こんにちは、これは新歓ブログリレー2020 26日目の記事です。担当のisak(いさくと読みます)です。グラフィック班に所属しています。
新入生の皆さん、合格おめでとうございます。
早速ですが、3Dモデリングをご存じですか?最近はバーチャルyoutuber人気もあって、youtubeなどでもモデリング講座が増えてきています。そこで、今回は3Dモデリングに全く触ったことのない人向けに記事を書いてみました。
コロナウイルスのせいでオフライン新歓ができないので、体験会の代わりになるつもりで書いています。入部希望者もそうでない人も是非読んでみてください。
ちなみに、traPではモデリングに関する講習会も定期的に行っています。みんな!traPに入ろうね!
はじめに
今回作るものはこちらです。

かっこよくないですか?え?サムネの美少女は何って?もちろんSour式鏡音リンちゃんです。かわいいですね。
というわけで、この記事ではリンちゃんではなく持ってる銃の方を作ります。
キャラクターが作りたい人でも最初はこういった小物から作ってみるのもおすすめです。
ハードサーフェスとは硬いものという意味で、ハードサーフェスモデリングに厳密な定義はありません。銃とか、機械とかなんとなく硬そうなもののモデリングだと思えばいいと思います。
最近作ったクレーバーというApexlegendsというゲームに出てくる銃です。
このチュートリアルを応用するとこんな銃も作れますヨ。
10/27追記
流れ
大まかに記事の流れを書いておきます。
- blenderの紹介とインストール
- 基本操作
- 実践1
- マテリアル
- プラグイン追加
- bool,reboolツール
- booleanツール
- モディファイア
- 実践2
- ポリゴン、ノーマル
- 実践
- UV展開、エクスポート
- テクスチャリング
- ノードエディタ
- レンダリング
1.blenderをインストールしよう。
モデリングソフトには色々ありますが、今回は無料モデリングソフトの代表格であるblenderの最新バージョンを使用します。(記事執筆時点で2.82a)
ここからダウンロードしましょう。
ちなみに、blenderをインストールさせておいてアレなんですが、私はキャラクターモデリングにはXismo2というモデリングソフトを使用しています。もうすぐXismo3がリリースされるようなので、リリースされたら記事を書くかも?

ダウンロードしたファイルを開いたら、表示に沿ってインストールを完了します。
※blenderの日本語化は不十分な部分が多いため、私は英語のままの使用をおすすめします。 日本語化の方法はググってください。
blenderを触ってみよう
blenderを起動すると、このような画面が表示されると思います。
Save New Settings
をクリック、General
をクリックします。Select With
等の項目が画像と同じかどうか確認してください。
さて、下図のようなデフォルト画面が表示されたでしょうか。

デフォルト画面の構成を説明します。一番上のメニューをトップバー
、下の部分をステータスバー
といい、立体の頂点数やblenderのバージョン等が表示されます。アウトライナー
には3Dビューポート
内のオブジェクトの一覧、プロパティ
には選択中のオブジェクトの情報が表示されます。


続いて、Nキーを押してみましょう。右から出てきたのがサイドバー
です。サイドバーには選択しているオブジェクトのパラメータが表示されます。試しにキューブを左クリックして選択し、パラメータを変えてみましょう。パラメータは左クリックでドラッグするか、左クリックしてからキーボードで入力することで変更できます。
また、左のツールバー
はTキーを押すことで隠すことができます。
2.基本操作
3Dビューポート操作
※以下マウス必須です
ナビゲーションを使う
右上にあるxyzの軸をギズモといい、その下の4つのマークと合わせてナビゲーションといいます。
ギズモは動画のようにクリックしてドラッグしたり、丸い部分を押すことで視点を変更することができます。
マークは上から拡大縮小、移動、カメラ視点、投影方法を変更できます。
キーボードとマウスを使う
先ほど説明したナビゲーションを使った操作はマウスとキーボードでショートカットできます。
マウスの中ボタン(マウスホイールを押し込む)をクリックしながら動かせば視点回転。
shift+中クリックしながら動かせば視点移動。
alt+中クリックしながら動かせば拡大縮小ができます。
さらに、ギズモでの操作はテンキーでショートカットすることができます。表にまとめました。
7:真上 | 8:上回転 | 9:反転 |
4:左回転 | 5:投影方法 | 6:右回転 |
1:正面 | 2:下回転 | 3:右正面 |
0:カメラ視点 |
テンキーのないキーボードを使っている人は将来的にはテンキーのあるものにした方がいいと思います。(便利なので)
ちなみに、私は視点回転をマウス右クリック、マウス中ボタンを視点移動に割り振っています。個人的にはこの方が使いやすいと思いますが、この設定は競合するキーが多く色々設定を変更しなければならないので紹介しません。
オブジェクトモードとエディットモード
blenderには色々なモードがありますが、この記事では、オブジェクトモードとエディットモードを使います。オブジェクトモードでは、そのオブジェクトについて細かい設定はできません。
立方体を選択して、Tabキーを押しましょう。

このような画面になったと思います。エディットモードではオブジェクトの頂点、辺、面(まとめてポリゴンと呼ぶことにします。)など細かい部分まで編集することができます。画像の赤で強調した部分は現在選択できるものを青で示しています。頂点、辺、面の切り替えはここをクリックするか、キーボードの数字1,2,3
でそれぞれ切り替えできます。
また、shift
を押しながら複数クリックすることで複数選択ができます。
※右下に、押したキーを表示するようにしてみました。
主要ショートカットキー
blenderでのモデリングにおいて必須と呼べるほど使うキーです。逆に、これだけ覚えておけばある程度ののモデリングができます。それぞれ、動画をつけているので参考にしてください。
Gキー(ポリゴン移動)
ポリゴンをクリックして、G
キーを押すとポリゴンを動かすことができます。
G
キーを押した後にX
,Y
,Z
キーを押すと移動方向を限定することができます。これは、特によく使う操作なので覚えておきましょう。
Sキー(拡大縮小)
ポリゴンをクリックして、S
キーを押すとポリゴンを拡大することができます。
同様にX
,Y
,Z
キーを押せば拡大方向を限定することできます。
なお頂点1つだけ選択して拡大しても意味はありません。
Rキー(回転)
ポリゴンをクリックして、R
キーを押すとポリゴンを回転することができます。
X
,Y
,Z
キーで回転軸を制限することができます。
Eキー(押し出し)
ポリゴンをクリックして、E
キーを押すと、ポリゴンを押し出すことができます。
こちらはX
,Y
,Z
キーで押し出し方向を制限することができます。
Kキー(ナイフツール)
エディットモードでK
キーを押すとナイフモードになります。頂点や辺をクリックしていくことで、頂点を追加することができます。追加できたら、Enter
キーを押して確定しましょう。
また、ナイフモードで外部をクリックして、線を引くことでも頂点を追加することができます。
また、Z
キーを押すことで、視点から見えない部分にも頂点を追加できます。
わかりにくいと思うので動画を見てください。
Xキー(削除ツール)
消したい対象を選択してX
キーを押します。オプションが出るので、目的の操作を指定します。
これに関しては自分で試してみるのがいいと思います。
Fキー(面張り)
複数頂点を選択して、F
キーを押すと面を張ることができます。頂点が2つの場合は辺を引けます。
ctrl+Z(アンドゥ)
直前の操作を取り消すことができます。(動画略)
また、ctrl+shift+Z
で取り消しにより戻った操作を逆に進める操作(リドゥ)ができます。
shift+A(プリミティブ)
オブジェクトの原型やライト、カメラなどを追加できます。エディットモードで追加すると編集中のオブジェクトと一つのオブジェクトとして扱われます。
Aキー(全選択)
A
キーを押すと編集中のオブジェクトの頂点を全部選択します。
ctrl+R(ループカット)
辺をループカットします。マウスホイールの回転でセグメントを増減することができます。
ctrl+B(ベベル)
選択した頂点、あるいは辺の角を丸めます。マウスホイールの回転でセグメントを増減することができます。
shift+D(複製)
オブジェクト、あるいはポリゴンを選択してshift+D
を押すことで複製ができます。
3.実践1(ワイングラスを作ろう。)
覚えた基本操作を使ってワイングラスを作りましょう。自信がある人は飛ばしてください。
シュシュシュッと作ったワイングラスの下絵
キューブは必要ないので削除します。(バイバイ)
続いてワイングラスの下絵を配置します。動画の通り下絵が正面を向くようにしましょう。
shift+A
キーで円を追加します。一旦下絵が邪魔なのでアウトライナーのEmptyオブジェクトの目玉マークを押して隠しています。再表示する際はもう一度目玉マークを押してください。
TAB
キーでエディットモードに入りましょう。円に面が貼られていないのでF
キーで貼ります。
下絵を表示し、テンキーの1
を押して正面視点にし、A
キーで全選択し、底に移動します。
A
→G
→Z
の順で操作するといいでしょう。
移動したら、S
で底と大きさを合わせます。
E
→Z
で押し出し、S
で大きさを調整するという操作の繰り返しで大まかな形を作ります。
細かい部分をループカット、ベベルなどを使って調整します。
※動画で使用しているようにつながった頂点を選択するにはalt
キーを押しながらクリックしましょう。
上部の面を消去します。
TAB
キーを押してオブジェクトモードに移動しましょう。このままではワイングラスが角ばって見えるのでシェーディングを変更します。ワイングラスを右クリックしてShade Smooth
をクリックします。
これで、ワイングラスの形状は完成です。
4.マテリアル
ワイングラスのモデルを作りましたが、見た目がガラスっぽくないですよね。
blenderでは、オブジェクトに材質(マテリアル)を設定することができます。
早速、ワイングラスにマテリアルを設定してみましょう。
まずはビューポートをマテリアルビューにします。Z
キーを押してマウスを下にドラッグしましょう。
続いて、ワイングラスにガラスのマテリアルを追加します。
オブジェクトモードでワイングラスを選択し、右下の球のマークを押します。
New
を押します。すると、マテリアルが適応されます。
surface
という部分を押して、Base Color
を変更してみましょう。色が変わると思います。
他にも表面の粗さなどのパラメータがあるので触ってみましょう。
今回はワイングラスですので、ガラスのマテリアルを適用してみます。
surface
というパラメータをPrincipled BSDF
からGlass BSDF
に変更してみましょう。
これで、ワイングラスは完成です。
緑色っぽい色が入っているのは、環境光を反射しているからです。環境は下の画像のところで変更できます。
でも、これだとオブジェクト全体が均一の材質でない場合は困りますよね。例えば、ノートPCをモデリングしたければ、画面はガラス、筐体は金属にしたいはずです。あるいは模様などがあれば書き込みたいですよね。こういう場合は様々な手法がありますが、UV展開を行うのが一般的です。
立方体の展開図(すなわち平面)にテクスチャを書き込むイメージです。UV展開については、銃のモデリングのパートで詳しく説明します。

5.アドオンの追加
初心者がアドオンを使うのは、ある程度そのソフトに慣れてからのほうがいいという意見もありますが、僕は便利なものがあるのならどんどん使えばいいと思っています。
blenderにはビルトインアドオンと外部アドオンがあって、ビルトインアドオンは有効にするだけ、外部アドオンは外部からダウンロードして使います。
外部アドオンは有料のものと無料のものがありますが、今回は無料のものを使います。
jmesh-tools
jmesh-toolsはベベル、ミラー、ブーリアンなどのモディファイアを素早く適応できるアドオンです。
ここに移動してClone or Download
をクリックし、Download ZIP
をクリックして任意のフォルダにダウンロードします。
アドオンのインストール
画面左上のEdit
からPreferences
をクリックしAdd-ons
タブに移動します。
Install
をクリックします。
先ほどダウンロードしたZIPファイルを選択して、Install Add-on
をクリックします。
すると、このような画面になると思うので、チェックボックスにチェックを入れます。
続いて、必要なビルトインアドオンを有効にします。
ビルトインアドオンではBool Tool,Carver,Node Wranglerの3つを有効にします。
それぞれ、検索窓に入力して、チェックボックスにチェックを入れてください。
操作が完了したら保存してPreferences
を閉じましょう。
6.Carverアドオン
アドオンが正しく有効になっていないと機能しないので注意してください。
carverアドオンはオブジェクトを切り取る、くりぬく、分割する等の操作ができます。
まず、テンキーの5
を押して平行投影(Orthographic)にしましょう。透視投影だと見た目と異なった結果になることがあります。
オブジェクトモードでctrl+shift+X
を押しましょう。画面下部にオレンジ色でいろいろ表示されると思います。
初期では、Rectangle
に設定されています。このモードでは長方形の形状で操作ができます。
ビューポートをクリックすると、そこを頂点に長方形が表示されるのでオブジェクトに触れるようにポインタを移動してクリックしてみましょう。動画のように切り取れると思います。
オレンジ色のメニューが出た状態でspace
キーを押すとカットタイプをLine
に変更できます。
Lineは次の動画のように操作します。頂点を置き終わったらspace
キーを押すことで、完了できます。
もう一つCircle
というカットタイプがあります。space
キーを2回を押すとこのモードになります。操作はRectangleとほぼおなじです。
Rebool
shift
キーを押しながら上の操作を行うとオブジェクトを分割することができます。
Carverアドオンは銃のモデリングで必須なので使い方を覚えておきましょう。
7.Bool Tool,JMesh-Tools
boolean
このような、円柱型のくぼみを作ろうとするときナイフツールなどで作るのは非常に難しいです。このような場合にはboolean
を使います。
こちらも、アドオンが正しく有効になっていないと機能しませんので注意してください。
booleanでは
・他のオブジェクトと重なっている部分を削除する。(Difference)
・他のオブジェクトと重なっている部分を結合する。(Union)
・他のオブジェクトと重なっていない部分を削除する。(Intersect)
・他のオブジェクトと重なっている部分を切り取る。(Slice)
の操作ができます。
上のような立体は、キューブにシリンダーを重ねれば再現できそうですね。早速やってみましょう。
まずN
キーを押し、Edit
メニューのBool Tool
を出しておきましょう。
基本的に、Auto Boolean
を用います。適用方法はいずれも、オブジェクトを2つ以上選択して、ボタンを押すだけです。カレントオブジェクト(最後に選択したオブジェクト)によって結果が変わるので注意してください。
それぞれ動画にまとめました。
booleanを応用するとこんなこともできます。
↑こういうものを作れば
こうできます。
JMesh-Tools
JMesh-Toolsはベベル、配列、ミラーのモディファイアを素早く適用するアドオンです。
モディファイアについては次の章で説明します。
N
キーのメニューから、JMeshを選択しておきましょう。
ベベル(Bevel)
基本操作でctrl+B
のベベルを紹介しましたが、それとは異なりオブジェクト全体にベベルをかけます。オブジェクトを選択してBevel
を押しましょう。Bevel width
ではベベルの大きさを指定できます。また、Un-Bevel
を押すとベベルを解除できます。
今後モデリングをしていくとき、ベベルをかけた際に表示が崩れる時があります。原因はベベルの大きさなので、値を小さくして対応しましょう。
配列(Array)
Array
はオブジェクトを複製して並べるモディファイアです。Circle Array
は円状に複製して並べます。まずはキューブで試してみましょう。
Item count
で複製数、Offset X,Y,Z
で間隔を指定することができます。ウィンドウはesc
キーで消せます。
ミラー(Mirror)
Mirror
はX軸に対して反転したオブジェクトを配置します。(あまり使いません。)
その下のto X
などの6つをよく使います。これらはオブジェクトを原点を通る平面に対して対称化します。説明が難しいので動画を見てください。例としてto X
とto -X
を見せます。
8.モディファイア
モディファイアとは、オブジェクトの元形状に変更を加えないで作用する機能です。
曲面化subdivision surfaces
が代表的です。数学的に説明を試みると、こんな感じでしょうか。
元オブジェクトx
に関数f
を作用させるとビューポート上での見た目がf(x)
になるといった感じです。
もちろん、モディファイアを確定すれば、適用後のオブジェクトにも細かい変更を加えることができます。
試しにキューブに曲面化モディファイアを適用してみましょう。モディファイアは画像の矢印のスパナマークから追加できます。
Add Modifier
からSubdivision Surfaces
をクリックしましょう。
この状態になりましたでしょうか。TAB
キーを押してエディットモードに入ってみましょう。元のキューブの頂点が維持されているのがわかると思います。
次にモディファイアを確定してみます。オブジェクトモードでモディファイアタブのApply
を押しましょう。
確定した後にエディットモードに移動すると、元形状が消えているのがわかると思います。
お気づきの方もいるかもしれませんが、実はBool Tool,JMesh-Toolsはこれらのモディファイア適用の手順を省略するものだったのです。いちいちモディファイアタブから適用するのは面倒ですからね。アドオンウィンドウでできない細かい設定はモディファイアタブから設定しましょう。
9.実践2
アドオンを使って車を作りましょう。今回作るのはこちら!
これ、テスラのサイバートラックというらしいですが、なんか1分くらいでモデリングできそうですよね。練習にピッタリだと思ったワケですよ。今回も自信があるなら飛ばしてください。下絵はありません。
エディットモードでキューブを伸ばします。
オブジェクトモードでCarver
を使って横をいい感じに切り落とします。
上視点に切り替えて角を落とします。
正面視点でも角を落とします。
横視点で土台を分割します。分割はshift
を押すのでしたね。
タイヤの入る位置が下過ぎるので上にあげます。2つのオブジェクトを選択してエディットモードに入り、調整します。Z
キー左でワイヤーフレームビューにすると選択しやすいと思います。
土台の部分が厳密に地面と平行になっていないので調整します。
選択→S
→Z
→0
の順に入力します。これは、Z軸方向の拡大率を0にする操作です。
タイヤが入る部分をくりぬきます。
微調整します。
JMesh Toolsで2オブジェクトに対してto -X
を行います。
幅が大きく見えるので調整します。ついでに土台の部分をx軸方向に拡大してはみ出させます。
窓をくり抜く感じで分割します。
それぞれ、to -X
を使いましょう。
タイヤをつけましょう。今回はあまりこだわらないことにします。
タイヤはこんな感じにしました。
配置します。
ミラーで反対側にも配置します。
配列で後輪を作ります。
最後に全オブジェクトにベベルをかけましょう。見栄えが良くなります。
と思ったら、タイヤの描画が崩れていますね。こういうときはBevel Width
を小さくすればいいのでした。今回は0.002にしてみます。
いいかんじですね。最後にマテリアルを追加してみましょう。黒、金属、ガラスの3つがあればよさそうですね。
できました。なんか若干違うような気もしますが完成ということにします。
ちなみに、この車の後ろ側は一切見ていないので適当です。
おまけでちょっとレンダリングしてみました。適当なのでちょっと汚いですが。
10.ノーマル
いよいよ銃のモデリングといきたいところですが、すこしだけノーマルについての話をしておきます。
例えば、表面にねじのような微小な凹凸をつけたいとき、ねじ山をいちいちモデリングするのは面倒ですよね。そのうえ、モデリングするたびにねじの分の頂点が増えるので、処理が増えて重くなります。これを解決するには法線マップ(ノーマルマップ、バンプマップ)が有効です。法線マップとはテクスチャにオブジェクトの表面の凹凸情報を書き込んだものです。これがあると、光が当たった時にその凹凸情報に合わせて光が反射するため視覚的には凹凸があるように見えます。
ここで具体例を挙げようと思ったのですが力尽きたので、先輩の記事を貼っておきます。"バンプマップ"という項目が参考になると思います。

11.実践(銃のモデリング)
長い前置きに付き合っていただきありがとうございました。ここまで来た皆さんなら楽にモデリングできるのではないかと思います。

原型制作
銃の下絵を用意しましたが、自分で用意してくれてもいいです。想像力が大事。
新規プロジェクトで下絵を配置し、エディットモードでキューブの大きさを調整します。
まずボディから作ります。
ワイヤーフレームモードでCarver
を使ってボディの形に切り取りましょう。
下絵は奥に移動します。
シリンダーを拡大してバレルをつくり、別のキューブからバレルに付属する部品を作ります。また、ベベルをかけ、適宜調整します。
持ち手の部分と、穴の開く部分をくりぬきます。
こんな感じでノリでボディを分割していきます。くりぬいた穴の部分にはシリンダーを追加してみました。
ここで、上から見てみると厚みが一定で面白みがありませんね。
厚みを調整してみましょう。
さらに分割します。これと全く同じである必要はないのでお好みで分割しましょう。
ボディの後ろの部分が寂しかったので穴をあけてみました。
バレルの部品をかっこよくします。
これはBoolean
を用いて作ります。Boolean
を適用する際は一旦ベベルを解除します。
パーツごとに角を落とします。片側の角を落としてto -X
で対称化するのが楽だと思います。
銃口を押し出しと拡縮を使って作っています。現状こんな感じです。
真ん中のシリンダーを装飾し、トリガーも作ります。
このように作ります。最後はS
+shift
+Y
を使っています。拡縮をY以外に制限する操作です。
作ったらベベルをかけましょう。
シリンダーをベースにBoolean
を使ってビューファインダーを作ります。
Boolean
とArray
を使ってボディに細かい装飾をいれます。
このようなものをつくってBoolean
で埋め込みます。
銃口を広げたり微調整して銃の原型は完成です。
マテリアル設定
最終完成図では、主に黒い金属と紫の金属の2種類で色分けされているのがわかると思います。
オブジェクトごとにマテリアルを適用してみましょう。テクスチャは別に作るので、色分けされているのが分かればなんでもいいです。
最終的にこうなる予定です。
Z
キー下でマテリアルプレビューに変更しましょう。
適当なオブジェクトを選択してマテリアルタブに移動します。画像の部分をクリックし、Material
をクリックします。これは初期状態のマテリアルです。ない場合はNew
でもいいです。
Base Color
を変更してみましょう。色が変わりましたか?
同じ色の部分には同一のマテリアルが適用されてなければいけません。blenderには継承という便利な機能があります。黒くしたいオブジェクトをすべて選択します。今色を変えたオブジェクトは最後に選択するようにしましょう。次に、ctrl+L
で出てくるメニューからMaterials
をクリックします。選択したオブジェクトすべてにマテリアルが適用されたはずです。
マテリアルの名前がMaterial
だとわかりづらいのでMetal
に変更します。
白いオブジェクトに別のマテリアルを適用します。選択してNew
を押します。こちらはPaint
という名前にします。
分かりやすいように色を変えます。
先ほど使った継承を使って他オブジェクトにもマテリアルを適用します。3種類以上のマテリアルを使いたい人はお好みで増やしてくれても構いません。(ただし、後に行うUV展開の回数が増えます。)
もう結構それっぽいし、疲れたから記事終わっていいですか
12.UV展開、エクスポート
あと少しで完成です。頑張りましょう。UV展開はマニュアルで行うこともできるのですが、今回はblenderに自動でやってもらいます。
UV Editing
パネルに移動します。
同一マテリアルのオブジェクトをすべて選択します。
この状態でエディットモードに入り、全選択してからU
キーを押し、smart UV project
を選択します。
角度制限、マージンを設定します。
Angle Limit = 45.0
,Island Margin = 0.001
,Area Weight
はそのままに設定しました。
OKをクリックします。
もう一つのマテリアルについても同様に設定します。
これでUV展開は完了です。とっても簡単ですね。ありがとうblender。
さて、テクスチャリングは外部ソフトで行いますので一旦エクスポートします。この際に、ベベルをかける前のオブジェクト(ローポリ)とベベルをかけたオブジェクト(ハイポリ)の2つを出力し、ノーマルの章で説明した焼きこみを行います。
※ローポリとはポリゴン数が少ないという意味です。ベベルをかけるとポリゴンが増えます。
まず、銃のオブジェクトだけをすべてを選択しFile
→Export
→wavefront(.obj)
を選択します。
先に、ローポリから出力します。Selection Only
にチェックし、Apply Modifier
のチェックを外します。名前はgun-lowpoly.obj
とします。
設定できたら、Export OBJ
を押します。保存フォルダは自分で決めてください。
次は、ハイポリを出力しましょう。今度はApply Modifier
にチェックを入れて出力します。名前はgun-highpoly.obj
としました。正しく出力できていればハイポリのほうがデータサイズがはるかに大きいことがわかると思います。
これで、出力は完了です。
13.テクスチャリング
テクスチャリングにはsubstance painterを使用します。リンク先から体験版をインストールしましょう。今回は体験版を使いますが学生は元々無料で使えるので安心してください。ここから登録できます。
※商用利用はできないので注意しましょう。
起動します。起動したら、Close
を押します。
File
からNew
を押して新規プロジェクトを作ります。
Select
から先ほどエクスポートしたローポリモデルを読み込みます。
正しくTEXTURE SET LIST
に2種類のマテリアルが読み込めているか確認しましょう。
焼きこみ
ハイポリモデルの焼きこみを行います。
TEXTURE SET SETTINGS
のBake Mesh Maps
をクリックしましょう。
High Definition Meshes
の項目からハイポリモデルを選択します。またMax Frontal Distance
,Max Rear Distance
を小さい値にします。
設定が終わったらBake all texture sets
を選択します。
しばらく待つと焼きこみが完了します。
smart materials
substance painterの使い方講座をここに書くと記事の分量がさらに爆発することになるのでズルをする方法だけ書いておくことにします。
substance painterにはsmart materialsというマテリアルのプリセットがあるので、今回はこれを使います。まず、metal
から作ります。このようにタブを移動しましょう。
金属質な見た目にしたいのでSteel Gun Matte
を使います。
こんな感じでドラッグすると使えます。
paint
の方はSteel Gun Painted
を適用してみました。
Boolean
で埋め込んだ装飾に色を付けます。Add Layer
でレイヤーを追加します。
対称編集にチェックを入れます。
Alpha
から丸っぽいシェイプを選びます。ビューポートはalt
キーを押しながらマウスをドラッグで動かせます。
プロパティから、色を変更します。
ブラシサイズを調整します。
イラストを描くときのように塗ります。ペンタブがあるといいかも。
完成です。
エクスポート
blenderに読み込むためにテクスチャをエクスポートします。
Export Textures
を選択します。
Config
が画像と同じかどうか確認してExport
します。
矢印で指したテクスチャは必要ないので消しても構いません。
これで、エクスポートは完了です。
14.ノードエディタ
ノードとは下図のようなもので、テクスチャやエフェクトを線でつないで扱うものです。
blenderのノードエディタは素晴らしい機能でおそらく皆さんが想像する大体の表現は再現できると思います。(簡単とは言っていない)しかし細かい説明をしていると日が暮れるので、今回はsubstance painterでの見た目をそっくりblenderで再現するだけにとどめます。
Shading
タブに移動します。
まず、metal
マテリアルから設定します。適当にmetal
マテリアルの適用されているオブジェクトを選択します。
ノードエディタ上でPrincipled BSDF
ノードを選択し、ctrl+shift+T
を押します。エクスプローラーが表示されたら、metal_Normal.png
以外のテクスチャをすべて選択し、Principled Texture Setup
をクリックします。
blenderで自動的にノードを組んでくれます。
しかし、くすんでいるように見えますね。このアドオンは大変便利なのですがたまに画像の割り当てをミスります。治してあげましょう。
よく見ると、Metallic
のノードでBase Color
を読み込んでしまっているようです。
フォルダーマークからmetal_metallic.png
を読み込みなおします。
いいかんじですね。
paint
マテリアルについても同様に設定します。
これにてモデルは完成です。お疲れ様でした。
15.レンダリング
最後に、せっかく作ったのですからかっこよくレンダリングしてみましょう。
ステージを作ります。shift+A
のPlane
をベースにしましょう。ステージはShade Smooth
にしておきます。
カメラを消してしまった場合はshift+A
で追加します。テンキーの0を押してカメラ視点にします。
画像のWalk Navigation
でゲームでおなじみのWASD移動でマウスで視点操作ができます。視角に銃を映しましょう。Q
,E
ではアップダウンができます。
このままだと光源が無くて暗いので、ライトを追加します。タイプはSun
,strength = 10
にしました。お好みで光の色を変えてもいいです。
blenderには物理ベースの強力なレンダリングエンジンCycles
があるので、これを使います。
デフォルトでは、Eevee
になっているのでCycles
に変更します。
PCにグラフィックボードがある場合はGPU Compute
に変更します。
さて、準備ができましたのでレンダリングします。ビューポート上でF12
キーを押すとレンダリングが始まります。
完成画像はここから保存できます。
お疲れさまでした。これで本当の本当に完成です!!
完成品はぜひ#traP20welcomeとタグをつけてTwitter等に載せてください!
(僕が喜びます。)
まとめ
いかがでしたか?(言ってみたかった)
blender完全初心者には少し難しい部分もあったかもしれませんが、お役に立てたなら幸いです。この記事が誰かがモデリングをはじめるきっかけになってくれることを祈っています。ありがとうございました。
さて、もう忘れていそうですが実はこの記事は新歓ブログリレーの記事でした。
明日は@Suu_u君の記事です。お楽しみに!
おまけ
記事執筆開始時点では完全にわすれていたビューファインダーのテクスチャをつけたので、動画でレンダリングし直してみました。ついでに今回紹介しきれなかったノードエディタを少し使っています。これについては僕がもう少し成長したら記事を書こうと思います。
ちなみに、この5秒の動画をレンダリングするのに2時間程度かかっています。CG屋は大変ですね。