ったより致命的だった。
何もできない15秒は思ったより長い。子供となれば特にそれは顕著で、数人とはいえ一回倒されただけで飽きて放置する子が出ていた。それによって残された子たちが倒されやすくなって飽きやすくなる……という悪循環が起きていたし、その惨状を目の前で見せられた製作者は内心死にそうだった。
対策
有名なFPSゲームのApex Legendsのように「倒された味方をコミュニケーションをとりながら救出する」という形式は理想ではあるが、その場でたまたま集められただけの他人、それも子供にそれを求めるのは難しいだろう。
かといって倒れた時のペナルティを小さくしすぎれば緊張感がなくなり、難易度以前にゲーム性が悪化してしまう。
対策の一つの例としては、「倒された状態でもやることを作る」*のは有効そうだ。幽霊になって敵にデバフを与えるとか、些細なことでもいいので常に目標を作るといいかもしれない(Among usとかが良い例)。それ以外でも、単純に難易度を全体的に下げて倒れにくくするだけでも有効な対策にはなるだろう。
何もやることがない時間を減らすというのはどんなゲーム制作でも重要なことだが、子供を相手にするなら特に気を使うべきだと実感した。誇張でなく10秒で飽きる子は結構いる。
結論
ゲームを作るときには、どんな人が遊ぶのかちゃんと考えよう。
それが不特定多数の大人でも、子供でも、友人でも、あるいは自己満足のためでもいいが、誰に遊んでほしいかが曖昧なままゲームを作り続けると訳わからん失敗をするかもしれないぞ。少なくとも僕はしたぞ。
そしてもし、子供相手に自作ゲームでイベントを開きたい!と考えている人がいたら、この失敗談が多少は参考になるかもしれない。
ライセンス
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明日のブログリレー担当は@ikura-hamuさんです。