20Bのtrastaです。今日卒業します。明日から社会人らしいです。まぁ今とあまり変わりませんが……
今回はTOEIC600点しかないスピーキングは一切できない英語ダメダメ意思疎通不可能人間が、なぜか参加することになってしまったTreeHacksというスタンフォード大学で行われる米国最大の大学ハッカソンに行ってきた参加記です。
TreeHacksとは
TreeHacksは、アメリカのスタンフォード大学で開催される、全米でも最大規模とされる大学ハッカソンの一つです。世界中から多くの学生が集まり、今年は800人以上が参加しました。賞金総額は約4000万円規模で、NVIDIA、Google、Teslaといった著名な企業がスポンサーとして名を連ねています。開催期間は3日間で、そのうち開発に充てられる時間は36時間でした。
スポンサー企業からは、開発に役立つ様々なAPIクレジットやツール類が提供されました。例えば、AI検索エンジンで知られるPerplexityからは、Proプラン1年間分のクレジットが参加者に提供されました。また、会場には各企業のブースが設けられ、企業のエンジニアに直接技術的な質問をしたり、開発に関するアドバイスを受けたりすることが可能でした。

参加に至る経緯
参加のきっかけは、英語が得意な大学の後輩 (会社の同僚でもある) からの誘いでした。私が友達とB1からやっている会社、CoeFontはベイエリアに拠点を有しており、現地で活動しているメンバーもいます。その後輩から突然Slackで「TreeHacksに一緒に出ないか」とメッセージが送られてきました。

私自身は、英語でのコミュニケーション能力、特にスピーキングに自信がなく、またアメリカへの渡航経験もなかったため、当初は大きな戸惑いを感じました。コミュニケーションが円滑に取れないことへの不安が最も大きかったです。
しかし、ベイエリアというITの中心地で世界の技術レベルを肌で感じたいという思い、そして自身もベンチャー企業に関わる者として、なぜこの地域から多くの優れたベンチャー企業が生まれるのか、その一端を知りたいという強い関心がありました。これらの動機が不安を上回り、「チームで参加するなら何とかなるかもしれない」という期待と共に、応募を決意しました。
応募締め切りは10月末でした。オンラインフォームを通じて、いくつかの質問項目に回答する形式でした。主な質問項目は以下の通りです。
- Why do you want to come to TreeHacks 2024? (150 words)
- Tell us about a project you've enjoyed working on, technical or non-technical. (150 words)
- What's something you're excited to work on in the next 10 years? Dream big! (150 words)
- Tell us a fun fact about you :) (50 words)
- I would describe myself as a... (5 words)
- Is there anything else that we should know about you? (optional!) (100 words)
当然英作文は大学入試以来ほとんどしてなかったため、これらの回答はChatGPTを活用して作成しました。Canvas機能がとても便利で助かった~。GitHubや個人ブログへのリンクもフォームにあったので入力して提出しました。
選考倍率は10倍以上とも聞いており、正直なところ合格する可能性は低いと考えていて、応募したこと自体、正直忘れていました。
しかし、12月17日に突然、参加通知のメールが届きました。しかも、一緒に応募した友人たちは落ちてしまってました。結果として、私一人で参加するしかなくなりました。
treehacksというスタンフォード大学であるハッカソンに通っていました。正直余裕で落ちると思ってたので、なんで僕が?????という気持ちしかなく、正直まだ戸惑っています pic.twitter.com/ufijQSdGGu
— とらすた (@tra_sta) December 17, 2024
正直、英語が全く喋れないのもあり、参加したくない気持ちもだいぶありました。しかし、合格したことを周囲に報告していた手前もあり、また、このような貴重な機会を逃すのは非常にもったいないと感じました。ここで挑戦しなければ後悔するだろうと考え、最終的に参加することにしました。
出発まで
ハッカソンはチーム戦なので、基本的にチームを組む必要があります。単独参加となった私は、チームメンバーを探す必要がありました。TreeHacksでは、参加者向けのSlackワークスペースや、チーム結成を目的としたマッチングサイトが用意されていました。
Slackでは自己紹介チャンネルがあり、多くの人がそこでメンバー募集をしていたので、僕もそれに習って自己紹介とチームを探している旨を投稿しました。幸いなことに、そこでLinkedIn上で共通の友人がいる参加者を見つけたのでDMをおくってみたところ、チームメンバーとして加えてもらうことができました。彼(Wesley)はシンガポール国立大学の出身で、ハッカソン通じてとても優しいやつで感謝してもしきれないです。私が事前に「英語でのコミュニケーションに不安がある」と伝えたところ、「we can overcome the language barrier」と快くチームに迎え入れてくれました。その後、他の2人のチームメンバーも探してきてもらいました。

Slackの自己紹介チャンネルではスタンフォード大学、UCバークレー、MITなど、著名な大学の学生が多く、参加者のレベルの高さにビビり散らかしていました。
チーム結成後、出発前にオンラインで一度、開発テーマに関するアイデア出しを行いました。当初30分程度の予定でしたが、議論が白熱し、結局2時間ほどかかりました。アイデアを出すことの難しさは、日本のハッカソンと同じなんだなぁと安心しました。結局アイデアは定まらず、現地で改めて考えることになりました。正直英語での会話は全然できなかったのですが、CoeFontで開発していた通訳ソフトを使ってなんとか乗り切りました、テクノロジーは偉大だ、、、
ハッカソン開催期間は2月14日から16日だったのですが、その前日の2月13日に、大学の卒業研究発表がありました。そのため、発表を終えたその日のうちに空港へ向かい、アメリカへ出発するという、だいぶ無茶なスケジュールになってかなりしんどかったです。
ベイエリアには、ハッカソン期間を含め、約3週間滞在する予定でした。日本食が好きなので、出発前に成田空港でとんかつを食べ、しばらくの別れを惜しみました。正直ご飯が食べれないのはきつかった……

ハッカソン当日
1日目
TreeHacksは、遠方からの参加者にも配慮し、初日は夕方からのスタートでした。チームメンバーのWesleyが車で迎えに来てくれ、一緒にスタンフォード大学のキャンパスへ向かいました。
結構遅れていったので、開会式などの冒頭のプログラムには参加できず、会場に着いた時にはすでに開発開始時刻が迫っていました。

会場内には、多くのスポンサー企業ブースが設置されていました。NVIDIA、Google、Teslaといった企業のロゴが並び、活気がありました。これらのブースでは、企業のエンジニアの方々が常駐しており、技術的な質問や相談に応じていました。


開発者向けターミナルツールを提供しているWarpのブースでは、クイズに正解するとTシャツがもらえるという企画があり、参加してTシャツをゲットできました。warp使ってるのでめちゃめちゃ嬉しい。
私たちはとりあえず、空いている教室を見つけ、そこを私たちのチームの開発拠点としました。TreeHacksでは、参加者が持参した寝袋で大学構内の空きスペースに寝るのが普通っぽく、推奨している持ち物のリストに寝袋があったので、1日目は持参した寝袋を教室に広げ、そこで仮眠をとりました。


2日目
2日目は、終日開発をしていました。TreeHacksでは、開発作業の合間に参加できるレクリエーションやワークショップが多数企画されていたようですが、私たちはこれらのイベントにほとんど参加する時間がありませんでした。筋トレ大会、Teslaサイバートラック試乗会、チャンバラ大会、ポーカー大会などめっちゃ面白そうだった……

時間がないというのも、最初はチームは4人いたのですが、1人が用事で不参加となり、代わりに入ってきてくれた助っ人も熱を出して欠席になったりとそもそも3人での参加となったのが原因です。また、チームメンバーの一人がまだ1年生で、あまり戦力にならなかったので、実質2.2人くらいのチーム力になってしまったのもあります。
チーム内での役割分担としては、最終的に私が実装の約8割を担当することになりました。Wesleyが残りの実装やアイデア出しやプレゼンテーション構成をやってくれました。

食事は会場で提供されました。昼食や夕食はケータリング形式で、味も良く、開発の合間の良い息抜きになりました。


この日、唯一参加したイベントは、日本の大塚製薬(VALUENEX)がスポンサーとして開催していた抹茶のイベントです。同社は抹茶に関連する賞も提供しており、今回のハッカソンで賞を狙っていたため、参加しました。イベントに来ていたVALUENEXの方に、日本語で賞のヒントになりそうなことを聞き出すという役目を与えられたので、いろいろ質問しました。

開発作業は深夜まで続き、2日目の夜はWesleyの提案で、彼の車の中で寝ることにしました。ちょっと寒かったですが、割と快適に寝れました。

3日目 (最終日)
最終日、開発時間は午前中で終了し、午後は審査会に臨みました。参加チーム数が250組と非常に多いため、審査は屋外の広場で行われました。各チームが割り当てられたテーブルでデモンストレーションを行い、審査員が巡回して評価するという形式です。

私たちのチームは、『Matcha Vibe』というアプリケーションを開発しました。これは、カメラから取得できる情報を分析し、ユーザーの好みや気分に合わせて最適な抹茶の飲み方ををサポートするものです。また、ユーザーのストレスレベルなどの分析も行います。
プレゼンテーションは当然英語で行われます。スピーキングに自信のない私は、主にアプリケーションのデモンストレーションに専念し、審査員への説明はチームメンバーに丸投げしていました。感謝。

審査会の後、会場内の劇場で閉会式が行われ、各賞の発表がありました。残念ながら、目標としていた賞の受賞は叶いませんでした。しかし、VALUENEXからEkkomi の100ドル分のギフトカードを特別賞としていただけることになりました。

ハッカソン後
ハッカソン終了後も、私は3週間ほどベイエリアに滞在しました。その間、ハッカソン会場のNVIDIAブースで偶然知り合った日本人の方のご厚意で、NVIDIAの本社キャンパスを見学させていただいたり、他にもサンフランシスコのいろいろな場所に観光に行ったりと充実した時間を送れました。


チームメンバーのWesleyとはすっかり親しくなり、週末には一緒にハイキングに出かけました。美しい景色を楽しむことができましたが、10kmを超える山道を歩かされて死ぬかと思いました。

所感
今回のTreeHacks参加を通して、コミュニケーションにおいては、終始苦労しました。Google翻訳や自社の翻訳ツールを駆使し、時にはPC画面を見せながら文字ベースで意思疎通を図る場面も多々ありました。完璧なコミュニケーションとは言えませんでしたが、最低限の意思疎通は可能であり、特に技術的な内容に関しては、コードやデモンストレーションを見せることで補完できる部分も多くありました。しかし、それが原因でアプリの仕様が詰められなかったのも事実で、賞ももらえなかったことからかなり悔しい経験になりました。英語の勉強は普段からしておくべきと強く感じました。
技術面に関しては、土地柄上非常にレベルの高い学生が集まっていることは事実ですが、参加者全員が突出したスキルを持っているわけではない、という印象も受けました。もちろん全体のレベルは高いものの、例えば経験の浅い学生もおり、技術的に全くついていけないという状況ではありませんでした。むしろ、今回チームの実装の大部分を担当できた経験を通じて、自身の技術力が通用する部分もあると感じ、自信につながった気がします。
一方で、最新技術に対する感度や、それを積極的に開発に取り入れる姿勢は、日本国内のハッカソンと比較しても非常に高いと感じました。特に、CursorをはじめとするAIコーディング支援ツールの普及率は高く、多くの参加者が自然に活用していたのが印象的でした。
総じて、今回のTreeHacks参加は、技術的な挑戦だけでなく、異文化コミュニケーションや自身の限界を超えるという点においても、非常に得難い経験となりました。世界中から集まった意欲的な学生たちと交流し、共にものづくりに取り組む中で、多くの刺激を受け、自身の視野が大きく広がったと感じています。
参加前は大きな不安がありましたが、多くの学びと成長を得ることができたと思っています。この記事を通じて、アメリカの大学ハッカソンの雰囲気や魅力が少しでも伝わり、日本からの参加者が今後増えていくきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。英語力に自信がなくても、得られる経験は計り知れないものがあります。ぜひ、挑戦を検討してみてください!
Xで @tra_sta 宛にDMで質問とかしてもらえれば答えるので、気になった人は是非~
オチ
お土産をツイートしたらなんかめっちゃバズりました
買った、WiFiルーターの上に載せる縁起悪いことしてる pic.twitter.com/jqXyI4qAXJ
— とらすた (@tra_sta) March 5, 2025