この記事はtraP Advent Calendar 55日目,†クリスマス・イブ†の記事です.
なお執筆時点ですでにクリスマスになってしまっています.ゆるして
誰おま
サウンド藩のリキッドです.traP AdC2019 2回めの登場です.
前回の記事はもう読みましたか?3回読んだ? それはどうもありがとうございます.
まだ読んでない,という人がもしかするといるかもしれないので,念の為リンク置いときますね.
おい無料でDTMしねぇか
今日のテーマは無料DTMです.このAdCを毎日読んでくださっている方はもうおわかりだと思いますが,念の為説明しておくと,この記事は昨日のカシワデくんの記事と連携しています.もう30回ほどお読みになっていることと思われますが,万が一のことも考えてこちらにリンクを置いときます.
DTMお嬢様「詳しいレギュなどはカシワデさんがよくまとめてくださっているので,そちらをお読みになって頂きたいですわ~」
カシワデくんの記事では,主にギターやピアノなどと言ったポップス・バンドサウンドなどで使えるプラグインを紹介していましたが,今回の記事ではどちらかというとダンス・ミュージックやエレクトロ寄りのモノを中心に取り上げていこうと思います.
作例
まずはどんな曲を作れるようになるのか聴いてもらいましょう.
この音源を作るために必要な費用は正真正銘0円です.作編曲からミキシング,マスタリングに至るまですべて完全無料のソフトウェアのみを使っています.
使用ソフト
まずは使用したソフトウェアを見てみましょう.
DAW : Reaper6
いきなりグレーゾーンです.
ReaperはDAWとしての機能をすべて備えているにも関わらず,非常に低廉な価格で導入できる,お財布に優しいDAWソフトウェアです.一般的にDAWというのは\15,000を下らないと言われていますが,なんとこのReaper,常に$60(およそ\6,500)というお手頃価格で販売されています!
「オイオイ初手から有料かよ」とお怒りのそこのあなたもご安心を.
このReaper,評価版と称して60日間機能制限なしで使うことができ,それ以降も購入を催促するウィンドウを無視すれば使い続けることができるという,なんともアレな仕組みになっているのです![^1]
[^1]: 筆者は当然応援の意味も込めて上位版のライセンスを購入しています.機能に違いはないんですけど….日本ではシェア2%未満と人気のないDAWですが,これからも頑張って欲しいと思っています!
というわけで,Reaperはまごうことなき†無料DAW†というわけです.でも気に入ったら買ってあげてくださいね!
「売り物をただで使い倒すのはチョット...」という心優しいあなたは,正真正銘最強無料DAWのCakewalk by Bandlabを使いましょう!コレについてはカシワデくんの記事で詳しく解説されています.
各楽器
各楽器の音源,ミキシングなどで用いた主なプラグインを挙げていきます.
多用されているものについては最後にまとめて紹介します.
キック
WAProduction Free Welcome Pack "BigEDM Kick 12.wav","BigEDM Kick 14.wav","BigEDM Kick 20.wav"
普段キックを作るときも,3種類のサンプルをブレンドして作ることが多いような気がします.
3種類と言っても闇雲に混ぜるのではなく,以下のような3種類を選びます.
- アタックが強いキック(トンッ!とかコッ!とか)
- アタックがそこそこなキック(ドンッ!とかボゥンッ!とか)
- 太いやつ(ドス!とかボム!とか)
あくまで目安なんでこの限りではないことも多いですが...(今回はアタック強めで安っぽさを誤魔化そうとしています)
なお,キックに限らずサンプルの管理,再生には↓コレ↓を用いています.
サンプラー : ADSR Sample Manager
バスコンプレッサー : Acqua TAN
無料とは思えないほど音のいいコンプレッサーです.
とても重たいプラグインなのでいくつも使うことはできませんが,レイヤーしたキックをまとめ上げたり,ドラムのバス・トラックなどに挿して使うと非常にまとまりのある太い音が得られます.
最も右側にあるPREスイッチを必ずオンにして使いましょう.
ただこのコンプ,内部で非常に複雑な処理をしているようで,知らないうちに想定外の挙動を示していることがあります.詳しくは以下の動画を御覧ください.
スネア
WAProduction Free Welcome Pack "BigEDM Snare 2.wav", "BigEDM Snare 10.wav"
またしてもWAProductionです.無料配布のサンプルが強強なのでそのまま使えてしまいます.
EDM~,とかいうサンプル類は割とジャンル問わず使えるような気がします(諸説あり).
コンプレッサー(+エキサイター?) : AudioDamage RoughRider2
刺すだけで頭がバカになるスネア専用コンプレッサーです.
コンプ以外にも中でなにかしてそうな気がするんですが,とりあえず気持ちがいいのでヨシ!
2020/3/5追記
RoughRider3がリリースされたようです!
ハイハット
99Sounds Drum Machine "Drum Kit 01 808"
ドラムマシンの名機TR-808のサンプリング音源が手軽に鳴らせるプラグインです.808のサンプルパックなどはたくさんありますが,ハットはクローズとオープンの打ち込みが面倒なのでコレで済ませちゃうことが多いです.
ディストーション : AudioDamage FuzzPlus
ハイハットの音は他の音に比べて明るすぎることが多いので,ディストーションをうっすらかけてやることで馴染ませてやりましょう.
クラッシュシンバル
AlanVista Cymbalistic
シンバル総合音源です.環境によっては設定がめんどくさいらしい.
シンバルのくせに高域が弱いのでエフェクターでイジる必要があります.
エキサイター : FineCutBodies La Petit Excite
ノブを捻るだけで高域や低域がマシマシになるプラグインです.便利ですが掛けすぎるとアカンことになるので最小限の使用に留めましょう.
シネマティックインパクト
Function Loops Summer 2019 "FL_DHS_KIT02_Impact.wav"
映画の予告編で使われてそうな打撃音を加工して,ここぞというときにクラッシュシンバルの裏で鳴らします.いい感じで空間が広がって,曲の展開を印象付けられます.
ホントに鳴ってるのかわからないと思いますが,そのくらいの塩梅でブレンドすると一番いい感じです!
ディレイ : ReaDelay
Reaper付属のプラグインですが,プラグインだけで無料配布もされています.
化石みたいな見た目ですが,直感的に使えて便利なプラグインも含まれているので意外と侮れません.
リバーブ : EpicVerb
金属的な響きが特徴的なリバーブ総合プラグインです.名前にEpicとついているように,広大なリバーブを作るのに向いています.逆にうっすら掛けたいとかそういう繊細な作業には向いてないような気がします.
シンセベース
アナログシンセサイザ : Synth1
言わずとしれたバーチャルアナログシンセです.初心者向けとして紹介されることの多い音源ですが,はっきり言って初心者向けではないと思います.
一つの画面に全ての基本的なパラメータが集約されているので勉強になる,という意味ではオススメです.
未だに使っているフリー音源の1つでもあります.
サブキックジェネレータ : Waves factory SK10
本来はキックの低域を補強するためのプラグインですが,コレをベースにかける→EQでカットする,という手順を踏むとなぜか音が良くなります.[1]音を良くしたいときのおまじないとして使っていますね.
ストリングス
E-mu ProteusVX "P0451 ExtremeStrng"
The 化石.
Proteus2000という古のハード音源(1998年発売)をエミュレートした音源で,随分昔(2008年)から無料配布されていたのですが,ついに最近配信がひっそりと終了していました....[1]
音も当時としては画期的だったんだろうとは思いますが,今となっては....
古臭くて面白い音を狙うならもってこいだと思います.僕は大好きな音源です.
マルチバンドコンプレッサー : xfer OTT
どうしようもない音源をなんとか †いい感じ† にしたいときに使っています(ホンマか?).
音声を複数の帯域に分割し,その帯域ごとにコンプレッサーを掛け,再び合成する,という作業を行うのがマルチバンドコンプレッサーですが,その中でも際立って積極的な音作りに特化したプラグインになっています.
基本的にはダンスミュージックのリードなどに挿して華やかな音に変化させるために用いますが,今回はストリングスに問答無用で挿してみました.意外といい感じでしょう?
パンポットコントローラ : ITDPanner
ストリングスは大きく,バイオリン・ビオラ・チェロ・ダブルベースの4つの楽器で演奏され,その位置をパンで表現することでステージ上の楽器配置や空間の表現を行います.
DAWには普通,音を左右に振る機能(パン)がついているのですが,場合によってはDAW付属のパンよりも,専用のパンプラグインを使うほうが音がいいことがあります.
ITDPannerは,左右の音を混ぜることなく音の定位をコントロールできるプラグインで,一般的なDAWのパン機能に比べて中低域のクリアさに特徴があります.普段から使っているプラグインです.
ティンパニ
KettleDrum
硬めのティンパニの音が鳴る音源です.どうやっても軽い音なので安っぽさは拭えませんが,使えるだけマシと思って使いました.SHAPEセクションをいじってやるとだいぶいい感じです.
なぜか音階が6半音階上にズレているので,左上のTransposeで修正してやりましょう.
最後はOTTを掛けて†いい感じ†に...
チベット僧
DelayLama
もはやネタ枠としてすら使われなくなってしまったプラグインです.
一時期「坊歌ロイド」なんつって音MADのネタとして流行ったんですが,きちんとやればこうして十分使うことができるわけです.
これも普段から愛用しているプラグインの一つです.
ノイズ・グリッチ系
気合
いろいろな素材を手動で切り貼りします.頑張りましょう.
...だけではあまりにも酷なので,素材づくりに使ったプラグインをご紹介します.
d.blue Glitch v1.3
普段は有料プラグインを使って,もっとこだわって作っていますが,今回はコレをぶっかけて切り刻んだのを並べただけです.お手軽!
ディストーション : Gorgon
超凶悪ディストーションです.
「ザッザッザザザザ!」という音は,無料のストリングス(名前忘れた)にこれを2回ぶっかけて切り刻んで作ったものです.
Gorgonを刺すとなんでも凶悪な音になるので,面白い音がほしいときはとりあえず挿して,適当なノブをひねってみましょう!
リード1
T-force Alpha plus
トランス系リードを作るのに特化したシンセらしいですが,派手で太い音を手軽に作りたいなら誰にでもおすすめできるシンセです.プリセットもかなり強く,眺めるだけでも勉強になります.[1]
リード2
Synth1
再び登場Synth1.意外とこんな太い音も出せるんです!見た目に騙されちゃいかんですぜ.
リード3
T-force Alpha plus
景気づけに明るいリードを挿しました.まさにトランスっぽいですね.
正弦波 : T-force Alpha plus
マジでただの正弦波です.正弦波の音って面白いのでたくさん使っちゃいますね.ポルタメントを書けて1オクターブ以上駆け上がらせる,みたいなことをよくやります.[1]
矩形波 : T-force Alpha plus
マジでただの矩形波です.
真空管シミュレータ : Wave Art Tube Saturator Vintage
真空管アンプを通したような効果が得られるプラグインです.
こういうたぐいのフリープラグインってただ汚しただけ,みたいなの多いんですけど,これは非常にいい音がします.プリセットが名前そのままの効果を与えてくれるので,手軽でオススメです.
カッティング:Synth1
こういう音ってなんていうんですか?
とても好きな音なので何時も脳死で挿してます.曲に芯ができる感じがしませんか?
サチュレータ : Softube Saturation Knob
音を飽和させるプラグインです.要は音が良くなります.
無料で配っていいのか,と思うクオリティです.カシワデくんも多用していますね.
装飾 : Synth1
Synth1使用過多罪で終身刑になりました.
ミキシング
ミキシングで使うプラグインを挙げようと思ったのですが,思いつきませんでした.
基本的には,音作りが完成した楽器に対して
- いらない帯域を削る
- 楽器感の干渉を排除する
- ステレオを生かした楽器配置を行う
- 楽器の音量を調節する(コレが一番大事!!!!!!!)
という操作を行うことになります.始めたての頃は様々なプラグインを抜き差ししていたのですが,最終的にはフェーダーが命という結論に達してしまいました.
単純なものほど奥が深いですね….
何も紹介するものがないかとそういうわけではありません.こちらをご紹介しましょう.
コンボリューションリバーブ : MConvolutionEZ
コンボリューションリバーブって何?とかそういうのは各自調べるように.
簡単に言えば空間表現が簡単にできるリバーブです.今回はプリセットの"Large hall"を使っています.
ストリングスや一部のリードなどをセンド・リターンで加工しています.
ちなみにこれから登場するMeldaProductionのプラグインは全て,MFreeFXBundleに収録されています.一括でインストールすることができますので,もらっておきましょう!
マスタリング
マスタリングとは,ミキシングで完成した音源の音量を上げて,記録・配信に耐えうる状態にしてやる作業です.なんとこのマスタリングも無料で出来ちゃいます.
簡単な手順とともにご紹介しましょう.コンセプトは「すこしずつ削る」です.
イコライザ : MeldaProduction MEqalizer
まずは最終的なイコライジングを行います.サイドのハイパス以外は,どれも±2dB未満にすることを心がけましょう.MEqalizerについては下の方で紹介しています.
コンプレッサ : GranComp
挿すだけで中域がぐっと持ち上がって,太い音になります.
コンプレッションしないで通すだけでも良いんですけど,せっかくなので細かいピークを削っています.大体-1~-2dBくらいで十分です.
通すだけでボリュームが大きくなるので,MakeupはしなくてOK.
ダイナミックイコライザ : TDR Nova
ダイナミックイコライザです.詳しい仕組みの説明は他に譲るとしますが,TDRの無料プラグインはどれも信じられないくらい高品質なのでもらっておきましょう.
ソフトな持ち上がりが期待できるので,音の最終調整で使います.
よくやるのは以下のセットです.
- 150Hzを中心に0.5~1.0dB持ち上げる
- 8000Hzを中心に1~1.5dB持ち上げる
- 2つの山の裾野が少し重なるくらいまでQを小さくする
お手軽に音の迫力をアップできるのでおすすめです.
マスタリングコンプレッサ : TDR Kotelnikov
これもとんでもないコンプレッサです.深く掛けても音があまり変化しない,まさにステルスなコンプで,マスタリングにはもってこいです.
以下の手順でセットアップします.
- Ratioを最大にして,Thresholdを思い切り下げる
- Attackを少しずつ回して,Reductionが突然小さくなる値を見つける(大体30ms前後)
- Attackを+10~20msして固定(面倒だったらはじめから50msくらいにしておけば大体OK)
- Ratioを1.3~2.0:1で設定
- Thresholdを上げて,Reductionが-3dB前後になるように設定
- Makeupを2.5~3.0dBで設定
これで,音の変化は最小限にピークを削ることができます.
Limiter No.6
いかついマスタリングスイートです.コレ1つでマスタリングを完結させられるようになっていますが,多少不安があるのでそうはしていません.
詳しい説明はとても長くなるので省きます.ggるといっぱい出てくるのでそっちで勉強してください.
普段はこれを更に性能アップさせたTDR Limiter 6 GEを使っています.
MeldaProduction MLoudnessAnalyzer
ざっくりいうと音の大きさを測ってくれるプラグインです.
常に画面に表示しておいて,目標値を目指しましょう.
色んな所で使ったプラグイン
MeldaProduction MAnalyzer
音源の周波数特性を表示してくれるアナライザプラグインです.EQポイントを探したり,音の最終的なバランスを確認したりするときに使います.
MAnalyzerに限った話ではなく,アナライザプラグインはしっかり設定を行うことが重要です.以下の動画を参考に設定を行いましょう![1]
MeldaProduction MEqualizer
MeldaProductionの回し者みたいになってきましたが,良いものは良いのでDLしときましょう!
視認性がよく,細かい設定が自在なEQです.コレがアレば他はいらないのでは...と思ってしまいそうになるくらいです.
MeldaProduction MCompressor
またしてもMeldaProduction.超細かい単位で設定でき,しかも設定したとおりにキチッキチッと動作する堅物コンプです.コンプの学習にはうってつけのプラグインです.
とにかくMeldaProductionは最高なのでみんなダウンロードしよう!
プラグインを買おう!
無料でも曲が作れることがわかりましたが,やっぱり有料音源には勝てない部分もたくさんあります.
特にオーケストラ系の楽器は,無料だとどうしようもない感じがありますし,シンセサイザーも無料では機能に見劣りします.
また,エフェクターやミキシングスイートなどは,無料でも素晴らしいものが増えているとはいえ,楽に良い音を手に入れるためには多少の投資をしたほうが良いでしょう.
2020年度新歓のときにでも,有料プラグイン紹介をしようかなぁ...
明日はついにAdC2019最終回!ChuukunとSappi_redの豪華二本立てでお送りします!
メリークリスマス!良いお年を!
筆者は当然応援の意味も込めて上位版のライセンスを購入しています.機能に違いはないんですけど….日本ではシェア2%未満と人気のないDAWですが,これからも頑張って欲しいと思っています! ↩︎
多分サブの帯域以外に倍音成分もいじっているからだと思います.低域楽器は奥が深いですね.↩︎
今回はWayback Machineを駆使して引っ張り出してきましたが,正直使うか迷いました. ↩︎
最近v2が出たらしいですが,見た目がダサいのでまだ使ったことありません.
↩︎
シンセによって基本波の鳴りもちょっとずつ違っていて,僕はT-forceのツルッとした感じが大好きです.T-forceはむき出しの波形が非常に綺麗だな,と思います. ↩︎
プリセットの保存はReaperでもできます. ↩︎