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2025年12月22日 | ブログ記事

既製品を超えるフルトラデバイスを作りたい!

📢 Note
このブログは、 アドベントカレンダー2025 22日目の記事です。

はじめに

こんにちは.工学院情報通信系23Bのissaimaruです.

突然ですが,BOOTHを知っていますか?BOOTHはpixivが運営している,クリエイターがオリジナル作品を販売するためのネットショップです.‌‌去年あたりに友達と一緒に初めてここで商品を出してみたところ,思ってたよりも売れて,今年アルバイトで得た収入と同じくらいの売上がありました.

というわけで個人でも何か物を作って売ってみようと,売れてそうなBOOTHの商品をずっと監視していたのですが,最近はVRChatブームでVR関連のガジェットが圧倒的に人気みたいです.その中でも特に自作フルトラは既製品よりも安く購入することができるので,需要が高いです.

他の商品の4倍以上の人気がある...

今回はこの自作フルトラを販売するための前準備として,BOOTHで売られているVRトラッカーを超えることを目標に自作フルトラを試作して,実際にVRChatで使ってみる...という記事にする予定でした.が,部品が全部届いたのが昨日だったので,まだ動作確認の途中です()

そのため,今回はBOOTHに売られている自作フルトラや,Sonyのmocopi®のようなプロダクトよりも”良い”自作フルトラを作るためにはどうしたらいいかについて考えてみようと思います.

mocopiと同サイズの試作基板.402030というバッテリーで動かす予定.

既製品について

企業が開発したフルトラッキングデバイス

まず最初に,企業が開発・販売しているフルトラッキングデバイスについて紹介します.値段については2025年12月22日時点でのものです.

mocopi(モコピ) - Sony ¥49,500/1セット(6個)

加速度センサー型のフルトラデバイスで,企業で販売されているものの中では比較的安価で購入することが出来ます.加速度センサー型デバイスと外部センサー型デバイスの違いは以下の記事に詳しく説明されているので割愛しますが,比較的安価で販売することが出来る反面,ドリフトが発生するので定期的なキャリブレーションが必要となります.‌‌また,32mm×11.6mmと非常に小さいのが特徴です.

フルトラしたいんだけど何を買えばいい?|【メタクリエイター】すむてみ🎖3DKOBO
メタクリエイターことすむてみです!今回は2025年6月時点での「フルトラ」をする際に必要でおすすめなデバイスを紹介していきます! フルトラとは フルボディトラッキング(Full Body Tracking)通称「フルトラ」とは、VR(バーチャルリアリティ)やモーションキャプチャーの分野で、人間の全身の動きをデジタル空間上で再現する技術のことです。 通常のVR体験では、頭(HMD)と手(コントローラー)の動きだけが反映されます。しかし、フルボディトラッキングでは、腰や足、場合によっては肘や膝なども含めて全身の動きをリアルタイムでトラッキングします。 これにより、次のようなことが可
特長・仕様 | モバイルモーションキャプチャー mocopi | ソニー
モバイルモーションキャプチャー mocopi(モコピ)の商品ページです。

VIVEトラッカー3.0 - VIVE ¥16,000×3+¥20,600

結構有名なフルトラデバイスだと思います.

ベースステーションが必要な外部センサー型デバイスで,フルトラッキングを実現するためにはVIVEトラッカーを3つに,SteamVR Base Station 2.0を1つ用意する必要があり,総額で¥68,600もします.‌‌ただ,性能は非常に優れているとのことです.

VIVEトラッカー(3.0)|VIVE 日本
コントローラーを越えていこう。動きを追跡し、物体を現実世界から仮想空間に持ち込もう

他にも色々なフルトラデバイスがありますが,値段についてはどれも同じような感じで,加速度センサー型でさえ安くても4万円はするといった感じです.‌‌精度や完成度についてはもちろん企業が開発したものを超えるのはほぼ不可能といってもいいので,同じ性能をより安い値段で実現する方向性が良さそうです.

クリエイターが開発したフルトラッキングデバイス

チーズケーキ - 空影雑貨舗 ¥15,980/1セット(6個)

[セール]SlimeVR フルボディートラキングデバイス「チーズケーキ」 - 空影雑貨舗 - BOOTH
※注意※ 適切なフルボディトラッキング(FBT)には、少なくとも5つのトラッカーが必要です。 送料を個別に設定できないため、補充用トラッカーは別のページで販売いたします→https://sorakage033.booth.pm/items/6021811 製品情報については下記Twitterで発信しています。 @SK_HWDesign Discordサーバーもあります! https://discord.gg/Rv2rvkHuEK 何かご質問がありましたら、お気軽にDMください。 マニュアルは、SlimeVRの公式ドキュメントを参照してください。

一番推しているフルトラッキングデバイスです.この方のフルトラだけ明らかに完成度と値段がおかしいです(ほめ言葉)

内蔵バッテリーで駆動して,最大8個のトラッカーを同時に充電することが出来る充電ドックがあります.‌‌ESP32が乗っているので充電がすぐ無くなりそうですが,800mAhのバッテリーで約7-9時間も持つとのことです.‌‌「チーズ」「いちご」「チョコ」の三種類あり,それぞれ乗っているIMUセンサーの種類だけが違うみたいです.

かっこよすぎる 天才だろ

あと余談ですがこの方おそらくうちの大学の学生です.わんちゃんロ技研の先輩だったりしないかな.

絶対これ東工大だよね??

ぽてとら -  guttipoteto ¥12,500/1セット(6個)

回路設計が本職の方が制作された,有線接続式のフルトラデバイスです.

バッテリーが各トラッカーに搭載されていないので,別途モバイルバッテリーを用意し,ケーブルで接続する必要があります.‌‌個人製作したものを販売するとなるとやはりバッテリーの扱いが難しいですし,ESP32の消費電力でバッテリー駆動させようとなるとサイズ・コストがネックになってくるので個人的にはこの仕様は理にかなっていると思います.

IMUはBMI270を搭載しているとのことです.色んなところでこのIMUが使用されているみたいですが,他のIMUと比べて何がいいんでしょうか(わかる人が居たら教えてほしい).Bosch Sensortec社の名前は初めて聞きました.

[VRChat向け フルトラ]VRトラッカー 「ぽてとら」 - potesuto - BOOTH
※定価分の通常版、強化版は1週間以内の発送となります ※交換ケースは1週間以内の発送となりますが、他の商品と同梱の場合は遅い方に合わせられます SlimeVRの規格で作成された個人の製品でVRChat向けのフルトラ製品です。 説明書を本ページの右側からダウンロードできますので、購入、問い合わせ前に必ず確認をお願いいたします。 ご不明な点等ありましたら気軽にお問い合わせください。 ※問い合わせはショップページのメールマークから ※一般製品同様、Wi-Fiやセキュリティソフトの相性など購入者様の環境要因までは対応できないことをご了承ください。

ちーとら - lorovel ¥9,000/1セット(6個)

一年前くらいにこのポストで知りました.とにかく価格が安いのが特徴なのですが,さすがに¥6,000は適正価格じゃなかったとのことで,今は¥9,000みたいです.それでも1個¥1,500なので,安すぎるけどね.

これもバッテリーが各トラッカーに搭載されていないので,別途モバイルバッテリーを用意し,ケーブルで接続する必要があります.‌‌またセンサーもBMI270とのことで,ぽてとらの仕様とかなり似てますね.

ただ『「ちーとら(メイン)」「ちーとら(サブ)」の「トラッカー接続用ポート」にトラッカー以外のものを接続すると故障します』という表記で,規格が守られてないのか少し気になりました.

SlimeVR対応トラッカー 「ちーとら」 [VRChat向け] - lorovel - BOOTH
-----------お知らせ------------ 2025/1/13 ちーとら(サブ)のみ・ケースの販売を開始しました! 2025/8/20 boothの倉庫発送手数料改定に伴い、すべての商品を自家配送に切り替え。 本製品は同人ハードウェアであり、通常の製品と異なる点や注意事項が複数存在します。 下記商品説明をご一読の上、ご購入をお願いします。

クリエイターが開発したフルトラデバイスの相場は¥10,000~¥20,000くらいで,とにかく安さが特徴みたいです.

安全性やサイズ,コストの観点からバッテリーを搭載していないフルトラデバイスが多く,毎日使用するとなると,ケーブルが邪魔に感じるかなとは思いました.

また,企業が開発したものと比べるとサイズが二回りくらい大きく,携帯性の面でも企業のフルトラデバイスに軍配が上がりそうです.

既製品を超えるには?

さて,既製品には次の特徴があることがわかりました.

一番単純なアイデアとしては安さをもっと追及することですが,これはどうでしょうか.‌‌ちーとらの構成で考えてみましょう.‌‌ESP32-C3-WROOM-02-N4が秋月で1個¥340なので,6個だと¥2,040です.‌‌BMI270のチップ単体がDigikeyで1個¥599(大量購入するともっと安くなる)なので,6個だと¥3,594です.‌‌これを合計すると¥5,634となり,マイコンとIMUだけで原価が¥6,000近くします.‌‌実際にはこれにType-Cコネクタなどのパーツ代で+¥1,000ほど,PCB代(送料含む)で+¥1,500ほどかかるので,原価が¥8,000ほどかかっていることが予想されます.大量に売ったり,AliExpressとかのチップ使ってどうにかコストカットしても,利益を考えるとちーとらと大差ない値段になると思います.

現実的な方法で既製品と差別化するには,¥10,000~¥20,000の範囲内でバッテリーが搭載されていて,なおかつ企業が開発したフルトラと同じくらいのサイズのフルトラであれば良さそうです.‌‌これだとクリエイターが開発したフルトラのデメリットと企業が開発したフルトラのデメリットを解決できているし,なにより条件に無理がないと思います.

そんなもの,作れるの?

そのようなフルトラデバイスが作れるのかということについて,少し考えてみようと思います.

まず,サイズを考えるうえでボトルネックとなるのがバッテリーの大きさだと思います.乾電池は大きすぎるので,Li-ionかLiPoを使うことになるでしょう.
ESP系トラッカーは消費電力がとても多いので,最低限1000mAh以上の容量がないとバッテリーの持ちが気になる(半日ももたない)らしいですが,そのようなバッテリーは72mm×45mm×34mmもするので,それだけでmocopi®の2倍程度の大きさがあります.

ということで,現在爆速で開発が進められている,Smol Slimeを使用するのがいいでしょう.本当か知りませんが200mAhのリポバッテリーで50時間も(?!)持つらしいです.402030という200mAhのバッテリーが4mm×20mm×30mmなので,これだとmocopi®と同じくらいのサイズのケースに収まります.

次に,マイコンの選定です.公式サイトで推奨されているnRF52840はチップの名前ですが,安く済ますためにPCBアンテナは基板上に設計しておいて,チップ単体のみを実装するというやり方だと技適が通っていないので電波法違反になります.技適を自分で取ろうとしたことがあるのですがめちゃくちゃ高いのでやめた方がいいです.
そのため,モジュールを使うことになるのですが,技適が通っていて大きさが小さいものがSeed Studio XIAO nRF52840しかなく,値段は微妙ですが現在はこれ一択になってしまうと思います.

Seeed Studio XIAO nRF52840 (XIAO BLE)
Seeed Studio XIAO nRF52840 by Nordic is carrying wireless capability for the first time and it supports Bluetooth 5.0, also able to operate with low power consumption. It will be your best microcontroller for Bluetooth applications.

Digikeyだと3個セットで¥4,174なので,6個で¥8,348です(レシーバー用のマイコンが必要なので本当は7個必要です).
このモジュールのいいところは裏面にバッテリー接続用のパッドがついていて,そこにリポバッテリーを繋ぐだけで充電することが出来ます.

後の部品はサイズに特に関係しないと思うので,Smol Slime公式サイトの構成通りに自由に選べばいいと思います.

ちなみに冒頭に紹介した試作基板は¥12,544(部品代)+¥2,406(基板代)で総額¥14,950です.一応先ほど設定した条件の金額を満たしていて,サイズもmocopi®と同じサイズです.まだ試作品ですが,ちゃんと筐体も作ってmocopi®っぽい使い方が出来たら割といい感じになる気がします.

ただ値段があまりにも微妙なので,改善したいところ...


いかがだったでしょうか.正直今BOOTHで売られているフルトラデバイスが強くて価格もびっくりするくらい安いので,これに勝負するとなるとなかなか厳しい戦いになりそうです.趣味で作るならいいですが,ただ安く済ませたいだけなら自作せずに,BOOTHで既製品を購入することをおすすめします笑

以上です.この記事を読んでもっといいアイデアあるよーと思った方は,ぜひ教えてくださると嬉しいです.では,またどこかで会いましょう.

明日の記事は@madara16877くんの「1ヶ月半で同人誌を制作する方法」です.楽しみ~

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